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【惜別】 中島俊哉~安打150本中130本が左腕から。杜の都が生んだ「偉大なる1ツールプレイヤー」

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シャーパー、来季戦力構想から外れる



また1人、球団創設時を知る犬鷲戦士がユニフォームを脱いでいる。

シャーパーこと中島俊哉。当時のオリックスが2000~2002年のドラフトで獲得した一部選手に対して実施した「契約金ゼロ選手」の最後の生き残りとしても知られたベテランが、来季構想から外れるかたちになった。昨日10/28、球団が戦力外通告のアナウンスを公表している。

■中島俊哉 年度別 打撃成績
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プロ初安打もサウスポーから



2002年ドラフト8位でオリックスブルーウェーブ入り。同期には自由獲得枠で後に楽天でも同僚となる加藤大輔や、2巡目にはマック鈴木らがいた。3年目の2004年に1軍初出場。7/8ロッテ戦でダン・セラフィニから初安打。「左投手キラー」らしく、通算150安打の最初の1本もサウスポーから放ったヒットだった。

同年発生した球界再編劇でオフには楽天へ。球団創設メンバーの一翼を担った。野村監督の下で台頭。愛称どおりシャープでコンパクトな打撃でパンチ力もあった。初球から積極的にバットを振っていくスタイルで、数々の左投手を攻略した。

戦力外を受けた中島は楽天に対し「これだけ面倒を見てもらい、ありがたい。他の球団だったら、ここまでやっていません。契約金0円から12年も」と思いを語った上で「ある程度、覚悟はしていましたけど、実際に言われると。引退するか決めてませんが、寂しいですね。(現役続行かは)迷っています」と複雑な胸の内を明かした。今後は未定なものの、現時点でのプロ生活は12年間、通算292試合に出場、632打席に立ち、通算打率は.264を記録している。

本人も語っていたように、草野大輔や中村真人、有銘兼久、川岸強...草創期~初期を彩った個性溢れる選手達と同じく、中島も仙台に新興球団が誕生がしなければ、花開かさせることは難しかった選手であった。契約金ゼロ選手10人の大半が鳴かず飛ばずでプロの世界から早々に退場を余儀なくされたことを考えれば、中島も普通なら同じ道を辿っていたはず。戦力の整わない楽天に活躍の場を移すことができたこと、指揮官が「弱者の兵法」を掲げる野村克也監督だったことも重なり、「左投手キラー」の1ツールに特化してサバイバルすることができたとも言える。

野村監督の下、左投手キラーの好活躍



ハイライトは2008年~2009年の2年間か。2008年は自己最多の81試合(うちスタメン51試合)に出場、205打席で.315/.397/.466のOPS.863、5度の猛打賞も記録するなど、キャリアハイの数字を残すシーズンになった。

その2008年は5/28巨人戦(○E6-1G)でプロ初本塁打を内海哲也からマークした。ノムさんに「あの子は、左ピッチャーには何とかついていくねぇ」と評された1本だった。約1週間後の6/3阪神戦(○E11-4T)、ソロ弾を含む3安打3打点でチームの勝利に貢献。この活躍にノムさんもニンマリ。「顔を覚えた。国分町で会っても分かるよ(笑)」。それからさらに約2週間後の6/16巨人戦。チームは0-3で敗れたものの、中島は内海相手に3打数2安打。試合終了後のノムさん「左には自信を持っている。左ピッチャーの時はうちの4番だ」と評している。

翌2009年は打率.279に沈んだが、対左投手では打率.319をマーク。。クライマックスシリーズでは9打数5安打、2四球、1二塁打、1本塁打の槍働き。10/16ソフトバンク戦では杉内俊哉から2ランを、10/21日本ハム戦では武田勝から2安打など気を吐いている。

ブラウン政権では不遇をかこったものの、星野監督就任で再び復活。2011年は初の開幕スタメン出場。1点を追った6回表、成瀬善久からチャンスメイクの二塁打。後に聖澤の犠飛で同点のホームを踏む活躍をみせた。

球団史上最も価値のある四球獲得劇



2012年はなんといっても杉内俊哉の完全試合を阻止する四球獲得劇が印象深い。

「みんなは打て、打てと言っていましたけど…。あそこ(最後の球)は低かったですから、(自信を持って)見逃しました」。

そう語った中島だったが、私の目には際どい球のように思えた。9回2死という極限状態の中、集中力を切らすことなく対峙できたのは、左投手キラーの中島だからこそ成し遂げることができたと言えるかもしれない。また、この年はピンチバンターとして3本の犠打も成功させている。

翌2013年、楽天は初Vへ向けてそれまで苦手にしてきた好敵手を次々と撃破した。金子千尋しかり、攝津正しかり。内海哲也も例外ではなく、田中を押し立てた6/9巨人戦で5-3で勝利。中島はその勝利に貢献する先制のソロ本塁打を内海から放っている。

矜持を見せた今季ファーム左投手打率



2009年までの成績は307打数92安打の打率.300。2010年以降は相次ぐ怪我にも見舞われたこともあり、266打数59安打の打率.222に終わった。年々戦力の陣容が整いつつあったチームにおいて『左投手打ち』という1ツールしか持たない中島が、その活躍の場を徐々に減らしていくことは、残念ながら必然の理と言えるかもしれない。例えば今年、同じ右打ち外野手で守備にも定評のある牧田が途中まで左投手打率で好成績を残したこともあり、中島の出番はめっきり減った。僅か4試合9打席に止まった背景に、初期と比べてチームが成熟してきたその証を見る思いもする。

そんな中島だが、今季ファームでは好成績を残している。143打席に立ち、スラッシュラインは.323/.452/.369。OPS.821。左投手に限って言えば.347/.387/.510のOPS.898の戦果。1軍では精彩を欠いたものの、ファームでは「左投手キラー」の矜持を保つ成績を残している。

さて、惜別エントリーとなる本稿、やっぱり、最後は左投手成績の確認で締めくくりたい。

(下記に続く)

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■楽天・中島俊哉 vs左投手 年度別 打撃成績
※楽天在籍時。オリックス時代含まず。
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全150安打の86.7%をサウスポーから記録



対左投手打撃成績を年度別に算出してみた。楽天で左投手から放ったヒットは129本。オリックス時代の左腕セラフィニから打った初安打を含めると130本。右を含めた全150本のヒットのうち86.7%は実にサウスポーから放った点は、この人の特徴を良く表している。

楽天時代の左投手通算成績は打率.279。3割を下まわってしまったのが、やや残念だ。しかし、内海攻略に成功した2013年6/9巨人戦までの成績は427打数127安打の打率.297。3割近い数字を残していた。精彩を欠いた2013年もあの巨人戦終了時までは52打数17安打、5三振、3四球、4二塁打、1本塁打の打率.327の左投手キラーぶりを発揮していたのだった。今振り返ってみれば、初Vへ弾みをつけたあの内海撃ちが最後の輝き、あの場面で弾薬尽きるかたちになったのだ。

■楽天・中島俊哉 vs左投手 投手別 打撃成績
※楽天在籍時のもの。オリックス時代を含まず。

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楽天では72人のサウスポーと対戦



最後に、楽天で残した左投手成績を対戦投手別に確認してみよう。

1軍では実に72人のサウスポーと対戦、そのうち46人からヒットを記録している。


◎主な好相性の投手・・・武田勝、成瀬善久、吉川光夫、藤井秀悟、山本将悟、内海哲也、小笠原孝、村中恭兵、下柳剛

◎主な悪相性の投手・・・菊池雄星、和田毅、井川慶、石川一久、八木智哉、杉内俊哉、吉見祐治、能見篤史、森福允彦


初期のイーグルスは武田勝を苦手としていた。その中、中島は.350のハイアベレージ。2009年CSの3打数2安打1二塁打も入れれば43打数16安打の.372の対戦成績だった。

対戦OPS.951の快記録を残した藤井秀悟には、今季ファームでも3打数3安打、1四球、1二塁打、1本塁打の戦果を残した。

内海哲也からは対戦打率.500をマーク。OPSに至っては1.655の驚値。プロ初本塁打と、昨年放った最後の本塁打も内海から記録。日本シリーズでも3打数1安打の槍働きを見せている。

下柳剛とは5打席5安打の好相性。当時の下柳は阪神の先発ローテ投手として4年連続二桁勝利を記録した最後の2年間に当たっていた。当時のシャーパーは、脂が乗り切り円熟味を増したベテラン左腕をも苦にしなかったのだ。

杉内俊哉との対戦打率は.100。しかし09年CS13年日本シリーズの3打数1安打を入れると.154になる。杉内から放った3本のヒットのうち1本がホームランだったこと、3個の四球のうち1個が価値大の大記録阻止四球だったことを考えれば、数字では測り知れない戦果だとも言える。

一方、全く合わない相手も存在した。菊池雄星とは18打数1安打の.056。調べてみると雄星の速球に球威負けするかたちでのフライアウトが多かったようだ。メジャー出戻り井川慶とも15打数1安打の.067。高めの速球を狙っていくも打ち損じるケースも多かった模様である。


中島は左投手打ち以外、目立った才能を持たなかった。足も速いわけでもなく、外野守備も抜きんでるような部分はない。その左投手打ちも持って生まれた才能ではなく、磨き続けて苦心して掴んだ賜物だった。凡人が達人へといったイメージがある。その姿は私のような凡人に、ことさら勇気を与えてくれた。

最後になるが、私はシャーパーをリスペクトの念を込めて、こう呼びたい。

楽天イーグルス最初のディケイドに欠かすことのできない「偉大なる1ツールプレイヤー」だったと。

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08・09年の成績を挙げているのを見て思い出したことが。

07年の対横浜戦で土肥義弘から打ったタイムリー二塁打、その試合は勝利につながったこともあり特に私は忘れられません。
翌日の新聞にも「苦労人 中島」とあったので余計に。
球団HPで見ると、当日登録、即スタメン。
昔で言うところの「超二流選手」(故三原脩氏の言葉)でしたね。
厳しい世界とはいえ、戦力外は寂しくなります。

人員整理リストでコメントした時は独立リーグかjrコーチ、と書いていましたが、BCリーグに来期から埼玉と福島が加盟しますのでもしかしたら選手兼任コーチとして…。高須洋介も独立リーグでプレイしましたし。あとは奥さんと子どもの状況次第かな。
自分の気持ちにケリをつける意味でもトライアウトは受けてほしい。

あ、もし信濃グランセローズに入団した時はよろしければ応援して下さい。
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