【書評】『プロ野球を統計学と客観分析で考えるセイバーメトリクス・リポート2』(水曜社) 岡田友輔/道作/三宅博人/morithy/蛭川皓平/高多薪吾/Student/水島仁・著
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■岡田友輔、道作、三宅博人、morithy、蛭川皓平、高多薪吾、Student、水島仁 『プロ野球を統計学と客観分析で考えるセイバーメトリクス・リポート2』
(水曜社) 定価2,400円+税(税込2,520円)
判型A4、240頁
都内は桜が満開となった春うららかな日曜、2013年開幕を直前に控えセパ12球団がオープン戦の最終戦を戦っていた昼下がり、Amazonから待望の一冊が手元に届いた。
『和製・野球抄』2013年版だ!!
執筆陣は、我が国を代表するセイバーメトリシャン、スポーツデータ分析会社DELTAの代表でもある岡田友輔氏と、そのお仲間だ。
岡田氏は前職データスタジアム時代の2年前、講談社+α新書から『日本ハムに学ぶ勝てる組織づくりの教科書』を上梓されている。従来のセイバーメトリクス本とは一線を画す内容が話題を呼んだ。それまでセイバーと言えば打率や防御率といった従来指標に代わる、米国生まれのなんだか珍しい新指標という、スタッツの紹介ばかりにとどまってきた。この状況を確実に変えたのが、名著『日本ハムに学ぶ~』だ。
このブログをスタートさせてから出会った野球関連書籍の中で、全ての野球好きに掛け値なしに薦めたい本が現在2冊ある。その1冊が『日本ハムに学ぶ~』だ。
幅広い野球ファンに向けて、セイバーが持つ立体的な視点、奥行きある思想を、丁寧に噛み砕いて説明する語り口に好印象を覚えた。タイトルこそ『日本ハム~』とつくが、導入部分のサンプル例として日本ハムを用いているだけで、セパ12球団にも多分の紙幅が割かれており、未読の方にはぜひお薦めしたい。
岡田氏は『日本ハムに学ぶ~』の後、お仲間方と2冊の出版物を世に送り出してきた。昨春に出された『セイバーメトリクス・リポート1』、昨秋に発行された『セイバーメトリクス・マガジン1』だ。
どちらも読んだよ!!という方、
その価値観・論理的思考に少なからず共鳴するところがあったよ!!という方、
はい、今回も間違いなく買いです。
上記Amazonのリンクから購入画面に飛んで、
迷わずポチることをお薦め致します(^▽^)/
まだどれも読んでみたことはないけど・・・という方は、時間に余裕があるのなら、少々回り道になっても、まずは『日本ハムに学ぶ~』に目を通すことをお薦めしたい。そのほうが本書の世界へ、より容易に入っていきやすくなると思うからだ。
■岡田氏とそのお仲間の皆さんによるセイバーメトリクス本
■セパ12球団がオープン戦ラストゲームを戦った日曜日、
我が家に届けられた念願の1冊

さて、届けられた『セイバーメトリクス・リポート2』をさっそく紹介していきたい。
まずは、目次を掲載したい。
目次
03 はじめに
05 WARランキング
23 チームスタッツ
24 リーグ概況 セ・リーグ 2012
26 巨人
32 中日
38 ヤクルト
44 広島
50 阪神
56 DeNA
62 リーグ概況 パ・リーグ 2012
64 日本ハム
70 西武
76 ソフトバンク
82 楽天
88 ロッテ
94 オリックス
101 成績予測
102 2013NPB 成績予測
116 成績予測の考え方(蛭川皓平)
129 リポート
130 01 NPBにおける故障発生件数を整理する(Student)
138 02 2013シーズン新外国人選手紹介と活躍の予想(水島仁)
145 03 2012シーズン引退選手に関する評価(道作)
154 04 総合評価指標 Wins Above Replacement(WAR)の考え方と算出方法(岡田友輔・蛭川皓平)
171 05 BABIPを掘り下げる(Student)
178 06 フライの飛距離と本塁打~HR/FB~(Student)
184 07 リリーフの本質・評価・最適配置(蛭川皓平)
195 08 共通理解から離れて~Batted Ball Statsを用いた捕手の分析~(道作)
204 09 統一球と三振・四球(三宅博人)
207 10 楽天イーグルス・河田寿司研究(三宅博人)
210 11 NPB球団の戦力獲得先分析~全体概観~(morithy)
218 12 Pitch f/xで計るダルビッシュ・黒田・岩隈のパフォーマンス(高多薪吾)
235 セイバーメトリクス用語解説
前回『セイバーメトリクス・リポート1』とほぼ同様の構成だ。
240頁に及ぶ本書の冒頭に、今回の目玉WARの掲載がある。その後、ドラフトやトレード等の補強が済み2013年を戦う陣容が整ったセパ12球団の戦力分析、および選手の成績予測。本書の後半は各執筆陣によるテーマ別のコラムや読み物となっている。
■2012年セリーグのWARランキングが掲載された本書8、9ページ

2012年1軍出場した全選手のWARを本邦初公開!!
今回の目玉は、冒頭6ページから21ページにわたって公開されたWAR(Wins Above Replacement)だ。MLBを見ているとしばしばお目にかかる指標だが、NPBでは本邦初公開となる。
WARは本書の言葉を借りれば、
打撃・走塁・守備・投球などあらゆるプレーによる貢献度を総合的に評価し、最終的に選手がどれだけ「チームの勝利を増やしたか」を評価する指標である、
という。
例えば、2012年のセリーグでWAR最高値を示したのは巨人・阿部の9.7。つまり、昨年の阿部は控え捕手と比べた場合9.7個の白星をチームにもたらしていたということを意味している。
WARはその選手の打撃・走塁・守備など全てのプレーの価値を算出、守備位置等の補正を掛けて「勝利数」として算出される指標で、この指標を使えば、下記のようなことが確認できるということらしい。
◎昨年の楽天・田中とロッテ・角中はどちらがチームの勝利に貢献していたのか?
⇒田中6.5、角中5.2。田中のほうが勝利数にして1.3個分、角中を上まわるパフォーマンスだった。
◎年初の世紀のトレード、日本ハム糸井・八木とオリックス木佐貫・大引・赤田のトレードは、どちらが得をしたのか?
⇒糸井8.9、八木0.9で合計9.8。木佐貫2.7、大引1.9、赤田-0.7で合計3.9。
野手と投手といったポジションが異なる選手の比較や、打撃は得意だが守備が下手な選手と打撃は苦手でも好守を連発する選手の比較といったことも可能になってくるというのだ。
公開されたWARランキングには、最終的な数字のみならず、打撃、走塁、守備など各々の結果も掲載されており、同じWARを記録した選手でも、中身がどうなっていたのか?確認することができる。
例えば、ロッテのホワイトセルと楽天・松井はWARで2.7を記録したが、主に打撃で数字を稼いでいたホワイトセルに対し、松井は打撃では劣るものの、走塁、遊撃という代替が効かない守備位置による優位性が評価され、同じ2.7に落ち着いている。
WARの算出方法や活用するに当たって注意したい点、現状の課題点や今後の改修点は、別途本書後半のリポートで、岡田氏・蛭川氏が丁寧に解説している。
「ここからはWARの考え方と計算構造を詳細に見ていくが、基礎的な説明や技術的な議論になる部分も多く、既に御存知の内容があるかもしれない。また指標を目安として使用する上では技術的な部分を全て理解しなければならないわけではない。必要に応じて読み飛ばしてほしい。使用にあたってのポイントについては、最後の活用方法や注意点の項に記述している。そこから読み始めるのもよいかもしれない」との断り書きがあるほど、紙幅を割いての懇切丁寧な説明がある。
■パリーグのリーグ概況を表した分布図とスタッツ(本書62、63ページ)

打撃陣がどのような打球を打ったのか?
投手陣の打球管理はどうだったのか?が一目瞭然
WARランキングの後は、チームスタッツだ。リーグ概況の後、セパ12球団の戦力分析が各球団6ページずつ紙幅が割かれている。各々のポジション別ペイロール表やチームスタッツなどが掲載されている。
上記画像、左のページに掲載されている分布図は、縦軸が1試合あたりの平均失点を、横軸が1試合あたりの平均得点を表し、矢印が指し示しているように右上にいくほど、失点が少なく得点が多い理想的なチームであることを表している。
この図をみると、昨年楽天は、まずまず失点も少なく、ほどほどに得点も取っていたバランスのよいチームだったことが確認できるのだ。
右のページに記載された数字に興味深いものが幾つかあった。
ゴロ打ちが多い打線はどのチームなのか?
フライを多く打たれてしまう投手陣はどこか?
といった疑問に応えてくれる数字が印刷されている。
例えば、前者なら楽天打線で全打球の50.7%(リーグ平均47.9%)がゴロになっていたことが一目瞭然になっている。後者はロッテ投手陣で相手打者に打たれた全打球の46.2%(リーグ平均42.4%)がフライになっていた。
また全フライに占める内野フライ割合も掲載されている点も、昨年来レンジファクターを独自調査する上で最も知りたかった数字の1つだったので、思わず膝を打ってしまった。
■2013チーム編成

先発投手、リリーフ投手、一塁手、二塁手・・・右翼手、指名打者といったポジション別の陣容が、見開きで掲載されている。この点は『セイバーメトリクス・リポート1』とほぼ同じだ。
縦軸が年齢になっていて、、横に守備位置を取り、選手名と共にWARと年俸が掲載されている。網掛けは濃い網掛けは新戦力を、薄い網掛けはドラフト入団選手を表している。各々の守備位置の下には選手の人数と年俸の合計が表示されている。
上に挙げた画像は楽天の三塁手、遊撃手、左翼手、中堅手を写したものになる。
ここだけで見ると、鉄平や聖澤はチーム内の高額年俸選手になっているが、WARで判断する限りでは他球団に対して穴は空けていないものの、年俸に見合った大きな利得を稼いでいるとはいえないという判断になる。
また、ソフトバンクの捕手陣の表に目を落とすと、捕手陣に大きな欠陥を抱えていることが一目瞭然となる。
細川、田上、山崎、高谷と正捕手、二番手捕手クラスが全て31歳から33歳の年齢帯に集中しており、高齢化が進んでいることが確認できる。その下は?というと、ようやく20歳で山下といういびつな年齢分布。
本書はこう解説している。
「山下[C]とその他の捕手の間の存在がおらず、トレードなどでこの中間層を一時的に補充する可能性はありそうだ。加えて、ドラフトでは定期的に捕手指名を行わねばならないだろう」。
(※実際は20代後半の育成捕手が何人かいるのだが、育成選手は戦力として見なさないため記載されていない)
パリーグ各球団、今オフの動きを一部紹介
この表の欄外下に「今オフの動き」「将来展望」といった2つの分析記事が配置されている。
パリーグ各球団の「今オフの動き」をそれぞれ一部引用してみたい。インテリジェンス溢れるテキストの数々が、読者の知的好奇心を刺激していく。
日本ハム
チームの根幹をつくりかえるオフとなった。(中略) 北海道移転以来、小笠原道大(現巨人)、稲葉[1B]、ダルビッシュ(現レンジャーズ)、田中と大きな利得を稼ぐ中心選手が存在してきたが、今回の糸井の放出でそのスタイルをいったん放棄することになるだろう。
西武
最大の懸念は中島の抜けた遊撃だろう。編成はオリックスから守備的な保険として山崎[SS]を獲得し最悪の事態に備えた。(中略) 遊撃手の人選は西武の戦い方を攻撃型から守備型へと一変させる可能性もあり、この“遊撃人事”でフロントがどの様なチームづくりを目指すのか明らかになるだろう。
ソフトバンク
遊撃も今宮[SS]・明石[SS]が守備力をベースに大きな穴としていない。Batted ballやレンジ、ゾーンいずれの守備指標もソフトバンク内野陣の貢献が見て取れる。遊撃手の世代交代という難題を1年で解決できたのは、今後の編成に好影響をもたらすだろう。
楽天
2012年オフは外国人選手の獲得の方針を転換。長打力と右打者が不足する状況の改善を目指し、ジョーンズ[RF]、マギー[1B]を獲得した。ジョーンズはある程度打席に立てれば、打率はともかく長打と四球は期待できるだろう。チームは左打の短・中距離打者が多い編成で、出塁・長打力に関する記録から考えると2012年は得点が入りすぎたきらいがある。補強で長打力を改善し、得点力の安定化を図ろうとするフロントの方針は正しい。
ロッテ
パリーグ各球団が積極的な補強を見せる中、ロッテフロントの動きは静かなものだった。(中略) 厳格にペイロールを設定し、グライシンガー[SP]、ホワイトセル[DH]との契約更新と角中[LF]や根元[SS]など結果を残した選手への増額年俸で補強費用がままならなかったのが実情のようだ。
オリックス
選手の構成を見ると27歳以上が41名と今後チームは退潮期を迎える公算が強い。糸井を獲得した今季は、是が非でも結果を残さなければならないシーズンとなる。フロントにとってまさに勝負の年となるだろう。
■直近10試合の勝利数と平均得失点、守備位置別レギュラー選手のWAR

これは嬉しい^^ 選手別の守備指標UZRの掲載があります!
チームスタッツの最初の見開きページには「守備位置別レギュラー選手のWAR」が掲載されている。他球団のそれと見比べてみるのも面白いかもしれない。
野手成績、投手成績、守備成績と選手別のスタッツがずらっと掲載された表が続いていくのだが、中でも『セイバーメトリクス・リポート1』の時には記載がなかった「これは!」と思うスタッツが幾つかあった。
投手成績では「GB%」(全打球のゴロ率)、「HR/FB」(全フライに締める本塁打%)が、守備成績では「ARM」(肩)、「UZR」「UZR/100」(リーグ平均選手と比べた歳、どのくらいの失点を守備で阻止したか?を映像解析技術を用いて算出する指標)が掲載されている。
各球団のポジション別のUZRは、前回紹介した『2013プロ野球オール写真選手名鑑』で公開されていたが、選手別の数字はなかった。それだけに朗報だ。
そして、、、\(^o^)/
なんと!なんと!今まで分からなかった選手別の守備イニングが公表されているのだ!!
昨年、当ブログはパリーグのレンジファクター調査をおこなってきた。ポジション別の守備イニングをコツコツコツコツ144試合、時には眠りながら記録を集計し続けてきた。セリーグも調べていきたかったが、残念ながら余力はどこにも残っていなかった。今回、パリーグのみならずセリーグの守備イニングも掲載されており、これでレンジファクターを容易に算出することが可能となっている。
例えば、昨年ソフトバンクの内川は左翼、中堅、右翼、それぞれで守備実績があるのだが、そのポジション別のイニング数が載っているのだ。これは嬉しい。
さて、ここからは本書の後半、各アナリストによる渾身リポート、コラムを紹介していきたい。
そのどれもが読み手にじっくり読ませ、考えさせてくれるテキストになっているが、ここでは中でも個人的に印象に残ったものをピックアップしてみたい。
Pitch f/xで計るダルビッシュ・黒田・岩隈のパフォーマンス(高多薪吾)
執筆者の高多氏は『セイバーメトリクス・リポート1』では「日本シリーズ“投手酷使史”」という傑作を書かれていた方になる。個人的に特に印象に残った執筆者であり、今回もちょうど私が気になっていた痒い部分について触れられているリポートとなった。
メジャーの球場に設置された複数のビデオカメラや計測機器をPitch f/xという。これによって採取され映像解析等で得られる詳細なピッチングデータの数々。MLB公式サイトでは公開が進んでいるのだが、それらを用いて、日本人3投手に加え、バーランダー、ウィーバー、ヘルナンデスといったメジャー代表投手と比較検討するテキストが「Pitch f/xで計るダルビッシュ・黒田・岩隈のパフォーマンス」だ。
まず最初にNasty Factorという指標の説明がある。本書から引用しよう。
「Nasty Factor(NF)は、打者にとっての「厄介さ」である。球速と制球力、ムーブメント(ボールの動き)を総合的にhんだんし、効果的なボールかどうかを評価するものだ。レベルは1から100まの間で数値化され、良い投球ほど数値が高くなる」。
このNFを用いて日本人3投手による昨年のピッチングを比較検討している
その後、試合別にみる球種割合の視点で3投手のピッチングを振り返っている。例えば、ダルビッシュならシーズン序盤ツーシームを打ちこまれたため、速球系で4シームの割合を増やしてしのいだこと。終盤かカッターをピッチングの軸に据え、数字を整えたこと。日本時代と比べてスプリッターはほとんど投げなかったことなどが確認できる。
■本書224ページより。ダルビッシュの球種割合

さらに、4シーム、2シーム、スライダー、カーブ、スプリッターなど球種別に、日本人3投手、メジャー代表3投手、合計6人のデータを見比べている点が特徴的だ。
ここでは球の曲がり具合を示すBRK、球の回転数から割り出された伸びを示すPFXといった2つの指標を交えて、それぞれのピッチングスタイルの特徴をあぶり出すことに成功している。
■本書226ページより。球種の比較[4シーム]

昨年、岩隈だけは必死に追いかけてきた私だが、さすがにMLB公式の速報サイトで公開されているNF、BRK、PFXは記録をつけることができなかった。
該当試合から時間が経ってしまうとこれらデータの公開が終了となってしまうため、高多氏が必死になって記録を追っていたことが容易に推測できる。(それともどこかで閲覧できるのだろうか?) 同じ記録好きとして、それだけに敬意を表したい気持ちでいっぱいだし、岩隈が他の投手と比べた時どのような立ち位置にあるのか?を今回しっかり確認することができた点も、私にとって収穫となった。
また、Pitch f/xを用いてこれだけの紙幅を割いて検証を試みたテキストが出版物として世に送り出され、日本の書店の棚に並んだのは、少なくとも私が知る限りでは、高多氏の本リポートが本邦初だと思うのだ。
NPBにおける故障発生件数を整理する(Student)
同じ記録好きとして頭が下がる思いがするテキストになる。プロ野球選手の怪我・故障、具体的にどのようなものがあるのか? 投手ならどのような怪我が多く、野手ならどの部位による負傷が目立つのか?といった疑問に応えてくれるリポートとなった。
ベースボールマガジン社発行の『ベースボールレコードブック』の2001年号から2010年号(所収された記録は2000年から2009年)に記述されている「日本プロ野球の主な記録と出来事」。この欄に記載のある選手の故障名を丹念にピックアップし、集計を試みている。
参考までに下記の画像を掲載しよう。大腿の故障内容をポジション別にまとめた表になる。
■本書136ページより。大腿の診断・処置別に見た故障離脱件数(2000-2009)

このような表が大腿だけではなく、肩、肘、手、膝など全ての部位で細かくまとめられている。ポジション別でどの怪我がポピュラーなのか?とか、どの部位の△△という故障は手術するケースは稀なんだな、ということが浮かび上がってくる。
私などは医学の知識は全くなく、素人なので、贔屓チームの選手が故障、翌日精密検査へと報道されると、オロオロ・・・となってしまうが、部位によっては手術に至らない負傷も多くあることがわかった。このことが分かっただけでも「長期離脱はなさそうだな」と見当をつけることができる。
リリーフの本質・評価・最適配置(蛭川皓平)
優れたリリーフピッチャーを登板させるには、どの状況・局面で使うのが最も味方勝利につながり効果が大きいのか? このことをセイバーメトリクスによる箱庭シミュレーションで実験し考えてみるテキストが、こちらだ。
一般にそのような局面は味方が1点以上3点以内でリードした状況で迎えた9回、つまりセーブがつく局面だ。実際そのように考える野球ファンは多いはずだ。しかし、このテキストは、1点リード、同点、1点ビハインドで迎えた9回が最も効果絶大となると説く。
実は3点リードの9回にクローザーをむやみに登板させる意味は、チームの勝利という観点から考えれば、あまり意味の無いことと言えそうなのが本稿から学ぶことができる。
※以上、乱筆乱文ながら、超駆け足でざっくりと紹介してみました。書いておかなければならない感想などが出てきたら、追加する予定です。
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◎◎◎関連記事◎◎◎
・【書評】井箟重慶 著『プロ野球もうひとつの攻防──「選手vsフロント」の現場』(角川SSC新書)
・【書評】赤星憲広 著『頭で走る盗塁論 駆け引きという名の心理戦』(朝日新書)
・【書評】プロ野球「最強捕手」大全 (洋泉社編集部 編)~インタビューと独自の視点で“捕手”の頭脳に迫る!~
・【書評】『プロ野球選手ホントの実力』(オークラ出版)~知ってるようで知らない野球の指標、教えます!
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■岡田友輔、道作、三宅博人、morithy、蛭川皓平、高多薪吾、Student、水島仁 『プロ野球を統計学と客観分析で考えるセイバーメトリクス・リポート2』
(水曜社) 定価2,400円+税(税込2,520円)
判型A4、240頁
都内は桜が満開となった春うららかな日曜、2013年開幕を直前に控えセパ12球団がオープン戦の最終戦を戦っていた昼下がり、Amazonから待望の一冊が手元に届いた。
『和製・野球抄』2013年版だ!!
執筆陣は、我が国を代表するセイバーメトリシャン、スポーツデータ分析会社DELTAの代表でもある岡田友輔氏と、そのお仲間だ。
岡田氏は前職データスタジアム時代の2年前、講談社+α新書から『日本ハムに学ぶ勝てる組織づくりの教科書』を上梓されている。従来のセイバーメトリクス本とは一線を画す内容が話題を呼んだ。それまでセイバーと言えば打率や防御率といった従来指標に代わる、米国生まれのなんだか珍しい新指標という、スタッツの紹介ばかりにとどまってきた。この状況を確実に変えたのが、名著『日本ハムに学ぶ~』だ。
このブログをスタートさせてから出会った野球関連書籍の中で、全ての野球好きに掛け値なしに薦めたい本が現在2冊ある。その1冊が『日本ハムに学ぶ~』だ。
幅広い野球ファンに向けて、セイバーが持つ立体的な視点、奥行きある思想を、丁寧に噛み砕いて説明する語り口に好印象を覚えた。タイトルこそ『日本ハム~』とつくが、導入部分のサンプル例として日本ハムを用いているだけで、セパ12球団にも多分の紙幅が割かれており、未読の方にはぜひお薦めしたい。
岡田氏は『日本ハムに学ぶ~』の後、お仲間方と2冊の出版物を世に送り出してきた。昨春に出された『セイバーメトリクス・リポート1』、昨秋に発行された『セイバーメトリクス・マガジン1』だ。
どちらも読んだよ!!という方、
その価値観・論理的思考に少なからず共鳴するところがあったよ!!という方、
はい、今回も間違いなく買いです。
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まだどれも読んでみたことはないけど・・・という方は、時間に余裕があるのなら、少々回り道になっても、まずは『日本ハムに学ぶ~』に目を通すことをお薦めしたい。そのほうが本書の世界へ、より容易に入っていきやすくなると思うからだ。
■岡田氏とそのお仲間の皆さんによるセイバーメトリクス本
■セパ12球団がオープン戦ラストゲームを戦った日曜日、
我が家に届けられた念願の1冊

さて、届けられた『セイバーメトリクス・リポート2』をさっそく紹介していきたい。
まずは、目次を掲載したい。
目次
03 はじめに
05 WARランキング
23 チームスタッツ
24 リーグ概況 セ・リーグ 2012
26 巨人
32 中日
38 ヤクルト
44 広島
50 阪神
56 DeNA
62 リーグ概況 パ・リーグ 2012
64 日本ハム
70 西武
76 ソフトバンク
82 楽天
88 ロッテ
94 オリックス
101 成績予測
102 2013NPB 成績予測
116 成績予測の考え方(蛭川皓平)
129 リポート
130 01 NPBにおける故障発生件数を整理する(Student)
138 02 2013シーズン新外国人選手紹介と活躍の予想(水島仁)
145 03 2012シーズン引退選手に関する評価(道作)
154 04 総合評価指標 Wins Above Replacement(WAR)の考え方と算出方法(岡田友輔・蛭川皓平)
171 05 BABIPを掘り下げる(Student)
178 06 フライの飛距離と本塁打~HR/FB~(Student)
184 07 リリーフの本質・評価・最適配置(蛭川皓平)
195 08 共通理解から離れて~Batted Ball Statsを用いた捕手の分析~(道作)
204 09 統一球と三振・四球(三宅博人)
207 10 楽天イーグルス・河田寿司研究(三宅博人)
210 11 NPB球団の戦力獲得先分析~全体概観~(morithy)
218 12 Pitch f/xで計るダルビッシュ・黒田・岩隈のパフォーマンス(高多薪吾)
235 セイバーメトリクス用語解説
前回『セイバーメトリクス・リポート1』とほぼ同様の構成だ。
240頁に及ぶ本書の冒頭に、今回の目玉WARの掲載がある。その後、ドラフトやトレード等の補強が済み2013年を戦う陣容が整ったセパ12球団の戦力分析、および選手の成績予測。本書の後半は各執筆陣によるテーマ別のコラムや読み物となっている。
■2012年セリーグのWARランキングが掲載された本書8、9ページ

2012年1軍出場した全選手のWARを本邦初公開!!
今回の目玉は、冒頭6ページから21ページにわたって公開されたWAR(Wins Above Replacement)だ。MLBを見ているとしばしばお目にかかる指標だが、NPBでは本邦初公開となる。
WARは本書の言葉を借りれば、
打撃・走塁・守備・投球などあらゆるプレーによる貢献度を総合的に評価し、最終的に選手がどれだけ「チームの勝利を増やしたか」を評価する指標である、
という。
例えば、2012年のセリーグでWAR最高値を示したのは巨人・阿部の9.7。つまり、昨年の阿部は控え捕手と比べた場合9.7個の白星をチームにもたらしていたということを意味している。
WARはその選手の打撃・走塁・守備など全てのプレーの価値を算出、守備位置等の補正を掛けて「勝利数」として算出される指標で、この指標を使えば、下記のようなことが確認できるということらしい。
◎昨年の楽天・田中とロッテ・角中はどちらがチームの勝利に貢献していたのか?
⇒田中6.5、角中5.2。田中のほうが勝利数にして1.3個分、角中を上まわるパフォーマンスだった。
◎年初の世紀のトレード、日本ハム糸井・八木とオリックス木佐貫・大引・赤田のトレードは、どちらが得をしたのか?
⇒糸井8.9、八木0.9で合計9.8。木佐貫2.7、大引1.9、赤田-0.7で合計3.9。
野手と投手といったポジションが異なる選手の比較や、打撃は得意だが守備が下手な選手と打撃は苦手でも好守を連発する選手の比較といったことも可能になってくるというのだ。
公開されたWARランキングには、最終的な数字のみならず、打撃、走塁、守備など各々の結果も掲載されており、同じWARを記録した選手でも、中身がどうなっていたのか?確認することができる。
例えば、ロッテのホワイトセルと楽天・松井はWARで2.7を記録したが、主に打撃で数字を稼いでいたホワイトセルに対し、松井は打撃では劣るものの、走塁、遊撃という代替が効かない守備位置による優位性が評価され、同じ2.7に落ち着いている。
WARの算出方法や活用するに当たって注意したい点、現状の課題点や今後の改修点は、別途本書後半のリポートで、岡田氏・蛭川氏が丁寧に解説している。
「ここからはWARの考え方と計算構造を詳細に見ていくが、基礎的な説明や技術的な議論になる部分も多く、既に御存知の内容があるかもしれない。また指標を目安として使用する上では技術的な部分を全て理解しなければならないわけではない。必要に応じて読み飛ばしてほしい。使用にあたってのポイントについては、最後の活用方法や注意点の項に記述している。そこから読み始めるのもよいかもしれない」との断り書きがあるほど、紙幅を割いての懇切丁寧な説明がある。
■パリーグのリーグ概況を表した分布図とスタッツ(本書62、63ページ)

打撃陣がどのような打球を打ったのか?
投手陣の打球管理はどうだったのか?が一目瞭然
WARランキングの後は、チームスタッツだ。リーグ概況の後、セパ12球団の戦力分析が各球団6ページずつ紙幅が割かれている。各々のポジション別ペイロール表やチームスタッツなどが掲載されている。
上記画像、左のページに掲載されている分布図は、縦軸が1試合あたりの平均失点を、横軸が1試合あたりの平均得点を表し、矢印が指し示しているように右上にいくほど、失点が少なく得点が多い理想的なチームであることを表している。
この図をみると、昨年楽天は、まずまず失点も少なく、ほどほどに得点も取っていたバランスのよいチームだったことが確認できるのだ。
右のページに記載された数字に興味深いものが幾つかあった。
ゴロ打ちが多い打線はどのチームなのか?
フライを多く打たれてしまう投手陣はどこか?
といった疑問に応えてくれる数字が印刷されている。
例えば、前者なら楽天打線で全打球の50.7%(リーグ平均47.9%)がゴロになっていたことが一目瞭然になっている。後者はロッテ投手陣で相手打者に打たれた全打球の46.2%(リーグ平均42.4%)がフライになっていた。
また全フライに占める内野フライ割合も掲載されている点も、昨年来レンジファクターを独自調査する上で最も知りたかった数字の1つだったので、思わず膝を打ってしまった。
■2013チーム編成

先発投手、リリーフ投手、一塁手、二塁手・・・右翼手、指名打者といったポジション別の陣容が、見開きで掲載されている。この点は『セイバーメトリクス・リポート1』とほぼ同じだ。
縦軸が年齢になっていて、、横に守備位置を取り、選手名と共にWARと年俸が掲載されている。網掛けは濃い網掛けは新戦力を、薄い網掛けはドラフト入団選手を表している。各々の守備位置の下には選手の人数と年俸の合計が表示されている。
上に挙げた画像は楽天の三塁手、遊撃手、左翼手、中堅手を写したものになる。
ここだけで見ると、鉄平や聖澤はチーム内の高額年俸選手になっているが、WARで判断する限りでは他球団に対して穴は空けていないものの、年俸に見合った大きな利得を稼いでいるとはいえないという判断になる。
また、ソフトバンクの捕手陣の表に目を落とすと、捕手陣に大きな欠陥を抱えていることが一目瞭然となる。
細川、田上、山崎、高谷と正捕手、二番手捕手クラスが全て31歳から33歳の年齢帯に集中しており、高齢化が進んでいることが確認できる。その下は?というと、ようやく20歳で山下といういびつな年齢分布。
本書はこう解説している。
「山下[C]とその他の捕手の間の存在がおらず、トレードなどでこの中間層を一時的に補充する可能性はありそうだ。加えて、ドラフトでは定期的に捕手指名を行わねばならないだろう」。
(※実際は20代後半の育成捕手が何人かいるのだが、育成選手は戦力として見なさないため記載されていない)
パリーグ各球団、今オフの動きを一部紹介
この表の欄外下に「今オフの動き」「将来展望」といった2つの分析記事が配置されている。
パリーグ各球団の「今オフの動き」をそれぞれ一部引用してみたい。インテリジェンス溢れるテキストの数々が、読者の知的好奇心を刺激していく。
日本ハム
チームの根幹をつくりかえるオフとなった。(中略) 北海道移転以来、小笠原道大(現巨人)、稲葉[1B]、ダルビッシュ(現レンジャーズ)、田中と大きな利得を稼ぐ中心選手が存在してきたが、今回の糸井の放出でそのスタイルをいったん放棄することになるだろう。
西武
最大の懸念は中島の抜けた遊撃だろう。編成はオリックスから守備的な保険として山崎[SS]を獲得し最悪の事態に備えた。(中略) 遊撃手の人選は西武の戦い方を攻撃型から守備型へと一変させる可能性もあり、この“遊撃人事”でフロントがどの様なチームづくりを目指すのか明らかになるだろう。
ソフトバンク
遊撃も今宮[SS]・明石[SS]が守備力をベースに大きな穴としていない。Batted ballやレンジ、ゾーンいずれの守備指標もソフトバンク内野陣の貢献が見て取れる。遊撃手の世代交代という難題を1年で解決できたのは、今後の編成に好影響をもたらすだろう。
楽天
2012年オフは外国人選手の獲得の方針を転換。長打力と右打者が不足する状況の改善を目指し、ジョーンズ[RF]、マギー[1B]を獲得した。ジョーンズはある程度打席に立てれば、打率はともかく長打と四球は期待できるだろう。チームは左打の短・中距離打者が多い編成で、出塁・長打力に関する記録から考えると2012年は得点が入りすぎたきらいがある。補強で長打力を改善し、得点力の安定化を図ろうとするフロントの方針は正しい。
ロッテ
パリーグ各球団が積極的な補強を見せる中、ロッテフロントの動きは静かなものだった。(中略) 厳格にペイロールを設定し、グライシンガー[SP]、ホワイトセル[DH]との契約更新と角中[LF]や根元[SS]など結果を残した選手への増額年俸で補強費用がままならなかったのが実情のようだ。
オリックス
選手の構成を見ると27歳以上が41名と今後チームは退潮期を迎える公算が強い。糸井を獲得した今季は、是が非でも結果を残さなければならないシーズンとなる。フロントにとってまさに勝負の年となるだろう。
■直近10試合の勝利数と平均得失点、守備位置別レギュラー選手のWAR

これは嬉しい^^ 選手別の守備指標UZRの掲載があります!
チームスタッツの最初の見開きページには「守備位置別レギュラー選手のWAR」が掲載されている。他球団のそれと見比べてみるのも面白いかもしれない。
野手成績、投手成績、守備成績と選手別のスタッツがずらっと掲載された表が続いていくのだが、中でも『セイバーメトリクス・リポート1』の時には記載がなかった「これは!」と思うスタッツが幾つかあった。
投手成績では「GB%」(全打球のゴロ率)、「HR/FB」(全フライに締める本塁打%)が、守備成績では「ARM」(肩)、「UZR」「UZR/100」(リーグ平均選手と比べた歳、どのくらいの失点を守備で阻止したか?を映像解析技術を用いて算出する指標)が掲載されている。
各球団のポジション別のUZRは、前回紹介した『2013プロ野球オール写真選手名鑑』で公開されていたが、選手別の数字はなかった。それだけに朗報だ。
そして、、、\(^o^)/
なんと!なんと!今まで分からなかった選手別の守備イニングが公表されているのだ!!
昨年、当ブログはパリーグのレンジファクター調査をおこなってきた。ポジション別の守備イニングをコツコツコツコツ144試合、時には眠りながら記録を集計し続けてきた。セリーグも調べていきたかったが、残念ながら余力はどこにも残っていなかった。今回、パリーグのみならずセリーグの守備イニングも掲載されており、これでレンジファクターを容易に算出することが可能となっている。
例えば、昨年ソフトバンクの内川は左翼、中堅、右翼、それぞれで守備実績があるのだが、そのポジション別のイニング数が載っているのだ。これは嬉しい。
さて、ここからは本書の後半、各アナリストによる渾身リポート、コラムを紹介していきたい。
そのどれもが読み手にじっくり読ませ、考えさせてくれるテキストになっているが、ここでは中でも個人的に印象に残ったものをピックアップしてみたい。
Pitch f/xで計るダルビッシュ・黒田・岩隈のパフォーマンス(高多薪吾)
執筆者の高多氏は『セイバーメトリクス・リポート1』では「日本シリーズ“投手酷使史”」という傑作を書かれていた方になる。個人的に特に印象に残った執筆者であり、今回もちょうど私が気になっていた痒い部分について触れられているリポートとなった。
メジャーの球場に設置された複数のビデオカメラや計測機器をPitch f/xという。これによって採取され映像解析等で得られる詳細なピッチングデータの数々。MLB公式サイトでは公開が進んでいるのだが、それらを用いて、日本人3投手に加え、バーランダー、ウィーバー、ヘルナンデスといったメジャー代表投手と比較検討するテキストが「Pitch f/xで計るダルビッシュ・黒田・岩隈のパフォーマンス」だ。
まず最初にNasty Factorという指標の説明がある。本書から引用しよう。
「Nasty Factor(NF)は、打者にとっての「厄介さ」である。球速と制球力、ムーブメント(ボールの動き)を総合的にhんだんし、効果的なボールかどうかを評価するものだ。レベルは1から100まの間で数値化され、良い投球ほど数値が高くなる」。
このNFを用いて日本人3投手による昨年のピッチングを比較検討している
その後、試合別にみる球種割合の視点で3投手のピッチングを振り返っている。例えば、ダルビッシュならシーズン序盤ツーシームを打ちこまれたため、速球系で4シームの割合を増やしてしのいだこと。終盤かカッターをピッチングの軸に据え、数字を整えたこと。日本時代と比べてスプリッターはほとんど投げなかったことなどが確認できる。
■本書224ページより。ダルビッシュの球種割合

さらに、4シーム、2シーム、スライダー、カーブ、スプリッターなど球種別に、日本人3投手、メジャー代表3投手、合計6人のデータを見比べている点が特徴的だ。
ここでは球の曲がり具合を示すBRK、球の回転数から割り出された伸びを示すPFXといった2つの指標を交えて、それぞれのピッチングスタイルの特徴をあぶり出すことに成功している。
■本書226ページより。球種の比較[4シーム]

昨年、岩隈だけは必死に追いかけてきた私だが、さすがにMLB公式の速報サイトで公開されているNF、BRK、PFXは記録をつけることができなかった。
該当試合から時間が経ってしまうとこれらデータの公開が終了となってしまうため、高多氏が必死になって記録を追っていたことが容易に推測できる。(それともどこかで閲覧できるのだろうか?) 同じ記録好きとして、それだけに敬意を表したい気持ちでいっぱいだし、岩隈が他の投手と比べた時どのような立ち位置にあるのか?を今回しっかり確認することができた点も、私にとって収穫となった。
また、Pitch f/xを用いてこれだけの紙幅を割いて検証を試みたテキストが出版物として世に送り出され、日本の書店の棚に並んだのは、少なくとも私が知る限りでは、高多氏の本リポートが本邦初だと思うのだ。
NPBにおける故障発生件数を整理する(Student)
同じ記録好きとして頭が下がる思いがするテキストになる。プロ野球選手の怪我・故障、具体的にどのようなものがあるのか? 投手ならどのような怪我が多く、野手ならどの部位による負傷が目立つのか?といった疑問に応えてくれるリポートとなった。
ベースボールマガジン社発行の『ベースボールレコードブック』の2001年号から2010年号(所収された記録は2000年から2009年)に記述されている「日本プロ野球の主な記録と出来事」。この欄に記載のある選手の故障名を丹念にピックアップし、集計を試みている。
参考までに下記の画像を掲載しよう。大腿の故障内容をポジション別にまとめた表になる。
■本書136ページより。大腿の診断・処置別に見た故障離脱件数(2000-2009)

このような表が大腿だけではなく、肩、肘、手、膝など全ての部位で細かくまとめられている。ポジション別でどの怪我がポピュラーなのか?とか、どの部位の△△という故障は手術するケースは稀なんだな、ということが浮かび上がってくる。
私などは医学の知識は全くなく、素人なので、贔屓チームの選手が故障、翌日精密検査へと報道されると、オロオロ・・・となってしまうが、部位によっては手術に至らない負傷も多くあることがわかった。このことが分かっただけでも「長期離脱はなさそうだな」と見当をつけることができる。
リリーフの本質・評価・最適配置(蛭川皓平)
優れたリリーフピッチャーを登板させるには、どの状況・局面で使うのが最も味方勝利につながり効果が大きいのか? このことをセイバーメトリクスによる箱庭シミュレーションで実験し考えてみるテキストが、こちらだ。
一般にそのような局面は味方が1点以上3点以内でリードした状況で迎えた9回、つまりセーブがつく局面だ。実際そのように考える野球ファンは多いはずだ。しかし、このテキストは、1点リード、同点、1点ビハインドで迎えた9回が最も効果絶大となると説く。
実は3点リードの9回にクローザーをむやみに登板させる意味は、チームの勝利という観点から考えれば、あまり意味の無いことと言えそうなのが本稿から学ぶことができる。
※以上、乱筆乱文ながら、超駆け足でざっくりと紹介してみました。書いておかなければならない感想などが出てきたら、追加する予定です。
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・【書評】井箟重慶 著『プロ野球もうひとつの攻防──「選手vsフロント」の現場』(角川SSC新書)
・【書評】赤星憲広 著『頭で走る盗塁論 駆け引きという名の心理戦』(朝日新書)
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・【書評】『プロ野球選手ホントの実力』(オークラ出版)~知ってるようで知らない野球の指標、教えます!
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