ほぼ全文の書き起こしをしました→NHK BS4/20放送分、ザ・データマン「“0.44秒”打者ねじ伏せる直球劇場」
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こんばんは。@eagleshibakawaです。
先週土曜深夜(正確に言えば日曜午前0時00分~0時45分)、NHK BSで放送された『ザ・データマン』
『ザ・データマン』とは「あらゆるスポーツを「数字」で徹底解剖!数字に隠れた真実!プロのトップアスリートも驚く意外なデータの意外な切り口で競技の醍醐味に迫る新感覚スポーツ番組」とのこと。
プロ野球ファンの中には昨年秋、ここでUZRが紹介されていたことを見た方もいらっしゃるのではないでしょうか?

今回は150キロの直球劇場。ピッチャープレートからホームベースまで150キロの直球が到達するのにその所要時間、僅か0.44秒。その中で、打者と投手のせめぎ合いが展開されるのです。
この0.44秒を軸に直球勝負の現場を数字やデータ、科学的見地から迫ったのが今回の内容でした。
へええ!と唸らされるタメになる内容でした。この放送を見た後に、AJと大谷翔平の直球勝負を目撃しましたから、なるほど!と思いながら楽しむことができました。
という訳で、本番組、見逃した方もいらっしゃるかもしれないと思い、書き起こしをほぼ全文実施してみました。
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ヤンキース田中将大投手。初めて大リーグの打者と対決した日、世界が注目したその記念すべき1球目は──
実況アナ「まず初球は149キロのストレート」
直球だった。強気の直球勝負がどれだけメジャーで通じるか? 時速150キロの直球。ボールが手を離れホームベースに至るには、僅か0.44秒。
野球の華と言えば、やっぱり、直球勝負でしょ。その秘密を解くカギは0.44秒を巡る攻防戦にある。スイング時間を除けば、ボールを見きわめる時間はごく僅か。
しかも、優れた投手の150キロの直球は加速するように感じると言う。ノビがある。キレがいいと言われる直球。直球の秘密を徹底解剖。伸びるって何? なぜ打者は打てないの? 上原も、ダルビッシュも、直球勝負。それが打者をねじ伏せる。0.44秒に隠された直球の真実に迫る。
設楽統「さあ、始まりました。ザ・データマン。今シーズンの野球ファンの方の楽しみは、なんと言っても、田中将大投手のですね。大リーグに行って速球でどれだけ向こうのバッターをですね、バシバシ三振を取っていくか?なぎ倒していくか?ってことじゃないかなと思いますけれども」
竹中三佳「はい、あえて田中マー君と呼ばせて頂きますけれども、マー君イコール剛速球投手ってイメージがやっぱりありますもんね~」
バナナマン・日村勇紀「そうなんですよね。マー君ってやっぱり摩球って言われるスプリット」
設楽「あれ?パンチョ伊東さんかな?」
日村「(パンチョ伊東の真似をして) 第1回選択希望選手。読売」
設楽「ははは。あれ?日村さん」
日村「日村です。楽しみだね~」
設楽「真っ向勝負がね」
日村「剛速球ですから、マー君」
設楽「強気のピッチングって言うかね。これは楽しみ」
竹中「通用するか楽しみですけれども、今回、直球の凄さを解説頂きますのは、石川ミリオンスターズのゼネラルマネージャーであり投手でもある木田優夫さんです。よろしくお願い致します」
木田優夫「よろしくお願いします」
設楽「ゼネラルマネージャー兼現役で投手をやられているということで。このマー君、大リーグ楽しみですけれども、率直に大リーグではもちろん通用すると?」
木田「そうですね。普通に日本にいた時と同じように投げれてるんで、十分」
日村「何勝しますか?」
設楽「そんなに?急に?」
木田「僕は15ぐらいいくんじゃないかなと」
日村「もっといって欲しいですね!」
竹中「はははは(笑)」
日村「俺はね、20勝いってほしいですね~」
竹中「そこで今回の数字はこちら」

竹中「0.44秒」
設楽「1秒ないんですよ。0.44秒」
竹中「そうなんですよ。この数字をちょっと説明致しますと、田中投手の直球は150キロと言われています。この田中投手が投げるときにボールが手から離れた瞬間からホームベースに到着するまでの所要時間が0.44秒と言われているんです」
設楽「はあ、1秒全然ないんだね」
竹中「もうほんとね。あっという間ですよね」
設楽「あっという間です」
竹中「この0.44秒の間に、打者はボールを見て、振ろうかな?振らないかな?とスイングするかどうかを考えて打たないといけないんですよね。平均のプロ野球選手のバットスイングの動作は0.2秒なんですよ」
設楽「動作がね」
竹中「スイングが0.2秒取られちゃうと。っていうことは残りは単純計算で0.24秒と」
設楽「そうですね。物凄い時間ないですよ、これ」
竹中「そうなんです。こちらをご用意しましたので」
設楽「お、バット」
竹中「試して頂きたいんですよ、じゃあ、前に出て」
設楽「じゃあ、全国のバッターを代表して」
日村「そうだね、0.2秒で」
設楽「木田さんもちょっとこちらに来ていただいて」
竹中「バッターがボールを打つときに、片足ありますよね。その片足を下ろした瞬間から当てて振り抜くまで」
日村「こうなる。ここまで」
竹中「そうですね」
設楽「日村さん、物凄く速く振ろうと思わないといけないから、バットそんなに長く持っていたら」
日村「そうだね、短くいこう」
設楽「もっともっと、もっともっと。そのくらい短く持てば」
日村「(バットの先を持って)こうなる。(バットのグリップが股間に当たりそうになって)脇腹じゃなくて、ここにいきそうになる(笑)」
設楽「そうか(笑)」
竹中「あははは(笑)」
竹中「(木田が日村に向かって投球動作をして)振りかぶって、投げました!」
日村「じゃん!(とバットを振り抜く)」
竹中「どうですか?」
設楽「(ストップウォッチを指し示して)0秒37」
日村「ああ、まあ、これでも、こんなもんだね、おじさんがやれば」
設楽「これだともう、投げてから0.44秒のうち0.37使っちゃってたら、もうこうやっているうちにズドーンと」
日村「そうそう、そういうこと」
設楽「いかに速いかということですよ、プロのスイングが」
日村「そういうことよね」
設楽「木田さん、これ直球投げて、勝負の時間は着くまでに0.44秒。この間で考えてバットスイングするという自覚はあるんですか?」
木田「僕ら投げる時に、バットに当たる瞬間にどういう球を変化させたりとか、ちょっと押しこんでやろうとかっていう感覚で勝負したりするので、投げてて感覚で自分でも切れているなという感覚のときありますし。言葉で表現すると、伸びてるというのは、こう自然に投げてて球がダーンとこう良い感じにね。バーン!とね」
設楽「ははは。そういう説明になるんだね」
日村「やってる人のイメージなんだよね、やっぱり」
竹中「あははは」
設楽「でも、このイメージなんですね」
竹中「そうですね。こういうイメージありますね」
木田「切れてるっていうのは、自分で意識してガン!といかせる」
日村「長嶋さんっぽくなりますね(笑)」
竹中「あははは」
設楽「打者をねじ伏せる直球勝負の0.44秒、これ野球の奥深さ、何か隠れてそうですね」
竹中「そうですね。そこで、この0.44秒を掘り下げてくれるのは数字に強いあの男です。呼んでみましょうか。せーの!」
設楽&竹中「データマーン!」

0.44秒。打者をねじ伏せる直球に挑む男、データマン、安岡直。
加速する直球の秘密を探りたいと対戦を申し込んだのは?
安岡「データマンの安岡です。よろしくお願いします!」
ゴールドジムベースボールクラブ選手一同「よろしくお願いします!」
社会人野球で直球勝負をしている本格派投手達だ。果たしてその直球を打ち返せるか?
安岡「私にお任せ下さい。といっても本格的なピッチャーと対戦するのは初体験ですわ」
(社会人投手のストレートが高めに投げ込まれる)
球速130キロ
安岡「うわあ、速いよ。真っすぐって感じですね。全然、(手で横一直線を描いて)真っすぐ。見たことないものというか。落ちないから」
直球。なぜ落ちないのか?
その答えを探るため、特別なカメラを用意。さらにボールの半分を着色。こうすれば伸びの正体が分かるという。実験に立ち会ってくれるのは科学的見地から野球のボールの動きを研究している神事努先生(国際武道大学助教)

竹中「(テロップに映し出された、趣味:バナナマンのラジオを聞くことを見て) バナナマンのラジオを聞くことらしいですよ、神事さん」
設楽「あはははは」
切れや伸びがある直球の実像が浮かび上がる。
(投手の投球スローモーショーンが映し出される)
安岡「おお、凄い回転してますね」
設楽「凄げえ、このカメラ」

直球にかかっていたのは矢印方向の回転。
神事「進行方向にバックスピンですね。指がこうまわってそこからボールに回転を与える力が加わってそこから放たれるっていう感じですね」
直球を投げる投手はボールにバックスピンをかけていた。これが伸びる直球の正体。
竹中「ほんと、落ちないんですね」
設楽「ほんとだね」

神事先生によると、バックスピンがかかったボールには重力を打ち消す力が加わる。空気の流れにさからい進むボール。
このときバックスピンがかかっているとボールの下では空気の流れがぶつかり合い、気圧が高くなる。ボールの上は回転しているため気圧が低くなる。
設楽「うわあ、気圧の高い、低いが生まれるんだ」
この気圧の差が揚力となってボールを押し上げる。マグヌス効果と呼ばれるものだ。重力にさからいボールが落ちずに飛ぶ理由だ。

安岡「(ボールを刺したドリルをまわして) これで1秒間に11回転。プロの150キロの速球はこの4倍以上にスピードで回転している」
設楽「え?そんなに?」
日村「四十何回転するんだ」
そこで僕も投げてみることにしました。気合い十分に臨んだのですが、放物線を描き、落ちちゃいました。計測は70キロ。球が遅いと落ちる。いやあ、そうじゃなかったんですよ~
神事先生は特別マシンを手配してくれた。
同じ球の速度で回転数だけを変えるピッチングマシーンだ。

1秒間当たり20回転と40回転ではどう違う?
20回転、確かにバックスピンで回転。でもホームベースに近づくほどボールは落下していきます。
竹中「ああ、落下している」
一方、回転数が2倍の40回転。ボールはほとんど落ちずにホームベース上まで到達しました。
設楽「うわっほんとだ。落ちないね。来てる!来てる!」
竹中「迫ってくる感じありますね」
20回転と40回転。球の速さは同じなのに、ホームベースに近づくほどその差は大きくなっていく。より速く回れば、より落ちないのか。
竹中「こんなに違うんだ」
設楽「ね、こんなに違うんだ」

さらに神事先生に科学的な分析を依頼。40回転のボールの位置を正確にインプットしていくと、
安岡「こうやってみても、ほぼ直線で飛んでいますね」
神事「そうですね」
設楽「ほんと、真っすぐなんだね」
日村「凄い、凄い。全然落ちていない」
20回転のボールと比較すると差は歴然。20回転のボールは落下の幅が大きく、マウンドとベースの中間で落ち始めていました。
さらにキャッチャーが捕球する高さを比べると、その差は40cmもあったのです。
設楽「え?こんなに変わるの?」

安岡「1回転2回転上がると、どのくらい変わるとかっていうのはあるんですか?」
神事「1回転でだいたい2cmぐらい上がっていきます。ですので、2回転上がるだけで4cm、キャッチャー方向では到達点が変わってくるということになります」
安岡「4cmも変わる!」
神事「3回転上がったらボール1個分ぐらい変わってきます」
安岡「3回転で6cm。いやもうこれ全然越えますね。バットとボールの大きさでいったら。これはデカい」
打者をねじ伏せる直球。伸びるその正体は高速の回転。直球勝負の裏には回転数というデータが潜んでいた。
設楽「はああ、面白いね。こうやってみるとバックスピン、直球でも同じスピードでも回転数が違うとあんなに違うんだって分かりましたね」
木田「指先から離れるときの感覚が普段より良いと、普通に投げていてもより回転がかかってくれるので、普通に投げててもボールがピューンといってくれる。それが伸びてるっていう感じですね。で、ファウルを取りたい」
設楽「チップさせたい?」
木田「そうですね。そういうときはバットの上に当てたいわけですね。そういうときはだから今言ったように、ちょっとスピンを強くさせてあげると」
設楽「そんなこと、手元で?ってことですか?」
木田「僕らは手元でここで、もう1ついつもよりもスピンかけてあげようと思って投げて、ほんとそれがちゃんとかかってくれれば、今言ったようにボールがいつもよりも何cmか上にいくわけだから、当然ファウルになってくれるだろうということなんです」
設楽「え?そんな勝負しているんだ! ここファウルチップさせたいからちょっと最後のグッてやると回転が変わるから」
木田「そうそう」
設楽「ちょっと上にいくだろうと、凄くない?」
日村「凄い!その世界!」
竹中「はい。こちらをご覧頂きたいんですけれども。投手がボールの回転数を意識していることが良く分かる写真なんですけれども。昨シーズンまで大リーグで活躍されていた高橋尚成選手なんですけれども、4年前大リーグ移籍を目指していた頃の自主トレなんですね。何かが違う、何かがおかしいのは分かりますか? あれ?っと思うことは?」

設楽「日村さん、何がおかしいんでしょうか?」
日村「えーっと、ボールかな? ボールがちょっとデカいというかね」
竹中「おおっ!」
設楽「あれがね。デコポンだったらね」
竹中「あはは」
日村「デコポン投げないで~、高橋選手。いや、違うよね。あれボールでしょ?」
竹中「こちらソフトボールなんですよ」
設楽「このトレーニング、何をやっているんですか?」
木田「単純にまず1つはボールが大きいので扱いづらいので、本当に綺麗な放し方をしないと、ちゃんとした回転を与えられないので」
設楽「自分の回転の精度を上げるため?」
木田「そうですね。ウチのミリオンスターズの若いピッチャーにも去年何人かやらせて」
竹中「へええ」
設楽「ソフトボールで?」
木田「はい、ソフトボールで」
設楽「他に回転を意識する練習って何かやられてたり、教えてたりすることってあるんですか?」
木田「あとは寝ころんでボールを投げたりとかですね」
設楽「寝ころんで?」
(スタジオの床に寝ころぶ日村)
日村「真上に?」
木田「真上です」
(寝ころんだ日村が真上に向かってボールを投げる)
木田「今そのときに回転していないじゃないですか。それを回転させるんですよね」
日村「回転させる? ボールをバックスピンさせるんですよね?(と言いながら)投げたら前へすっぽ抜けてしまった)」
設楽「いやいやいや、何してんの?何してんの?」
日村「そうなっちゃう」
木村「そういうことです」
説楽「なぜですか?」
木田「バックスピンをかけなければいけない、真っすぐの綺麗な回転をさせなきゃいけないと思うので、みんなボールをこうやって投げようとするんですよ、こうやって。実はこうやって投げるとバックスピンはかからないんです。実際立って向こうへ投げるときはボールはこうやって投げないといけません」


説楽「そっか、こういう軌道でいくためには、寝ながら投げる真っすぐの感覚に近いんだ」
木田「そうです」
設楽「このままやってて回転をかけようとするとこういう方向にボールに力を加えているんだ。だから寝ながら」
木田「(寝ながら真上にボールを投げる仕草をして)これだけの動きをちゃんと身につけられるように」
設楽「ああ、理に適っている。凄い」
田中投手、公式戦デビューの日。最初の打者、メジャーの洗礼から始まった。打たれたのはスプリット。
実況アナ「高めにいった。イチローの上、越えたー」
序盤は変化球主体の勝負で次々とピンチを招く。
実況アナ「2塁ランナーも返ってくる」
2回終了後、田中投手はキャッチャーのマッキャン選手と何事か相談。その後、田中自慢の直球が冴え始めた。中盤以降、直球の占める割合は70%に迫った。
実況アナ「見逃し三振!」
初登板初勝利を呼び込んだ。
さらに本拠地ヤンキースタジアムでも、伸びがある、そして切れのある直球で真っ向勝負。日本仕込みの直球が大リーガーをねじ伏せている。
レッドソックスの上原浩治投手も大リーガーをねじ伏せる日本人。しかし、上原の直球は決して速くない。でも打たれない。なぜ?
日本投手のデータを洗い直してみた。

(データスタジアム)
安岡「データマンの安岡と申します」
データスタジアム佐々木浩哉氏「データスタジアムの佐々木と申します」
野球データのスペシャリスト、佐々木浩哉さん。
安岡「直球で三振を取ったりするのが得意なピッチャーってのを探してて、教えて頂きたいなと思うんですけど」
佐々木「ある程度球数を投げているピッチャーで、先発投手に限定して今回はお出ししてみたいと思っています。2006年から2013年までのデータで合算するとですね。こういったビッグネームが並ぶような、はい」

竹中「でも、ダルビッシュさん、2位なんだ」
球界を代表するエース球がずらり。打者をねじ伏せる直球を武器とする投手達だ。
佐々木「だいたい10球に1球空振りを取れると、かなり優秀なストレートっていうことがまず言えるんですけれども」

安岡「1位の和田投手は球速そんなに速くないですね」
佐々木「そうですね」
竹中「ああ、ほんとだ~」
佐々木「それほどスピードが出るタイプのピッチャーではないんですね。130キロ台がほとんどなんですけれども、それにも関わらず非常に高い奪空振り率。2位のダルビッシュ選手と比較するとほんとにスピードでは随分落ちるにも関わらずそれ以上の」
安岡「そうですよね。ダルビッシュ投手を抑えての1位が、平均球速140キロいっていないって凄いことですよね。意外だ」
竹中「意外!」
ランキングではさらに平均球速が遅い選手が。
135キロ。ロッテの成瀬投手。(平均球速135.5キロ、奪空振り率7.17%)
設楽「成瀬投手か~」
プロ入り11年目。ロッテ・成瀬善久投手。球速は決して速くない。速くない直球なら打たれるはずだが、成瀬投手は空振りを奪う。
日村「不思議だな」
速くない直球でもなぜ打たれないのか?
データマンは再び神事先生のもとへ。(国際武道大学へ走る安岡)
安岡「球速がそんなに速くない投手がなぜ三振をいっぱい取れるのか?っていう」
神事「それには、ボール速度と回転速度の組み合わせにその秘密が隠れていると思います」
その秘密を解き明かす投手にまつわる貴重なデータがあるという。

神事「これ今、322人分のボール速度を横軸に取って、縦軸に回転速度を取ったグラフになります」
安岡「ははあ」
神事「ボール速度が速くなると、回転速度も大きくなるというような傾向は見てとれます」
安岡「そうですね」
ボール速度と回転速度の平均値に1本の線を引く。多くの投手はこの平均値辺りに集中。しかし、中には平均から大きくはずれた投手もいる。

神事「例えば、このあるピッチャーを見てみますと、球速そのものは130キロいかないぐらいってことが言えます。普通ならばここだと30回転ちょっとぐらいの回転速度になっているはずなんですが、こう見ると40回転を越える回転速度を持っています」
安岡「凄いですね」
このA投手は甲子園で1試合10奪三振を挙げた。大学野球でも伸びがある直球を評価された。
一方、A投手とは真逆にはずれているのがB投手。球速はプロ並みの137キロ。この球速の平均的な回転速度、毎秒33回転から大きくはずれ、19回転しかしていない。タレると言われる球だが、三振の山を築く。社会人のエース、プロが注目している。
成瀬投手の遅い直球。その回転速度はやはり平均値からはずれていた。球速135.5キロ、回転速度毎秒34.2。平均値よりおよそ2回転多い。神事先生の研究を思い出して欲しい。1回転多ければ2cm上にくる。回転速度が平均値からはずれると打者が予想できない直球になるのだ。
設楽「これは興味深いですね。確かに球速が物凄い速い球を投げなくても空振りを取るピッチャーっていますよね。それが回転数に関係しているっていうね」
竹中「ここでまたこの表に戻りましょう。これまでは打者に球がどう見えるのか?を中心に0.44秒を見てきましたけれども、ここからは打者がその球をどう打つのか?を中心に0.44秒を探りたいと思います。実はスイングの動作に移すまでに、脳から伝達が筋肉にいきますよね、振ってくださーいっていう。それがプロの場合でも0.1秒かかってしまうんですよ。つまり、残りの僅か0.14秒で打者はボールを見きわめて判断しないといけないんです」

設楽「0.14秒で見て判断して、脳に伝達が0.1秒かかって、スイングが0.2秒。これはどうするんだろう?」
竹中「ではこの短時間にバッターに必要なものって何だと思いますか?日村君!」
日村「必要なもの? 絶対に大切なのは『打つ!』っていう強い気持ちよ!」
設楽「いや、それは俺もそう思う」
日村「それは絶対必要」
設楽「俺はこれで飯食ってんだっていう。でも、多分それは正解じゃない」
竹中「あははは。こちらの写真を見ることで何が打者に必要なのか分かると思います。分かりますか?」

日村「イチロー選手でしょう?」
竹中「イチロー選手です。木田さんならすぐに分かっちゃうかもしれませんよ」
設楽「木田さんならすぐに分かっちゃいますかね」
木田「いや(苦笑)」
竹中「あれ?」
日村「え?ボールをちゃんと見るとか? そもそも単純なこと? お、ボール見てねえな。インパクトの瞬間、ボール見てない。イチローさん、ちょっと前を見てる」
竹中「まさかの正解です。そうなんですよ。打撃で最も必要とされるインパクトの瞬間を目で追ってないんですよ、イチロー選手。ちょっと目がインパクトより先を見てる感じなんですよ」
インパクトの瞬間、あのイチロー選手がボールを見ていない。打者は0.44秒の間にどう直球を捉え、打ち返すのか? スポーツで目が果たす役割を研究する専門機関を訪ねた。

安岡「失礼します。初めまして。データマンの安岡と申します」
眼科医・真下一策氏「初めまして。真下です」
真下一策さん。眼科医の立ち場からスポーツの目の使い方を研究している第一人者。数多くのプロ野球選手の目を研究してきた真下先生に写真を見てもらうと、
安岡「(イチローの写真を示して) これなんですけど、目がですね、ボールここなんですけど、こっちのほうを見ているように感じるんですよ。これに関しては?」
真下「この視線から辿りますと、これだけ先ですよね。この間は中心視で見る必要がないんだろうと思います」
この耳慣れない言葉、中心視というのは人間の視野の1つだそうです。
実は打者はボールを打つ時に2つの視野を使い分けています。まず、ボールの出所や球種を見きわめるために使う中心視。1点に集中するのです。
しかし、見える範囲は5度と狭く、時速150キロのボールを捉え続けることはできません。そこで打者は迫り来るボールを追い続けるために、視野を広角レンズのような周辺視という機能に切り替わります。高速で動くボールを広い範囲で感じることができる視野です。
つまり、打者は0.44秒の間に中心視と周辺視、2つの機能を巧みに使い、ボールを捉えているのです。
イチロー選手が身体が泳ぎながらもヒットが打てるのは周辺視が優れているためだそうですよ。

真下「例えば、野球の神様と言われた人はボールが止まって見えると言いました。あるいは、ボールの縫い目が見えると言った人もいます。これはですね、何を意味しているかというと、見る能力に関係するんですが、凄く優秀な動体視力である。そういう言葉なんですね」
安岡「はああ、動体視力」
真下「動体視力が素晴らしい」
野球に必要な目の能力はスポーツビジョンと言われている。真下先生はこれまでプロ野球選手を調査し、データ化してきた。これはある有名なプロ野球選手のスポーツビジョン評価。大きな八角形に近いデータは全ての項目で優秀な能力を兼ね備えている証だ。

(目と手の協応動作)
どこに点が出るのか?周辺視で察知し、正確な場所を中心視で見きわめる。さらに手を連動させ、触る。打者がバットでボールを合わせるときに必要な能力の検査だ。
木田「イチローは僕ら選手同士で見ていて本当に一番優れているのは、目と手の協調性です。ボールを見える選手は他にもいるんですね。でも、そこにバットを正確にポンと出せるかが勝負になってくるので、目と手の協調性。見たところ、ポンと出せる能力はイチローは誰よりも優れていると思いますね」

0.44秒の直球勝負。瞬時に反応し、打ち返す。ぎりぎりの攻防。打者は身体に備えられた機能をフルに発揮し、コンマ数秒の壁に立ち向かっていた。
木田「種類はちょっと違う部分はあると思うんですけど、実はシアトルマリナーズは毎年キャンプで目の検査、選手全員やるんですよね、僕もやったんですけど」
設楽「あ、そうですか。どうだったんですか?」
木田「全部平均で、何も良いところも悪いところもないっていう感じで」
日村「ははははははは」
設楽「いいんじゃないですか(笑)」
木田「まあピッチャーなんでね、サインさえ見えれば大丈夫かなと」
竹中「あははは」
設楽「目がいいってよく言うじゃないですか? 目がいいバッターって印象深い人いますか?」
木田「そうですね。僕はあのうジーターですね」
設楽「ジーター」
木田「結局、目がいいって、見えるだけじゃなくて、それをどう判断できるかなんですよ。この球は打っていいのか悪いのかってことを判断しなきゃいけない。それは僕らが言う目がいいバッターは判断できる。ジーターは本当にぎりぎりまで判断できる。見逃すときって本当に前のめりでここまで見逃すんですよ。ここまでぎりぎり見てる中で打たなきゃいけないときはそれこそそこからバットがポンと出てきてヒットを打っちゃうんですよ。あれは他の人には真似できないバッティングですよ」
日村「そういうことなんだ。よくこう前のめりになっちゃったって、よくあるよね、そういうシーンがね」
大リーグで好発進。直球がメジャーでも通用している田中将大投手。
安岡「そういえば去年、マー君の直球に釘付けになった名勝負あったなあ~。楽天のリーグ優勝がかかった西武戦、9回裏の戦い。1アウト2塁3塁のピンチにマー君は直球だけで真っ向勝負を挑んだんです」
(あの時の映像が流れる)
それは田中の8球と名付けられたドラマだった。
しかし、なぜ直球だけで勝負できたのか? 田中投手の強さを探るため、筑波大学へ向かった。

安岡「失礼します。初めましてデータマンの安岡と申します」
筑波大学・金掘哲也氏「初めまして。筑波大学の金掘と申します」
協力してくれるのは、野球選手の動きを動画解析し研究している金掘さん。
金掘「専用のソフト、このパソコンに入っているんですけれども」
データマンが持ち込んだ田中の8球の映像を分析し、田中投手の直球の秘密を探る。
ポイントとなる関節など25か所を動きに合わせ打ちこむ。スティックピクチャーという分析方法だ。そうして露わになった田中投手のフォームの全貌。この線から直球の進化が読み取れるという。

金掘「これがスティックピクチャーとして完成したもので、この左側が田中投手の入団当初2007年の頃、右側が2013年、昨年の投球フォームになっています」
安岡「どこが違っている?」
金掘「そうですね。2007年から13年にかけて踏み出す始めのところまでは似ているんですけども、踏み出してからの動作が2013年のほうがかなり良くなっていますね。こうやってステップを踏み出したときにですね。2013年はもう膝を開いた状態で接地しているんですけど、2007年は閉じたまま」
設楽「全然違う」
安岡「それは開いたほうがいいってことですか?」
金掘「そうですね。これを開いた状態でその後腰をまわしていく動作が入っていくんですけども、筋力と柔軟性もないと誰もが真似できる動作ではないんですけども、開いた状態で投げられた田中選手は凄く良いフォームに進化したんじゃないかなと思います」
伸びのある直球を生み出す下半身の柔軟性。それを田中投手は入団後、鍛え上げていた。
さらに伸びる直球を裏付けるのが、体幹に対しての腕のしなりの角度。最大凱旋角度は107.04度。平均的な投手と比べて5度近くしなっているというデータだった。
安岡「ストレートを投げるときに大きく関係してくるんですか?」
金掘「そうですね。凱旋が大きくなると腕を振る距離が長くなっていきますので、自然と伝わるエネルギーが大きくなっていきます。それとストレートに伝わる力も自ずと大きくなっていきますので、最大が大きい投手はかなり良いボールを投げると思います」
(安岡が投球フォームを試しながら)
金掘「これが凄くですね、柔らかく後ろに入っていきます。打者からボールが隠れてしまうんですね」
安岡「あ、なるほど。頭の後ろにくるということですね、手が。(カメラさんに向かって)どうですか?見えてますか?」
金掘「(安岡の手を頭の後ろにもっていきながら)ここからまだ隠れるんですね」
設楽「バッターからみたら見えないんだ」
安岡「あはは、ギブギブ(笑)」
金掘「出来る限り遅くまで隠れているんじゃないでしょうか」
安岡「なるほど、隠して隠してぎりぎりまで隠すことができると。良く分かったんですけど、僕の肩はもう今日は使い物になりません(笑)」
竹中「何もしていないのに(笑)」
金掘「誰もはできないですね。やっぱり天性の柔らかさがあるんじゃないかなと思います」
そして、さらなる努力が。リリースの瞬間の前傾角度。1年で5.2度も鋭角になっているんです。
重要なのはこれによって球を放す位置が3cm打者寄りになったことです。
僅か3cm、されど3cm。ピッチャープレートからホームベースまでは18.44m。100分の1秒のせめぎ合いにとっての3cmとは?
安岡「(実際に巻尺で18.44mを測りながら) ここから1、2、3cm。この距離感でこれだけですよ。いやあ、超微妙。これが影響してくるっていう、プロのギリギリの戦いってことですね」
設楽「3cm遠くなるだけって、こんなの消しゴム1個分じゃないですか?」
竹中「あははは」
木田「そうなんですよ。ただそれがボールに対してバットがこういう角度で3cm奥へ行ったら当たるわけですよ。そうするとファウルになったりするわけですよ。これが3cm前で当たるとヒットになる」
設楽「バットで言うと凄くわかりますよね。それはエラい違いになってくる」
日村「分かる、分かる」

さらに映像の分析から田中投手の直球が当たりにくい秘密がもう1つ浮上。直球もフォークもほぼ同じフォームで投げている。2つを重ね合わせると一目瞭然。打者は投球フォームから球種を見分けられない。
設楽「ほぼ同じですね」
竹中「うん」
直球で追い込み、フォークで仕留める。それが田中投手の勝利の方程式。しかし、あの伝説の名場面、田中投手はその方程式の裏をかき、全て直球で勝負した。
日村「見逃すわけだ」
竹中「すごーい」
考え抜いた配球でさらに威力を発揮した直球。大リーグではどんな伝説を築いてくれるのか?
田中投手0.44秒の直球勝負は始まったばかりだ。
木田「まず、僕なんか本当にピッチャーだと癖でバレちゃいます」
設楽「癖?」
木田「例えば、サインを見ててセットポジションに入ったときに、ストレートが例えばここで、直球がねここで構えているとするじゃないですか? フォークは挟むわけですから挟みづらいのでちょっと離れていたりするんですよ」
設楽「あはは、そこで見るわけですか?」
木田「グローブの角度がこうだったりこうだったり」
設楽「すげえ!」

木村「こうやってグッと挟んで握るピッチャーもいるので、そうするとこの入り際も、ストレートだったら普通にスッと入るのに、こう入ったりする(笑)」
日村「ははははは」
設楽「これで分かっちゃうんだ、そうか。こいつ入れたぞみたいな」
木田「それが嫌なピッチャーは最初からここでフォークの握りをして、サインを見てて、逆にフォークから直球は変えやすいので、こうやってここで直球に戻す」
設楽「さあ、ということで、今日はですね、直球。ピッチャーが投げてバッターのところに届くまで0.44秒。この数字から紐解いていきましたけれども、どうでした?今日の0.44秒」
木田「いや、あのう、スピードと回転数の関係とか本当に勉強になったのでね。僕としてはこれを突きつめていくと新しい変化球ができるかもしれないですよね」
以下、エンディングテロップが流れる中、日村が一言二言何か喋ったかもしれないが、割愛します。【終】
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興味深かったザ・データマン4/20放送分の書き起こし
こんばんは。@eagleshibakawaです。
先週土曜深夜(正確に言えば日曜午前0時00分~0時45分)、NHK BSで放送された『ザ・データマン』
『ザ・データマン』とは「あらゆるスポーツを「数字」で徹底解剖!数字に隠れた真実!プロのトップアスリートも驚く意外なデータの意外な切り口で競技の醍醐味に迫る新感覚スポーツ番組」とのこと。
プロ野球ファンの中には昨年秋、ここでUZRが紹介されていたことを見た方もいらっしゃるのではないでしょうか?

今回は150キロの直球劇場。ピッチャープレートからホームベースまで150キロの直球が到達するのにその所要時間、僅か0.44秒。その中で、打者と投手のせめぎ合いが展開されるのです。
この0.44秒を軸に直球勝負の現場を数字やデータ、科学的見地から迫ったのが今回の内容でした。
へええ!と唸らされるタメになる内容でした。この放送を見た後に、AJと大谷翔平の直球勝負を目撃しましたから、なるほど!と思いながら楽しむことができました。
という訳で、本番組、見逃した方もいらっしゃるかもしれないと思い、書き起こしをほぼ全文実施してみました。
それでは、下記でどうぞ!
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野球の華、直球勝負。その秘密のカギは0.44秒を巡る攻防戦にあり
ヤンキース田中将大投手。初めて大リーグの打者と対決した日、世界が注目したその記念すべき1球目は──
実況アナ「まず初球は149キロのストレート」
直球だった。強気の直球勝負がどれだけメジャーで通じるか? 時速150キロの直球。ボールが手を離れホームベースに至るには、僅か0.44秒。
野球の華と言えば、やっぱり、直球勝負でしょ。その秘密を解くカギは0.44秒を巡る攻防戦にある。スイング時間を除けば、ボールを見きわめる時間はごく僅か。
しかも、優れた投手の150キロの直球は加速するように感じると言う。ノビがある。キレがいいと言われる直球。直球の秘密を徹底解剖。伸びるって何? なぜ打者は打てないの? 上原も、ダルビッシュも、直球勝負。それが打者をねじ伏せる。0.44秒に隠された直球の真実に迫る。
設楽統「さあ、始まりました。ザ・データマン。今シーズンの野球ファンの方の楽しみは、なんと言っても、田中将大投手のですね。大リーグに行って速球でどれだけ向こうのバッターをですね、バシバシ三振を取っていくか?なぎ倒していくか?ってことじゃないかなと思いますけれども」
竹中三佳「はい、あえて田中マー君と呼ばせて頂きますけれども、マー君イコール剛速球投手ってイメージがやっぱりありますもんね~」
バナナマン・日村勇紀「そうなんですよね。マー君ってやっぱり摩球って言われるスプリット」
設楽「あれ?パンチョ伊東さんかな?」
日村「(パンチョ伊東の真似をして) 第1回選択希望選手。読売」
設楽「ははは。あれ?日村さん」
日村「日村です。楽しみだね~」
設楽「真っ向勝負がね」
日村「剛速球ですから、マー君」
設楽「強気のピッチングって言うかね。これは楽しみ」
竹中「通用するか楽しみですけれども、今回、直球の凄さを解説頂きますのは、石川ミリオンスターズのゼネラルマネージャーであり投手でもある木田優夫さんです。よろしくお願い致します」
木田優夫「よろしくお願いします」
設楽「ゼネラルマネージャー兼現役で投手をやられているということで。このマー君、大リーグ楽しみですけれども、率直に大リーグではもちろん通用すると?」
木田「そうですね。普通に日本にいた時と同じように投げれてるんで、十分」
日村「何勝しますか?」
設楽「そんなに?急に?」
木田「僕は15ぐらいいくんじゃないかなと」
日村「もっといって欲しいですね!」
竹中「はははは(笑)」
日村「俺はね、20勝いってほしいですね~」
竹中「そこで今回の数字はこちら」

田中将大の150キロ直球がホームへ到達するのが0.44秒
竹中「0.44秒」
設楽「1秒ないんですよ。0.44秒」
竹中「そうなんですよ。この数字をちょっと説明致しますと、田中投手の直球は150キロと言われています。この田中投手が投げるときにボールが手から離れた瞬間からホームベースに到着するまでの所要時間が0.44秒と言われているんです」
設楽「はあ、1秒全然ないんだね」
竹中「もうほんとね。あっという間ですよね」
設楽「あっという間です」
竹中「この0.44秒の間に、打者はボールを見て、振ろうかな?振らないかな?とスイングするかどうかを考えて打たないといけないんですよね。平均のプロ野球選手のバットスイングの動作は0.2秒なんですよ」
設楽「動作がね」
竹中「スイングが0.2秒取られちゃうと。っていうことは残りは単純計算で0.24秒と」
設楽「そうですね。物凄い時間ないですよ、これ」
竹中「そうなんです。こちらをご用意しましたので」
設楽「お、バット」
竹中「試して頂きたいんですよ、じゃあ、前に出て」
設楽「じゃあ、全国のバッターを代表して」
日村「そうだね、0.2秒で」
設楽「木田さんもちょっとこちらに来ていただいて」
竹中「バッターがボールを打つときに、片足ありますよね。その片足を下ろした瞬間から当てて振り抜くまで」
日村「こうなる。ここまで」
竹中「そうですね」
設楽「日村さん、物凄く速く振ろうと思わないといけないから、バットそんなに長く持っていたら」
日村「そうだね、短くいこう」
設楽「もっともっと、もっともっと。そのくらい短く持てば」
日村「(バットの先を持って)こうなる。(バットのグリップが股間に当たりそうになって)脇腹じゃなくて、ここにいきそうになる(笑)」
設楽「そうか(笑)」
竹中「あははは(笑)」
竹中「(木田が日村に向かって投球動作をして)振りかぶって、投げました!」
日村「じゃん!(とバットを振り抜く)」
竹中「どうですか?」
設楽「(ストップウォッチを指し示して)0秒37」
日村「ああ、まあ、これでも、こんなもんだね、おじさんがやれば」
設楽「これだともう、投げてから0.44秒のうち0.37使っちゃってたら、もうこうやっているうちにズドーンと」
日村「そうそう、そういうこと」
設楽「いかに速いかということですよ、プロのスイングが」
日村「そういうことよね」
設楽「木田さん、これ直球投げて、勝負の時間は着くまでに0.44秒。この間で考えてバットスイングするという自覚はあるんですか?」
木田「僕ら投げる時に、バットに当たる瞬間にどういう球を変化させたりとか、ちょっと押しこんでやろうとかっていう感覚で勝負したりするので、投げてて感覚で自分でも切れているなという感覚のときありますし。言葉で表現すると、伸びてるというのは、こう自然に投げてて球がダーンとこう良い感じにね。バーン!とね」
設楽「ははは。そういう説明になるんだね」
日村「やってる人のイメージなんだよね、やっぱり」
竹中「あははは」
設楽「でも、このイメージなんですね」
竹中「そうですね。こういうイメージありますね」
木田「切れてるっていうのは、自分で意識してガン!といかせる」
日村「長嶋さんっぽくなりますね(笑)」
竹中「あははは」
設楽「打者をねじ伏せる直球勝負の0.44秒、これ野球の奥深さ、何か隠れてそうですね」
竹中「そうですね。そこで、この0.44秒を掘り下げてくれるのは数字に強いあの男です。呼んでみましょうか。せーの!」
設楽&竹中「データマーン!」

直球の伸びの正体とは
0.44秒。打者をねじ伏せる直球に挑む男、データマン、安岡直。
加速する直球の秘密を探りたいと対戦を申し込んだのは?
安岡「データマンの安岡です。よろしくお願いします!」
ゴールドジムベースボールクラブ選手一同「よろしくお願いします!」
社会人野球で直球勝負をしている本格派投手達だ。果たしてその直球を打ち返せるか?
安岡「私にお任せ下さい。といっても本格的なピッチャーと対戦するのは初体験ですわ」
(社会人投手のストレートが高めに投げ込まれる)
球速130キロ
安岡「うわあ、速いよ。真っすぐって感じですね。全然、(手で横一直線を描いて)真っすぐ。見たことないものというか。落ちないから」
直球。なぜ落ちないのか?
その答えを探るため、特別なカメラを用意。さらにボールの半分を着色。こうすれば伸びの正体が分かるという。実験に立ち会ってくれるのは科学的見地から野球のボールの動きを研究している神事努先生(国際武道大学助教)

竹中「(テロップに映し出された、趣味:バナナマンのラジオを聞くことを見て) バナナマンのラジオを聞くことらしいですよ、神事さん」
設楽「あはははは」
切れや伸びがある直球の実像が浮かび上がる。
(投手の投球スローモーショーンが映し出される)
安岡「おお、凄い回転してますね」
設楽「凄げえ、このカメラ」

直球にかかっていたのは矢印方向の回転。
神事「進行方向にバックスピンですね。指がこうまわってそこからボールに回転を与える力が加わってそこから放たれるっていう感じですね」
直球を投げる投手はボールにバックスピンをかけていた。これが伸びる直球の正体。
竹中「ほんと、落ちないんですね」
設楽「ほんとだね」

バックスピンによってマグナス効果が発生
神事先生によると、バックスピンがかかったボールには重力を打ち消す力が加わる。空気の流れにさからい進むボール。
このときバックスピンがかかっているとボールの下では空気の流れがぶつかり合い、気圧が高くなる。ボールの上は回転しているため気圧が低くなる。
設楽「うわあ、気圧の高い、低いが生まれるんだ」
この気圧の差が揚力となってボールを押し上げる。マグヌス効果と呼ばれるものだ。重力にさからいボールが落ちずに飛ぶ理由だ。

安岡「(ボールを刺したドリルをまわして) これで1秒間に11回転。プロの150キロの速球はこの4倍以上にスピードで回転している」
設楽「え?そんなに?」
日村「四十何回転するんだ」
そこで僕も投げてみることにしました。気合い十分に臨んだのですが、放物線を描き、落ちちゃいました。計測は70キロ。球が遅いと落ちる。いやあ、そうじゃなかったんですよ~
神事先生は特別マシンを手配してくれた。
同じ球の速度で回転数だけを変えるピッチングマシーンだ。

1秒間当たり20回転と40回転ではどう違う?
20回転、確かにバックスピンで回転。でもホームベースに近づくほどボールは落下していきます。
竹中「ああ、落下している」
一方、回転数が2倍の40回転。ボールはほとんど落ちずにホームベース上まで到達しました。
設楽「うわっほんとだ。落ちないね。来てる!来てる!」
竹中「迫ってくる感じありますね」
20回転と40回転。球の速さは同じなのに、ホームベースに近づくほどその差は大きくなっていく。より速く回れば、より落ちないのか。
竹中「こんなに違うんだ」
設楽「ね、こんなに違うんだ」

20回転と40回転の直球。捕手到達時40cmの差に
さらに神事先生に科学的な分析を依頼。40回転のボールの位置を正確にインプットしていくと、
安岡「こうやってみても、ほぼ直線で飛んでいますね」
神事「そうですね」
設楽「ほんと、真っすぐなんだね」
日村「凄い、凄い。全然落ちていない」
20回転のボールと比較すると差は歴然。20回転のボールは落下の幅が大きく、マウンドとベースの中間で落ち始めていました。
さらにキャッチャーが捕球する高さを比べると、その差は40cmもあったのです。
設楽「え?こんなに変わるの?」

1回転で約2cm、3回転でボール1個分違ってくる計算に
安岡「1回転2回転上がると、どのくらい変わるとかっていうのはあるんですか?」
神事「1回転でだいたい2cmぐらい上がっていきます。ですので、2回転上がるだけで4cm、キャッチャー方向では到達点が変わってくるということになります」
安岡「4cmも変わる!」
神事「3回転上がったらボール1個分ぐらい変わってきます」
安岡「3回転で6cm。いやもうこれ全然越えますね。バットとボールの大きさでいったら。これはデカい」
打者をねじ伏せる直球。伸びるその正体は高速の回転。直球勝負の裏には回転数というデータが潜んでいた。
設楽「はああ、面白いね。こうやってみるとバックスピン、直球でも同じスピードでも回転数が違うとあんなに違うんだって分かりましたね」
木田「指先から離れるときの感覚が普段より良いと、普通に投げていてもより回転がかかってくれるので、普通に投げててもボールがピューンといってくれる。それが伸びてるっていう感じですね。で、ファウルを取りたい」
設楽「チップさせたい?」
木田「そうですね。そういうときはバットの上に当てたいわけですね。そういうときはだから今言ったように、ちょっとスピンを強くさせてあげると」
設楽「そんなこと、手元で?ってことですか?」
木田「僕らは手元でここで、もう1ついつもよりもスピンかけてあげようと思って投げて、ほんとそれがちゃんとかかってくれれば、今言ったようにボールがいつもよりも何cmか上にいくわけだから、当然ファウルになってくれるだろうということなんです」
設楽「え?そんな勝負しているんだ! ここファウルチップさせたいからちょっと最後のグッてやると回転が変わるから」
木田「そうそう」
設楽「ちょっと上にいくだろうと、凄くない?」
日村「凄い!その世界!」
竹中「はい。こちらをご覧頂きたいんですけれども。投手がボールの回転数を意識していることが良く分かる写真なんですけれども。昨シーズンまで大リーグで活躍されていた高橋尚成選手なんですけれども、4年前大リーグ移籍を目指していた頃の自主トレなんですね。何かが違う、何かがおかしいのは分かりますか? あれ?っと思うことは?」

回転精度を高めるためソフトボールで練習
設楽「日村さん、何がおかしいんでしょうか?」
日村「えーっと、ボールかな? ボールがちょっとデカいというかね」
竹中「おおっ!」
設楽「あれがね。デコポンだったらね」
竹中「あはは」
日村「デコポン投げないで~、高橋選手。いや、違うよね。あれボールでしょ?」
竹中「こちらソフトボールなんですよ」
設楽「このトレーニング、何をやっているんですか?」
木田「単純にまず1つはボールが大きいので扱いづらいので、本当に綺麗な放し方をしないと、ちゃんとした回転を与えられないので」
設楽「自分の回転の精度を上げるため?」
木田「そうですね。ウチのミリオンスターズの若いピッチャーにも去年何人かやらせて」
竹中「へええ」
設楽「ソフトボールで?」
木田「はい、ソフトボールで」
設楽「他に回転を意識する練習って何かやられてたり、教えてたりすることってあるんですか?」
木田「あとは寝ころんでボールを投げたりとかですね」
設楽「寝ころんで?」
(スタジオの床に寝ころぶ日村)
日村「真上に?」
木田「真上です」
(寝ころんだ日村が真上に向かってボールを投げる)
木田「今そのときに回転していないじゃないですか。それを回転させるんですよね」
日村「回転させる? ボールをバックスピンさせるんですよね?(と言いながら)投げたら前へすっぽ抜けてしまった)」
設楽「いやいやいや、何してんの?何してんの?」
日村「そうなっちゃう」
木村「そういうことです」
説楽「なぜですか?」
木田「バックスピンをかけなければいけない、真っすぐの綺麗な回転をさせなきゃいけないと思うので、みんなボールをこうやって投げようとするんですよ、こうやって。実はこうやって投げるとバックスピンはかからないんです。実際立って向こうへ投げるときはボールはこうやって投げないといけません」


説楽「そっか、こういう軌道でいくためには、寝ながら投げる真っすぐの感覚に近いんだ」
木田「そうです」
設楽「このままやってて回転をかけようとするとこういう方向にボールに力を加えているんだ。だから寝ながら」
木田「(寝ながら真上にボールを投げる仕草をして)これだけの動きをちゃんと身につけられるように」
設楽「ああ、理に適っている。凄い」
田中投手、公式戦デビューの日。最初の打者、メジャーの洗礼から始まった。打たれたのはスプリット。
実況アナ「高めにいった。イチローの上、越えたー」
序盤は変化球主体の勝負で次々とピンチを招く。
実況アナ「2塁ランナーも返ってくる」
2回終了後、田中投手はキャッチャーのマッキャン選手と何事か相談。その後、田中自慢の直球が冴え始めた。中盤以降、直球の占める割合は70%に迫った。
実況アナ「見逃し三振!」
初登板初勝利を呼び込んだ。
さらに本拠地ヤンキースタジアムでも、伸びがある、そして切れのある直球で真っ向勝負。日本仕込みの直球が大リーガーをねじ伏せている。
レッドソックスの上原浩治投手も大リーガーをねじ伏せる日本人。しかし、上原の直球は決して速くない。でも打たれない。なぜ?
日本投手のデータを洗い直してみた。

06~13年NPB先発投手、直球奪空振り率ランキング1位は和田毅
(データスタジアム)
安岡「データマンの安岡と申します」
データスタジアム佐々木浩哉氏「データスタジアムの佐々木と申します」
野球データのスペシャリスト、佐々木浩哉さん。
安岡「直球で三振を取ったりするのが得意なピッチャーってのを探してて、教えて頂きたいなと思うんですけど」
佐々木「ある程度球数を投げているピッチャーで、先発投手に限定して今回はお出ししてみたいと思っています。2006年から2013年までのデータで合算するとですね。こういったビッグネームが並ぶような、はい」

竹中「でも、ダルビッシュさん、2位なんだ」
球界を代表するエース球がずらり。打者をねじ伏せる直球を武器とする投手達だ。
佐々木「だいたい10球に1球空振りを取れると、かなり優秀なストレートっていうことがまず言えるんですけれども」

安岡「1位の和田投手は球速そんなに速くないですね」
佐々木「そうですね」
竹中「ああ、ほんとだ~」
佐々木「それほどスピードが出るタイプのピッチャーではないんですね。130キロ台がほとんどなんですけれども、それにも関わらず非常に高い奪空振り率。2位のダルビッシュ選手と比較するとほんとにスピードでは随分落ちるにも関わらずそれ以上の」
安岡「そうですよね。ダルビッシュ投手を抑えての1位が、平均球速140キロいっていないって凄いことですよね。意外だ」
竹中「意外!」
ランキングではさらに平均球速が遅い選手が。
135キロ。ロッテの成瀬投手。(平均球速135.5キロ、奪空振り率7.17%)
設楽「成瀬投手か~」
プロ入り11年目。ロッテ・成瀬善久投手。球速は決して速くない。速くない直球なら打たれるはずだが、成瀬投手は空振りを奪う。
日村「不思議だな」
速くない直球でなぜ空振りが取れるのか?
速くない直球でもなぜ打たれないのか?
データマンは再び神事先生のもとへ。(国際武道大学へ走る安岡)
安岡「球速がそんなに速くない投手がなぜ三振をいっぱい取れるのか?っていう」
神事「それには、ボール速度と回転速度の組み合わせにその秘密が隠れていると思います」
その秘密を解き明かす投手にまつわる貴重なデータがあるという。

神事「これ今、322人分のボール速度を横軸に取って、縦軸に回転速度を取ったグラフになります」
安岡「ははあ」
神事「ボール速度が速くなると、回転速度も大きくなるというような傾向は見てとれます」
安岡「そうですね」
ボール速度と回転速度の平均値に1本の線を引く。多くの投手はこの平均値辺りに集中。しかし、中には平均から大きくはずれた投手もいる。

神事「例えば、このあるピッチャーを見てみますと、球速そのものは130キロいかないぐらいってことが言えます。普通ならばここだと30回転ちょっとぐらいの回転速度になっているはずなんですが、こう見ると40回転を越える回転速度を持っています」
安岡「凄いですね」
このA投手は甲子園で1試合10奪三振を挙げた。大学野球でも伸びがある直球を評価された。
一方、A投手とは真逆にはずれているのがB投手。球速はプロ並みの137キロ。この球速の平均的な回転速度、毎秒33回転から大きくはずれ、19回転しかしていない。タレると言われる球だが、三振の山を築く。社会人のエース、プロが注目している。
成瀬投手の遅い直球。その回転速度はやはり平均値からはずれていた。球速135.5キロ、回転速度毎秒34.2。平均値よりおよそ2回転多い。神事先生の研究を思い出して欲しい。1回転多ければ2cm上にくる。回転速度が平均値からはずれると打者が予想できない直球になるのだ。
設楽「これは興味深いですね。確かに球速が物凄い速い球を投げなくても空振りを取るピッチャーっていますよね。それが回転数に関係しているっていうね」
竹中「ここでまたこの表に戻りましょう。これまでは打者に球がどう見えるのか?を中心に0.44秒を見てきましたけれども、ここからは打者がその球をどう打つのか?を中心に0.44秒を探りたいと思います。実はスイングの動作に移すまでに、脳から伝達が筋肉にいきますよね、振ってくださーいっていう。それがプロの場合でも0.1秒かかってしまうんですよ。つまり、残りの僅か0.14秒で打者はボールを見きわめて判断しないといけないんです」

一瞬の判断で必要になってくる打者の能力とは
設楽「0.14秒で見て判断して、脳に伝達が0.1秒かかって、スイングが0.2秒。これはどうするんだろう?」
竹中「ではこの短時間にバッターに必要なものって何だと思いますか?日村君!」
日村「必要なもの? 絶対に大切なのは『打つ!』っていう強い気持ちよ!」
設楽「いや、それは俺もそう思う」
日村「それは絶対必要」
設楽「俺はこれで飯食ってんだっていう。でも、多分それは正解じゃない」
竹中「あははは。こちらの写真を見ることで何が打者に必要なのか分かると思います。分かりますか?」

日村「イチロー選手でしょう?」
竹中「イチロー選手です。木田さんならすぐに分かっちゃうかもしれませんよ」
設楽「木田さんならすぐに分かっちゃいますかね」
木田「いや(苦笑)」
竹中「あれ?」
日村「え?ボールをちゃんと見るとか? そもそも単純なこと? お、ボール見てねえな。インパクトの瞬間、ボール見てない。イチローさん、ちょっと前を見てる」
竹中「まさかの正解です。そうなんですよ。打撃で最も必要とされるインパクトの瞬間を目で追ってないんですよ、イチロー選手。ちょっと目がインパクトより先を見てる感じなんですよ」
インパクトの瞬間、あのイチロー選手がボールを見ていない。打者は0.44秒の間にどう直球を捉え、打ち返すのか? スポーツで目が果たす役割を研究する専門機関を訪ねた。

打者は中心視と周辺視を使い分けて150キロに対応
安岡「失礼します。初めまして。データマンの安岡と申します」
眼科医・真下一策氏「初めまして。真下です」
真下一策さん。眼科医の立ち場からスポーツの目の使い方を研究している第一人者。数多くのプロ野球選手の目を研究してきた真下先生に写真を見てもらうと、
安岡「(イチローの写真を示して) これなんですけど、目がですね、ボールここなんですけど、こっちのほうを見ているように感じるんですよ。これに関しては?」
真下「この視線から辿りますと、これだけ先ですよね。この間は中心視で見る必要がないんだろうと思います」
この耳慣れない言葉、中心視というのは人間の視野の1つだそうです。
実は打者はボールを打つ時に2つの視野を使い分けています。まず、ボールの出所や球種を見きわめるために使う中心視。1点に集中するのです。
しかし、見える範囲は5度と狭く、時速150キロのボールを捉え続けることはできません。そこで打者は迫り来るボールを追い続けるために、視野を広角レンズのような周辺視という機能に切り替わります。高速で動くボールを広い範囲で感じることができる視野です。
つまり、打者は0.44秒の間に中心視と周辺視、2つの機能を巧みに使い、ボールを捉えているのです。
イチロー選手が身体が泳ぎながらもヒットが打てるのは周辺視が優れているためだそうですよ。

真下「例えば、野球の神様と言われた人はボールが止まって見えると言いました。あるいは、ボールの縫い目が見えると言った人もいます。これはですね、何を意味しているかというと、見る能力に関係するんですが、凄く優秀な動体視力である。そういう言葉なんですね」
安岡「はああ、動体視力」
真下「動体視力が素晴らしい」
野球に必要な目の能力はスポーツビジョンと言われている。真下先生はこれまでプロ野球選手を調査し、データ化してきた。これはある有名なプロ野球選手のスポーツビジョン評価。大きな八角形に近いデータは全ての項目で優秀な能力を兼ね備えている証だ。

木田「目と手の協調性こそイチローが本当に優れている点」
(目と手の協応動作)
どこに点が出るのか?周辺視で察知し、正確な場所を中心視で見きわめる。さらに手を連動させ、触る。打者がバットでボールを合わせるときに必要な能力の検査だ。
木田「イチローは僕ら選手同士で見ていて本当に一番優れているのは、目と手の協調性です。ボールを見える選手は他にもいるんですね。でも、そこにバットを正確にポンと出せるかが勝負になってくるので、目と手の協調性。見たところ、ポンと出せる能力はイチローは誰よりも優れていると思いますね」

0.44秒の直球勝負。瞬時に反応し、打ち返す。ぎりぎりの攻防。打者は身体に備えられた機能をフルに発揮し、コンマ数秒の壁に立ち向かっていた。
木田「種類はちょっと違う部分はあると思うんですけど、実はシアトルマリナーズは毎年キャンプで目の検査、選手全員やるんですよね、僕もやったんですけど」
設楽「あ、そうですか。どうだったんですか?」
木田「全部平均で、何も良いところも悪いところもないっていう感じで」
日村「ははははははは」
設楽「いいんじゃないですか(笑)」
木田「まあピッチャーなんでね、サインさえ見えれば大丈夫かなと」
竹中「あははは」
設楽「目がいいってよく言うじゃないですか? 目がいいバッターって印象深い人いますか?」
木田「そうですね。僕はあのうジーターですね」
設楽「ジーター」
木田「結局、目がいいって、見えるだけじゃなくて、それをどう判断できるかなんですよ。この球は打っていいのか悪いのかってことを判断しなきゃいけない。それは僕らが言う目がいいバッターは判断できる。ジーターは本当にぎりぎりまで判断できる。見逃すときって本当に前のめりでここまで見逃すんですよ。ここまでぎりぎり見てる中で打たなきゃいけないときはそれこそそこからバットがポンと出てきてヒットを打っちゃうんですよ。あれは他の人には真似できないバッティングですよ」
日村「そういうことなんだ。よくこう前のめりになっちゃったって、よくあるよね、そういうシーンがね」
リーグ優勝を決めた田中の8球。なぜ直球勝負できたのか?
大リーグで好発進。直球がメジャーでも通用している田中将大投手。
安岡「そういえば去年、マー君の直球に釘付けになった名勝負あったなあ~。楽天のリーグ優勝がかかった西武戦、9回裏の戦い。1アウト2塁3塁のピンチにマー君は直球だけで真っ向勝負を挑んだんです」
(あの時の映像が流れる)
それは田中の8球と名付けられたドラマだった。
しかし、なぜ直球だけで勝負できたのか? 田中投手の強さを探るため、筑波大学へ向かった。

安岡「失礼します。初めましてデータマンの安岡と申します」
筑波大学・金掘哲也氏「初めまして。筑波大学の金掘と申します」
協力してくれるのは、野球選手の動きを動画解析し研究している金掘さん。
金掘「専用のソフト、このパソコンに入っているんですけれども」
データマンが持ち込んだ田中の8球の映像を分析し、田中投手の直球の秘密を探る。
ポイントとなる関節など25か所を動きに合わせ打ちこむ。スティックピクチャーという分析方法だ。そうして露わになった田中投手のフォームの全貌。この線から直球の進化が読み取れるという。

金掘「これがスティックピクチャーとして完成したもので、この左側が田中投手の入団当初2007年の頃、右側が2013年、昨年の投球フォームになっています」
安岡「どこが違っている?」
金掘「そうですね。2007年から13年にかけて踏み出す始めのところまでは似ているんですけども、踏み出してからの動作が2013年のほうがかなり良くなっていますね。こうやってステップを踏み出したときにですね。2013年はもう膝を開いた状態で接地しているんですけど、2007年は閉じたまま」
設楽「全然違う」
安岡「それは開いたほうがいいってことですか?」
金掘「そうですね。これを開いた状態でその後腰をまわしていく動作が入っていくんですけども、筋力と柔軟性もないと誰もが真似できる動作ではないんですけども、開いた状態で投げられた田中選手は凄く良いフォームに進化したんじゃないかなと思います」
伸びのある直球を生み出す下半身の柔軟性。それを田中投手は入団後、鍛え上げていた。
さらに伸びる直球を裏付けるのが、体幹に対しての腕のしなりの角度。最大凱旋角度は107.04度。平均的な投手と比べて5度近くしなっているというデータだった。
安岡「ストレートを投げるときに大きく関係してくるんですか?」
金掘「そうですね。凱旋が大きくなると腕を振る距離が長くなっていきますので、自然と伝わるエネルギーが大きくなっていきます。それとストレートに伝わる力も自ずと大きくなっていきますので、最大が大きい投手はかなり良いボールを投げると思います」
(安岡が投球フォームを試しながら)
金掘「これが凄くですね、柔らかく後ろに入っていきます。打者からボールが隠れてしまうんですね」
安岡「あ、なるほど。頭の後ろにくるということですね、手が。(カメラさんに向かって)どうですか?見えてますか?」
金掘「(安岡の手を頭の後ろにもっていきながら)ここからまだ隠れるんですね」
設楽「バッターからみたら見えないんだ」
安岡「あはは、ギブギブ(笑)」
金掘「出来る限り遅くまで隠れているんじゃないでしょうか」
安岡「なるほど、隠して隠してぎりぎりまで隠すことができると。良く分かったんですけど、僕の肩はもう今日は使い物になりません(笑)」
竹中「何もしていないのに(笑)」
金掘「誰もはできないですね。やっぱり天性の柔らかさがあるんじゃないかなと思います」
そして、さらなる努力が。リリースの瞬間の前傾角度。1年で5.2度も鋭角になっているんです。
重要なのはこれによって球を放す位置が3cm打者寄りになったことです。
僅か3cm、されど3cm。ピッチャープレートからホームベースまでは18.44m。100分の1秒のせめぎ合いにとっての3cmとは?
安岡「(実際に巻尺で18.44mを測りながら) ここから1、2、3cm。この距離感でこれだけですよ。いやあ、超微妙。これが影響してくるっていう、プロのギリギリの戦いってことですね」
設楽「3cm遠くなるだけって、こんなの消しゴム1個分じゃないですか?」
竹中「あははは」
木田「そうなんですよ。ただそれがボールに対してバットがこういう角度で3cm奥へ行ったら当たるわけですよ。そうするとファウルになったりするわけですよ。これが3cm前で当たるとヒットになる」
設楽「バットで言うと凄くわかりますよね。それはエラい違いになってくる」
日村「分かる、分かる」

さらに映像の分析から田中投手の直球が当たりにくい秘密がもう1つ浮上。直球もフォークもほぼ同じフォームで投げている。2つを重ね合わせると一目瞭然。打者は投球フォームから球種を見分けられない。
設楽「ほぼ同じですね」
竹中「うん」
直球で追い込み、フォークで仕留める。それが田中投手の勝利の方程式。しかし、あの伝説の名場面、田中投手はその方程式の裏をかき、全て直球で勝負した。
日村「見逃すわけだ」
竹中「すごーい」
考え抜いた配球でさらに威力を発揮した直球。大リーグではどんな伝説を築いてくれるのか?
田中投手0.44秒の直球勝負は始まったばかりだ。
木田「まず、僕なんか本当にピッチャーだと癖でバレちゃいます」
設楽「癖?」
木田「例えば、サインを見ててセットポジションに入ったときに、ストレートが例えばここで、直球がねここで構えているとするじゃないですか? フォークは挟むわけですから挟みづらいのでちょっと離れていたりするんですよ」
設楽「あはは、そこで見るわけですか?」
木田「グローブの角度がこうだったりこうだったり」
設楽「すげえ!」

木村「こうやってグッと挟んで握るピッチャーもいるので、そうするとこの入り際も、ストレートだったら普通にスッと入るのに、こう入ったりする(笑)」
日村「ははははは」
設楽「これで分かっちゃうんだ、そうか。こいつ入れたぞみたいな」
木田「それが嫌なピッチャーは最初からここでフォークの握りをして、サインを見てて、逆にフォークから直球は変えやすいので、こうやってここで直球に戻す」
設楽「さあ、ということで、今日はですね、直球。ピッチャーが投げてバッターのところに届くまで0.44秒。この数字から紐解いていきましたけれども、どうでした?今日の0.44秒」
木田「いや、あのう、スピードと回転数の関係とか本当に勉強になったのでね。僕としてはこれを突きつめていくと新しい変化球ができるかもしれないですよね」
以下、エンディングテロップが流れる中、日村が一言二言何か喋ったかもしれないが、割愛します。【終】
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