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楽天の初V4番AJ、アンドリュー・ジョーンズ去就問題を考える

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楽天の初V4番AJ、アンドリュー・ジョーンズ去就問題を考える



日米で頂上決戦が盛り上がりを見せる中、最下位に沈んだ楽天イーグルスは早くも来季へ向けて始動。大久保新監督の下、組閣も無事終了し、ドラフトで安楽を1位抽選で引き当てた。現在、チームは秋晴れのコボスタで秋季練習(10/31まで)、2軍は宮崎でフェニックスリーグを戦っている。

報道に目を移すと、オリックスのペーニャ、DeNAを戦力外になった藤江均の獲得調査が報じられ、他球団より一足早くストーブリーグの色彩を強めている。

その中、残留か?(厳密に言えば新たに契約を結ぶのか?)退団か?微妙とされているのが、アンドリュー・ジョーンズだ。

本稿ではAJの今季成績を振り返り、残留or構想外どちらが妥当なのか?探っていきたい。

※本稿で出てくるデータは当ブログ調査によるものです。

まずは、AJの主な打撃成績・指標を表にまとめてみたので御覧頂きたい。

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■楽天 アンドリュー・ジョーンズ 年度別 主な打撃成績
※wOBAは『勝てる野球の統計学』40頁、データスタジアム社使用の日本版wOBAを用いた。計算式は同書参照。


似たような成績を残すことはできた



昨年不動の4番打者として143試合に出場。イーグルスを初Vに導いたAJは、オフに1億5000万増の4億の単年契約を結び、今季も132試合で4番に座った。

今季成績、結論から言えば「昨年の成績を上まわることができなかった。昨年の成績と全く同質のものを残すこともできなかった。しかし、昨年とほぼ同じような成績は残すことができた」という表現になりそうだ。

昨年を上まわる成績を残せなかったという点では、今年2月Web Sportivaの取材に対し「AJが日本の野球に慣れて、昨年よりもいい結果を残すだろうということです」と語っていた立花球団社長・チーム戦略室の目論見はハズレたことになる。

年俸4億に見合う槍働きだったか?ということになると「否」。ただし、4億の中には初Vへの功労金という意味合いの報酬も当然含まれているだろうから、及第点と見ることもできそうだ。また、同じく巨費を投じて補強した他の外国人勢(ユーキリスとかブラックリーとか)と比べた場合、十分すぎる以上の好活躍だった。費用対効果という点を抜きにして考えれば、今季の成績は一部ファンが言うような悪い成績でもなかったと言える。

パリーグの年間最多四球記録を樹立



今年は昨年以上に四球の多さに注目が集まるシーズンになった。118個はNPBシーズン四球記録歴代18位。パリーグでは1998年に日本ハム・片岡篤史が記録した113個を超えて新記録樹立となった。

三振の数は昨年164個、今年140個。依然として多かったものの、全打席の27.2%を占めた三振は今季24.1%まで減らすことに成功。逆に四球は増えるかたちになった。打席に占める四球の割合、下記の推移になっている。


■AJの四球%
2013年・・・AJ17.4% (リーグ平均8.3%)
2014年・・・AJ20.3% (同平均8.5%)


「動かざること山のごとし」といった佇まいで、多くの投手に重圧を与え、フォアボールを獲得してきたAJ。今季はさらにその色合いが強まり、1度もバットを振らずに記録した四球が実に73個あった。118個の61.9%が「山に徹する」ことで奪っていたのだ。この個数と割合、昨年は50個、47.6%だったから、今季の急増ぶりに改めて驚いてしまう。

パリーグ新記録を樹立させた9/27西武戦では印象的なゲームになった。四球、四球、見三振、四球、四球。合計26球のうちバットを振りにいったのは僅か1度だけという、今季のAJを良く象徴する光景も見受けられた。

数多くの四球を選んだAJに対し、読者の皆さんの中にはこう感じる人もいるかもしれない。

5番打者が不甲斐なかったため、一発のあるAJに対し、相手バッテリーがあえて勝負せず、四球を視野に入れた攻めをだったのでは?

私も似たような疑問を持っていた。

実際、AJの四球に占めるフルカウント四球の割合は、昨年55.2%だったのに対し、今年は43.2%を記録。昨年は追い込まれてから奪った四球が半数を超えていたのに対し、今年は3-0や3-1からの四球が多かった。相手打者がまともなストライクを投げてこなかった可能性もあった。

しかし、一方でこうも考えられる。

投手にとってはストライクからボールゾーンの誘い球でファウルや空振りを取ってカウントを整えたい場合、昨年のAJは手を出して2ストライクにさせられるケースがあったのに対し、今季はじっくり見きわめて逆にボールカウントを作ることができていたのでは?という仮説だ。調べてみると、AJのボールゾーンスイング率は改善傾向を示していた。昨年20.6%だったのが、今年は18.5%だった。

四球で歩かせて次打者との勝負を選択しやすい状況、例えば1死2塁、2死2塁での四球数にも、差異は認められなかった。1死2塁では昨年も今年も4個。2死2塁では2年連続で6個。全く同じ数だった。

AJの四球を得点価値(Runs Values)で診ても、“価値の低い四球を多く選ばされている”といった事はなかった点は、当メルマガVol.057で御紹介したとおりでもあった。

つまり、118個の四球は、相手バッテリーが勝負を避けたという要素もあったのだろうが、かなりの部分はジョーンズの頑張り、AJのNPBへの適応力が増したことによる「戦果」だったと言える。2年目で対戦投手が投げてくる球の球種や軌道、癖などがインプットされていたからこそとも考えられる。

打点減。満塁時で打棒振るわず・・・



一方、気になるのは、打点の少なさである。

2年ともチーム最多打点は記録したものの、昨年94から23減の今年71は、明らかに少なすぎる。今季は銀次にあと1に肉迫される事態にもなった。

特に満塁時の成績が振るわなかった。昨年は満塁15打席で15打数7安打1本塁打、19打点。今年は10打席7打数ノーヒット、3打点。満塁時に挙げた打点だけで16減となった。今季の打点減の主な原因は、ひとえに満塁で打てなかった点に尽きると言えそうだ。(個人的な印象ではAJ打点減の原因の7割がこれ)

ただ、次のことも指摘しておかなければならないだろう。今年はチーム出塁率が低かった楽天。昨年リーグ2位.338の数字が今年は同4位.327まで減。この点もAJ打点減に影響を与えている。AJの走者なし打数、昨年は全打数の47.7%、今年は49.1%に増えている。逆に得点圏打数。昨年は32.6%だったところ、今年は28.6%まで減っている。

満塁時でも昨年から5打席減になっていたことを考えると、走者有・得点圏でAJにまわるアットバットの数そのものが減っていたため、打点の機会が得られなかった要素もありそうだ。(個人的な印象ではAJ打点減の原因の3割がこれ)(上位打線の出塁率というより、9番打者の出塁率の低さがAJに影響を与えている気がする)

以上、まとめると、四球を多く選んだり、打点が少なかったりしたものの、どうにか昨年と同じような数字を残すことが出来たAJの2年目だった。

(下記に続く)



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残留はあるのか?ないのか?



しかし、もし残留となれば3年目の来季、果たして同じような成績を引き続き残すことはできるのか?

このことである。

私はリスクを背負い込むことになると見ている。

幾つかの懸念材料をチェックしていこう。

加齢という「抗えない現実」



最大の不安要素は年齢が37歳から38歳へ1つ歳を取ることのデメリット。これは大きい。10代や20代の伸び盛りの加齢ならともかく、35歳以降の加齢は衰え以外の何物でもない。今季は右膝痛など故障と戦って苦しいシーズンを過ごしたAJ。来季はさらに潜在的な故障リスクは高まるはずだ。

また、以下に挙げる懸念点は、いずれも加齢(衰え)の影響を疑わざるをえないものばかりである。

外野大飛球の減少



この点は日曜日のエントリー「【記録】 2014年 プロ野球 本塁打 平均飛距離ランキング (20本以上の打者15人対象) 」で指摘したとおりである。

ホームランこそ昨年26本、今年24本、ほぼ同数を残したが、その平均飛距離は年々下落傾向にある。2008年31歳の時には平均飛距離130mだったのが、今季は117.5m。これはは岡島の117.9mに及ばない数字になっている。

ウォーニングゾーン以遠を襲う外野大飛球の本数、割合も前年減になっていた。詳しくは前述エントリーを御参照頂きたい。

速球の打撃成績が悪化



ベテラン選手が今後も好活躍できるか?をうらなう際によく言われるのが、速球の対応度である。

AJの場合、この成績が悪化している。

■速球打撃成績
※ここで言う速球はストレート、シュート、ツーシーム含む


打率は.299から.242に後退。OPSも1.040から.906に減少した。

中でも長打率の減少が著しい。昨年と今年、分母(打数)は同じながらも長打5本減となっている所が、長打率を落ち込ませた原因になっている。

■145キロ以上速球の打撃成績


145キロ超えファストボールの成績大幅悪化



もっと深刻なのはスピードボールへの対応力だ。NPBでは140キロが速球の平均球速だという認識だが、その中でもスピードボールになる145キロ以上の速球。この成績が大幅に悪化しているのだ。

打率は.255から.172へ、OPSは1.053から半減と言ってよい.570へ。昨年は145キロ以上のストレートを打って6本をホームランにしていたのが、今年は6/15巨人戦のマシソン撃ち1本止まりだった点が、AJの野球人生が終着点に近づきつつあるのを物語っている。

AJの処遇いかんで大きく変わる楽天のチーム戦略



以上のことから、ここ2年で残したものと同程度の成績を来季残せるか?と言われれば、ハイリスクになるかもしれないと思うのだ。ただし、個人的には、構想外も十分理解できるものの、来季もう1年契約しても良いのでは?とも思っている。

費用対効果を最優先するなら、来季1年契約を結び直すとしても今季と同額の4億円は高すぎる。1年目と同じ2億5000万程度、あるいは2億円前後に落ち着くのではないか。(AJ次第だけど...)

やっぱり「動かざること山のごとし」で相手投手に球数を多く放らせ、追い込んでいくスタイルは魅力的なのだ。(ストライクかボールかを判別する)選球眼は加齢でも衰えにくいとされているため、最悪の場合でも出塁率.350台は残してくれそうなイメージも持てる。(打率.200でもIsoD.150なら出塁率は.350は担保される)

もし退団なら新たにチームを作り直すことになる。この案件への球団の判断1つで、攻撃のかたち、チーム戦略が大きく変更になることを意味する。例えば、もっと足を使っていく攻撃スタイルを掲げるかもしれない。他球団がAJを獲得しにいく可能性もかなりの確率でありそうだし、もしそれがパリーグともなれば来季は敵として対峙することになる。できればそれだけは避けてもらいたいと思うのがファン心理。初V功労者のAJを他球団にかっさらわれるのは、心情的に辛すぎる...

残留の場合は大久保監督がAJを上手い匙加減で起用してくれそうな期待感もある。今季代行時に出塁率が高く一発のあるAJを3番に据え、初回の立ち上がりに相手先発に重圧を与える意図は、なるほどと思えた。あんなかたちで、デーブ監督がAJを上手いこと使いこなす雰囲気も感じられ、その点でも興味深くなる。【終】

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