〔分析〕このままでMLB挑戦はできるのか?──楽天・岩隈久志投手。右肩痛の前と後、その投球内容比較
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先日9/6オリックス戦で6回を投げ今季最多の4失点で4敗目を喫した岩隈投手。
右肩痛からの故障復帰後のマウンドをみてるに、本調子へ向けて上昇曲線を描くことができていないのでは?という印象になる。
確かに復帰後初の7/27ソフトバンク戦では持ち味のゴロを打たせてとるピッチングで相手打線を翻弄したり、8/30西武戦では8回を1失点にまとめて復調への手応えを口にしていた岩隈投手。変化球の割合を多くして相手打者のバットの芯をはずし専ら打ち損じを狙うピッチングは、柔よく剛を制すの「柔」に当たるもの。技巧派・軟投派の極地ともいえるピッチングに相手打線があっさり片付けられていく光景は、見ものなのだ。
しかし、これが新・岩隈久志の新たな投球スタイルなのだ!と期待するものの、一方で、いまいちなのかな?・・・というイメージをずっと抱いていた。
そこで、故障前と故障後、ビフォー&アフターの投手成績を比較してみた。
故障前は開幕戦4/12ロッテ戦から5/17巨人戦の6試合、故障後は7/27ソフトバンク戦から9/6オリックス戦の7試合である。
■故障前と故障後、主な投手成績

勝敗数は同じ数を記録しているものの、
・防御率:1.72→2.60
・奪三振率:13.60→5.20
・被打率:.216→.268
・投手本来の力量を示すとされるDIPS:2.57→3.01
・フィールドに飛んだ打球がヒットになる確率を表すBABIP:.279→.296
残り大半のスタッツは上記のとおり、軒並み故障後のほうが悪い。
特に際立っているのが奪三振率である。
ここ数年の奪三振率を確認してみると、沢村賞を獲得した2008年は7.10、2009年は6.44、2010年は6.85と推移していた。それと比較すると故障前の13.60というベラボウな数値は明らかに異常値であり、ある意味、頑張り過ぎてしまった岩隈を象徴する数字なのかもしれないが、一方で、故障明けの5.20という数字も例年と比較しても少ないと言える。
バットに球を当てさせなければ「事件」は起きないのだから、奪三振率が減った故障明け、被打率が増えてしまうのは当然の成り行きとも言えそうで、BABIPも若干上昇しているのは、野手の守備力が及ばないゾーンへのヒットが増えているのかな?と捉えることもできる。
次に球種割合の変遷をみてみよう。
■故障前(4/12ロッテ戦~5/17巨人戦)の球種割合

■故障後(7/27ソフトバンク戦~9/6オリックス戦)の球種割合

まずは、昨年の球種割合を抑えておくと(『12球団全選手データ百科名鑑2011』より)、
ストレート34%、スライダー26%、フォーク23%、シュート14%、カットボール3%、という割合だった。
ところが、今季故障前は、ストレートの比率が上昇し40.5%に、さらにフォークの割合も増えて29.6%。一方、スライダー、シュートの割合が減っていた。岩隈のウイニングショットは縦にストンと落ちる落差の大きいフォークボールである。この勝負球の割合が目に見えて増えたことで、バットに球を当てさせない、奪三振ピッチングが故障前はできていた。恐らく右肩痛の発生はフォークボールの多投も影響あったとみるべきだろう。
そして、故障後の球種割合。故障前と比較するとストレート40.5%→33.2%、フォーク29.6%→22.0%と減り、一方、スライダー17.1%→28.9%、シュート10.0%→13.1%が増えるかたちになった。この割合は昨年のそれとほぼ同じで、球種割合からみれば故障明けのそれは昨年に戻った、いつもの岩隈に戻ったと言えるかもしれない。
次に故障前と故障明けの球種別被打率をみてみる。
■球種別被打率

これをみると、故障前にキレキレだったフォークの被打率が.147から.286に上昇しているのが確認できる。
打点をみてもフォークを打たれて走者に本塁を踏まれてしまった事例が多いのが判る。
故障明け、岩隈投手のピッチングが本調子でないようにみえるのは、ウイニングショットで岩隈投手の看板球であるフォークの精度がアンバランスなのが最も大きいと言えそうだ。もちろん、理想のコースに落差あるフォークが決まる時もあるが、その頻度は少なくなってきているのでは?という印象、制球も高めに抜けてしまうフォークも散見されるようになってきた。
最後に獲得したアウトの内訳をみてみたい。下記表のとおり。
■アウト内訳

併殺は例えば6-4-3のショートゴロ併殺の場合、打者のアウトはゴロに入れ、1塁走者の2塁封殺アウトは併殺に入れている。その他は塁上の走者が牽制球で憤死したり、次の塁を狙って2,3塁や本塁でタッチアウトになったりしたアウトのこと。便宜上、ここではとりあえず、そうしている。
これでみると、三振でのアウトの割合はちょうど10%下がり、その分、ゴロアウトが増えている。
フライアウトの割合が多い印象を受けると先日の試合評に書いたけど、実際は故障前より割合は減少していて、ぼくの認識不足であった。
また、フライアウトに占める外野フライの割合を確認してみても、故障前が80.5%に対し故障後は76.5%と微減。ヒットになるリスクがある外野フライの割合を減らすことに成功している。
つまり、獲得したアウトに関して言えば、1歩間違えればヒットになるような際どいものはどちらかというと少なく、岩隈投手の思惑どおり、しっかりとしたアウトらしいアウトを積み重ねている、と言えそうなのだ。ここのあたりは、さすが、一流投手の投球術である。
岩隈投手は今オフ再びMLBへの挑戦が濃厚とされている。
しかし、右肩痛の影響が尾をひく現在のままのピッチングが続いてしまうと、その夢の道はなかなか険しいのでは?と心配になってくる。
状態がいきなり元に戻るとはあまり考えにくく、こんな調子が残り試合続くと思われるが、岩隈投手で勝てるか?否か?も、楽天が3位進出する上で、外せないファクターになっているのは言うまでもないことで、ここはなんとかこれまでの経験を活かした岩隈投手ならではの投球術に期待したい!【終】
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・9/7(水)●楽1-9オ:怒涛の奔流、2夜連続のワンサイドゲーム...
・2011年、戦国パリーグ。球宴明け後半戦のチーム成績。最も得点力があるチームは意外や意外?!
・楽天・田中将大の沢村賞の可能性、夢の防御率0点台の可能性
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先日9/6オリックス戦で6回を投げ今季最多の4失点で4敗目を喫した岩隈投手。
右肩痛からの故障復帰後のマウンドをみてるに、本調子へ向けて上昇曲線を描くことができていないのでは?という印象になる。
確かに復帰後初の7/27ソフトバンク戦では持ち味のゴロを打たせてとるピッチングで相手打線を翻弄したり、8/30西武戦では8回を1失点にまとめて復調への手応えを口にしていた岩隈投手。変化球の割合を多くして相手打者のバットの芯をはずし専ら打ち損じを狙うピッチングは、柔よく剛を制すの「柔」に当たるもの。技巧派・軟投派の極地ともいえるピッチングに相手打線があっさり片付けられていく光景は、見ものなのだ。
しかし、これが新・岩隈久志の新たな投球スタイルなのだ!と期待するものの、一方で、いまいちなのかな?・・・というイメージをずっと抱いていた。
そこで、故障前と故障後、ビフォー&アフターの投手成績を比較してみた。
故障前は開幕戦4/12ロッテ戦から5/17巨人戦の6試合、故障後は7/27ソフトバンク戦から9/6オリックス戦の7試合である。
■故障前と故障後、主な投手成績

勝敗数は同じ数を記録しているものの、
・防御率:1.72→2.60
・奪三振率:13.60→5.20
・被打率:.216→.268
・投手本来の力量を示すとされるDIPS:2.57→3.01
・フィールドに飛んだ打球がヒットになる確率を表すBABIP:.279→.296
残り大半のスタッツは上記のとおり、軒並み故障後のほうが悪い。
特に際立っているのが奪三振率である。
ここ数年の奪三振率を確認してみると、沢村賞を獲得した2008年は7.10、2009年は6.44、2010年は6.85と推移していた。それと比較すると故障前の13.60というベラボウな数値は明らかに異常値であり、ある意味、頑張り過ぎてしまった岩隈を象徴する数字なのかもしれないが、一方で、故障明けの5.20という数字も例年と比較しても少ないと言える。
バットに球を当てさせなければ「事件」は起きないのだから、奪三振率が減った故障明け、被打率が増えてしまうのは当然の成り行きとも言えそうで、BABIPも若干上昇しているのは、野手の守備力が及ばないゾーンへのヒットが増えているのかな?と捉えることもできる。
次に球種割合の変遷をみてみよう。
■故障前(4/12ロッテ戦~5/17巨人戦)の球種割合

■故障後(7/27ソフトバンク戦~9/6オリックス戦)の球種割合

まずは、昨年の球種割合を抑えておくと(『12球団全選手データ百科名鑑2011』より)、
ストレート34%、スライダー26%、フォーク23%、シュート14%、カットボール3%、という割合だった。
ところが、今季故障前は、ストレートの比率が上昇し40.5%に、さらにフォークの割合も増えて29.6%。一方、スライダー、シュートの割合が減っていた。岩隈のウイニングショットは縦にストンと落ちる落差の大きいフォークボールである。この勝負球の割合が目に見えて増えたことで、バットに球を当てさせない、奪三振ピッチングが故障前はできていた。恐らく右肩痛の発生はフォークボールの多投も影響あったとみるべきだろう。
そして、故障後の球種割合。故障前と比較するとストレート40.5%→33.2%、フォーク29.6%→22.0%と減り、一方、スライダー17.1%→28.9%、シュート10.0%→13.1%が増えるかたちになった。この割合は昨年のそれとほぼ同じで、球種割合からみれば故障明けのそれは昨年に戻った、いつもの岩隈に戻ったと言えるかもしれない。
次に故障前と故障明けの球種別被打率をみてみる。
■球種別被打率

これをみると、故障前にキレキレだったフォークの被打率が.147から.286に上昇しているのが確認できる。
打点をみてもフォークを打たれて走者に本塁を踏まれてしまった事例が多いのが判る。
故障明け、岩隈投手のピッチングが本調子でないようにみえるのは、ウイニングショットで岩隈投手の看板球であるフォークの精度がアンバランスなのが最も大きいと言えそうだ。もちろん、理想のコースに落差あるフォークが決まる時もあるが、その頻度は少なくなってきているのでは?という印象、制球も高めに抜けてしまうフォークも散見されるようになってきた。
最後に獲得したアウトの内訳をみてみたい。下記表のとおり。
■アウト内訳

併殺は例えば6-4-3のショートゴロ併殺の場合、打者のアウトはゴロに入れ、1塁走者の2塁封殺アウトは併殺に入れている。その他は塁上の走者が牽制球で憤死したり、次の塁を狙って2,3塁や本塁でタッチアウトになったりしたアウトのこと。便宜上、ここではとりあえず、そうしている。
これでみると、三振でのアウトの割合はちょうど10%下がり、その分、ゴロアウトが増えている。
フライアウトの割合が多い印象を受けると先日の試合評に書いたけど、実際は故障前より割合は減少していて、ぼくの認識不足であった。
また、フライアウトに占める外野フライの割合を確認してみても、故障前が80.5%に対し故障後は76.5%と微減。ヒットになるリスクがある外野フライの割合を減らすことに成功している。
つまり、獲得したアウトに関して言えば、1歩間違えればヒットになるような際どいものはどちらかというと少なく、岩隈投手の思惑どおり、しっかりとしたアウトらしいアウトを積み重ねている、と言えそうなのだ。ここのあたりは、さすが、一流投手の投球術である。
岩隈投手は今オフ再びMLBへの挑戦が濃厚とされている。
しかし、右肩痛の影響が尾をひく現在のままのピッチングが続いてしまうと、その夢の道はなかなか険しいのでは?と心配になってくる。
状態がいきなり元に戻るとはあまり考えにくく、こんな調子が残り試合続くと思われるが、岩隈投手で勝てるか?否か?も、楽天が3位進出する上で、外せないファクターになっているのは言うまでもないことで、ここはなんとかこれまでの経験を活かした岩隈投手ならではの投球術に期待したい!【終】
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・〔400号記念〕山崎武司選手のホームランで最も印象に残った一振りは?
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・2011年、戦国パリーグ。球宴明け後半戦のチーム成績。最も得点力があるチームは意外や意外?!
・楽天・田中将大の沢村賞の可能性、夢の防御率0点台の可能性
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