【記録】2015年パリーグ。走者を釘づけにした投手、走者にカモにされた投手~主要46投手の盗塁成績を公開!!
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今回はパリーグ主要投手の盗塁成績を御紹介したい。
皆さん、盗塁を阻止するために最も必要なファクターを1つ挙げよと言われたら、何を思い浮かべるだろうか?
捕手の強肩?
確かに捕手の一番の見せ場かもしれない。矢のようなストライク送球でビュッとへ投げ、2塁を狙った俊足走者をタッチアウトできた時のシーンは、強肩捕手の面目躍如だろう。楽天ファンの皆さんなら今年の7/9ソフトバンク戦を連想するかもしれない。高卒3年目捕手・下妻貴寛が柳田悠岐、本多雄一の二盗を立て続けに刺した、あの胸のすくシーンだ。
しかし、実際には、捕手責任よりも、投手責任が大きいとされている。
現役時代は強肩で鳴らした元ロッテ・里崎智也氏でも、今夏上梓した著書『高校球児に伝えたい!プロでも間違うバッテリーの基本』(東邦出版)の中で「盗塁はピッチャーの責任が7割」と綴っているのだ。一部を引用してみよう。
里崎氏の主張は球界や自身の経験則に基づいたものだが、この経験則はセイバーメトリクスの研究でも証明されている。
昨年発表された『プロ野球を統計学と客観分析で考えるセイバーメトリクス・リポート4』。そこに所収されている大南淳氏の「映像解析で盗塁阻止に対する捕手の貢献を探る」によると、投手のクイックの速さ、投手のボールの速さ、捕手の捕ってからの速さ、捕手のボールの速さ、二塁での捕球からタッチ、この5項目の中で盗塁阻止率との相関関係が最も強かったのは、投手のクイックの速さだったと言う。
とかく我々は捕手にばかり目がいきがちである。しかし、盗塁阻止のため本当に必要な要素は、前述のように、投手責任が最も大きいのだ。クイックや牽制を含めた走者ケア技術が上手い投手と下手な投手。両者の間では盗塁成績が大きく異なってくるのだ。
にも関わらず、NPBではいまだに盗塁成績は打者(走者)の記録として管理されている。投手と紐づけされた成績はブラックボックスの中に置かれたままである。「プロ野球ヌルデータ置き場」さんなど数多くの記録サイトが有志の手で立ち上げられ、人気を博している昨今ながらも、盗塁を投手成績で管理しているのを見たことがない。
ということで、当ブログではここ数年、パリーグで発生した全盗塁記録を投手と紐づけすることで、投手別の盗塁成績を作成してきた。
今年はパリーグで930企図、628盗塁、302盗塁刺の盗塁が発生した。その紐づけ作業もようやく終了。昨日は一足先に楽天投手の盗塁成績を公開したが、今回はパリーグ主要46人の投手のそれを御紹介したい。
(下記に続く)
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■2015年 パリーグ 主要投手別の盗塁成績
※投球回60回以上の46人を対象


まず最初に断っておくが、この盗塁成績は走者側の記録である点だ。盗塁阻止率を計算するために用いる捕手側の記録ではない点をご了承いただきたい。
表中、企図/9は9イニング当たりの企図数だ。投手は各々投球回が異なるため、どこかで分母を揃える必要がある。今回は防御率、奪三振率や与四球率と同じく、9イニング当たりの値に設定した。この平均値は例年0.90~1.00付近になる。
盗塁の大半が1塁からの二盗であることを踏まえて、走者1塁時の被打率を、データで楽しむプロ野球さんを参照にしてつけてみた。走者の盗塁を警戒し、走者を塁上に釘づけすることができたとしても、打者に打たれてしまっては元も子もなくなってしまう。走者と打者、両方をしっかりケアできてこそ、走者を封じ込めたと言えるので、掲載した。
阻止率は盗塁刺÷企図数。イコール、走者の盗塁失敗率になる。
以上を踏まえた上で、眺めて頂きたい。
表掲載の46投手中、企図/9の値が.050以下、走者1塁被打率.250以下の条件設定で絞り込むと、下記結果になった。

この7投手は、走者に盗塁企図をさせず、打者にも打たれない、二兎を追う難作業を高いレベルで実現できた投手と言える。
大谷翔平は格段にクイックが上手くなったのでは?と思う。
155.1回を投げた昨年は16企図9盗塁を許していた。しかし、160.2回の今年は6企図と大きく削減することに成功した。開幕戦、超機動力野球を抱えた楽天は昨年大谷から5企図4盗塁を決めた実績をひっさげ、「クイックはすぐに速くなるものではない。揺さぶるというより、成功させないと」と大久保監督。盗塁でかき回すことを公言したが、クイック平均タイムを1.28秒から1.1秒台にまで改善させてきた大谷の前に、実際は1盗塁と不発に終わった。
同様に走者のケア技術が改善されたのでは?と思えるのが、岡本洋介、森唯斗、岸孝之だ。
岡本洋は昨年企図/9の値で1.60を記録した。84.1回を投げて15の企図を許していた。しかし、今年は3企図、0.40と大きな削減に成功した。森も同様で企図/9が昨年1.37だったのが、今年は0.30だ。西武のエース岸も改善している。企図/9では昨年0.89から今年0.16へ大きく変化した。今年は110.1回を投げながら、許した企図は2。決められた盗塁は僅かに1度のみだった。
昨年に引き続き、良い数字を残しているのが、中田賢一、増田達至、高橋朋己と言えそうだ。
増田は44.2回を投げた昨年に許した企図数は2と少なかったが、74回の今年も僅かに3に止めた。高橋朋も62.2回を投げた昨年の企図は3のところ、61.2回の今年は僅かに1。その1度も盗塁刺に追い込んだので、今シーズンは盗塁を許さなかったことになる。
リードした場面や接戦など試合の終盤で起用されることの多い増田や高橋朋の場合、相手走者もリスクを背負ってまで盗塁を仕掛けてくることは少なくなる。ましてや、1塁走者と対面したサウスポーの高橋朋のケースでは、走者もスタートを切りづらくなる。
しかし、ソフトバンクの中田賢一は違う。
24試合中23試合が先発起用されたローテーション投手である。序盤・中盤なら相手も隙あらばと次塁を盗塁で狙ってくることも多い。その中、155.1回を投げながら、許した企図は7という少なさだった。企図/9では0.41の優れた値を示し、そのうち6度を盗塁刺に追い込んだ。阻止率では85.7%というとんでもない高さをマークしたのだった。さらには走者1塁時の被打率も.240と、走者のケアに神経を取られるあまり打者への勝負がおろそかになったという"あるある"もなく、今季パリーグの中で最もハイレベルな次元で、1塁走者と打者を抑え込んだ投手と言えそうだ。
中田が先発登板した9/12楽天戦、同姓である実況の中田浩光アナの口からは、楽天の永池内野守備走塁コーチが中田のクイックが速く、盗塁で崩すのが難しいとボヤいていたという取材秘話が紹介されていた。
ちなみに、中田の昨年を確認してみると、145回を投げて企図10、企図/9は0.62、阻止率60.0%、走者1塁時の被打率.196の数字になっており、少なくとも2年連続で1塁走者と打者を抑えこんでいる凄さが浮かび上がってくる。
■今シーズン、中田賢一を相手に盗塁を仕掛けた走者の成績

上記に今シーズン、中田から走った走者を表にまとめてみた。
俊足走者の顔ぶれがズラリと並ぶ。その中で唯一許したのは8/19オリックス戦2回1死1塁でのヘルマン二盗のみ。
このときも鶴岡の送球が高めに大きく逸れたことによるもので、もし安定した送球なら完全にアウトのタイミングだった。ちなみに、手元のストップウォッチでクイックを5度計測してみた。その平均クイックタイムは1.05だったことを付記しておきたい。
さて、今度は表46人を、企図/9が1.30以上の条件設定で絞り込んでみたい。下記結果になった。

この6投手は逆に、今季、走者に良く走られてしまった投手になる。
6人中、3人がソフトバンク勢が占める。予想はついていたが、バンデンハークの26企図19盗塁、阻止率26.9%の走られっぷりには改めて驚かされる。攝津の35企図はパリーグ最多。昨年も32企図23盗塁と最多の企図を許し、数多くの盗塁を決められており、リーグの中でも1、2を争う走りやすい投手だ。
ホークス投手陣は例年、走者にフリーパスのように走りまくられるシーズンが多い。今季許した企図173はリーグ最多。最小のオリックスの111と比べると実に62の差異がある。ちなみに、昨年も160企図を許してリーグ最多だった。走られても打者を打ち取りさえすればよい。ホームを踏ませなければよいという思想がチームの中に流れている気がする。(それを可能にしているのが、球威ある投球なのだろう)
米国球界からNPB挑戦1年目となったロッテのイデウンも、隙あらばすかさず狙ってくるNPBの走者のレベルの高さに苦労したフシがうかがえる。高速クイックに定評のある西武・牧田も企図は多めなのは意外だった。いくらクイックに長けていても、アンダースローという独特フォームに球速が遅いとあれば、相手走者は仕掛けてみたくなる心理に駆られるのかもしれない。
走者に最も走られなかった投手=中田賢一
ソフトバンク中田が走者と打者を高いレベルで封じ込めたのに対し、逆に走者と打者、両方にヤラれっぱなしだったのは誰か?とみると、やっぱり、同じホークスの攝津正になりそうだ。
企図/9は2.35の高さ。20.0%しかない阻止率。走者1塁時の被打率は4割超え。ここに四死球が含まれて被出塁率ということになると5割近くに達してしまうのでは?と思う。往時の力はもはやない33歳の攝津が今後サバイバルしていくには、こういった走者ケア技術も磨いていく必要があるのでは?と思う。
それにしても、走者を釘づけにした投手、走者にカモにされた投手が同一チームから出るとは、少々意外な結果になった。【終】
◎◎◎関連記事◎◎◎
・【記録】走者に走られ易い楽天投手、走られにくい犬鷲投手~2015年楽天イーグルス投手別の盗塁成績より
・【記録】2014年パリーグ盗塁記録(4)投手別の許盗塁数。盗塁を許さない投手、走られ放題の投手は?!
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盗塁阻止の最大責任者は、捕手ではなく投手だ
今回はパリーグ主要投手の盗塁成績を御紹介したい。
皆さん、盗塁を阻止するために最も必要なファクターを1つ挙げよと言われたら、何を思い浮かべるだろうか?
捕手の強肩?
確かに捕手の一番の見せ場かもしれない。矢のようなストライク送球でビュッとへ投げ、2塁を狙った俊足走者をタッチアウトできた時のシーンは、強肩捕手の面目躍如だろう。楽天ファンの皆さんなら今年の7/9ソフトバンク戦を連想するかもしれない。高卒3年目捕手・下妻貴寛が柳田悠岐、本多雄一の二盗を立て続けに刺した、あの胸のすくシーンだ。
しかし、実際には、捕手責任よりも、投手責任が大きいとされている。
盗塁はピッチャーの責任が7割(里崎智也)
現役時代は強肩で鳴らした元ロッテ・里崎智也氏でも、今夏上梓した著書『高校球児に伝えたい!プロでも間違うバッテリーの基本』(東邦出版)の中で「盗塁はピッチャーの責任が7割」と綴っているのだ。一部を引用してみよう。
ピッチャーに責任転嫁するわけではないが、キャッチャーはどれだけ努力してもスローイングのスピードは1.8秒まで。しかし、ピッチャーのクイックモーションのスピードをアップさせる幅は広い。高いスキルを身につけて、1.00秒のクイックモーションで投げることができる投手もいる。(中略)
ピッチャーが努力をしてくれると、キャッチャーのスローにたとえ2.0秒かかったとしても理論上は余裕でアウトにできる。また1.0秒、1.1秒のクイックで投げることができる投手に対しては、ランナーのほうも、うかうかとスタートを切れない。用心するためにランナーも3.4秒、3.5秒と時間がかかってしまうようになる。
盗塁を阻止するためにはピッチャーが7割の責任を背負っていると思う。プロの世界では、「あいつのクイックは速いから走れないな」「牽制もうまいから難しいよな」という話はよく聞くが、「あのキャッチャーは肩が強いから走れない」とはあまりいわれない。元々、肩の弱いキャッチャーはプロへ入ってこないという前提があるのかもしれないが、盗塁阻止は2人の共同作業なのだ。
セイバーメトリクスリポート4でも証明された投手責任
里崎氏の主張は球界や自身の経験則に基づいたものだが、この経験則はセイバーメトリクスの研究でも証明されている。
昨年発表された『プロ野球を統計学と客観分析で考えるセイバーメトリクス・リポート4』。そこに所収されている大南淳氏の「映像解析で盗塁阻止に対する捕手の貢献を探る」によると、投手のクイックの速さ、投手のボールの速さ、捕手の捕ってからの速さ、捕手のボールの速さ、二塁での捕球からタッチ、この5項目の中で盗塁阻止率との相関関係が最も強かったのは、投手のクイックの速さだったと言う。
とかく我々は捕手にばかり目がいきがちである。しかし、盗塁阻止のため本当に必要な要素は、前述のように、投手責任が最も大きいのだ。クイックや牽制を含めた走者ケア技術が上手い投手と下手な投手。両者の間では盗塁成績が大きく異なってくるのだ。
パリーグ全盗塁を投手と紐づけしてみたよ
にも関わらず、NPBではいまだに盗塁成績は打者(走者)の記録として管理されている。投手と紐づけされた成績はブラックボックスの中に置かれたままである。「プロ野球ヌルデータ置き場」さんなど数多くの記録サイトが有志の手で立ち上げられ、人気を博している昨今ながらも、盗塁を投手成績で管理しているのを見たことがない。
ということで、当ブログではここ数年、パリーグで発生した全盗塁記録を投手と紐づけすることで、投手別の盗塁成績を作成してきた。
今年はパリーグで930企図、628盗塁、302盗塁刺の盗塁が発生した。その紐づけ作業もようやく終了。昨日は一足先に楽天投手の盗塁成績を公開したが、今回はパリーグ主要46人の投手のそれを御紹介したい。
(下記に続く)
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■2015年 パリーグ 主要投手別の盗塁成績
※投球回60回以上の46人を対象


表の見方
まず最初に断っておくが、この盗塁成績は走者側の記録である点だ。盗塁阻止率を計算するために用いる捕手側の記録ではない点をご了承いただきたい。
表中、企図/9は9イニング当たりの企図数だ。投手は各々投球回が異なるため、どこかで分母を揃える必要がある。今回は防御率、奪三振率や与四球率と同じく、9イニング当たりの値に設定した。この平均値は例年0.90~1.00付近になる。
盗塁の大半が1塁からの二盗であることを踏まえて、走者1塁時の被打率を、データで楽しむプロ野球さんを参照にしてつけてみた。走者の盗塁を警戒し、走者を塁上に釘づけすることができたとしても、打者に打たれてしまっては元も子もなくなってしまう。走者と打者、両方をしっかりケアできてこそ、走者を封じ込めたと言えるので、掲載した。
阻止率は盗塁刺÷企図数。イコール、走者の盗塁失敗率になる。
以上を踏まえた上で、眺めて頂きたい。
表掲載の46投手中、企図/9の値が.050以下、走者1塁被打率.250以下の条件設定で絞り込むと、下記結果になった。

大幅改善された大谷翔平の走者ケア技術
この7投手は、走者に盗塁企図をさせず、打者にも打たれない、二兎を追う難作業を高いレベルで実現できた投手と言える。
大谷翔平は格段にクイックが上手くなったのでは?と思う。
155.1回を投げた昨年は16企図9盗塁を許していた。しかし、160.2回の今年は6企図と大きく削減することに成功した。開幕戦、超機動力野球を抱えた楽天は昨年大谷から5企図4盗塁を決めた実績をひっさげ、「クイックはすぐに速くなるものではない。揺さぶるというより、成功させないと」と大久保監督。盗塁でかき回すことを公言したが、クイック平均タイムを1.28秒から1.1秒台にまで改善させてきた大谷の前に、実際は1盗塁と不発に終わった。
同様に走者のケア技術が改善されたのでは?と思えるのが、岡本洋介、森唯斗、岸孝之だ。
岡本洋は昨年企図/9の値で1.60を記録した。84.1回を投げて15の企図を許していた。しかし、今年は3企図、0.40と大きな削減に成功した。森も同様で企図/9が昨年1.37だったのが、今年は0.30だ。西武のエース岸も改善している。企図/9では昨年0.89から今年0.16へ大きく変化した。今年は110.1回を投げながら、許した企図は2。決められた盗塁は僅かに1度のみだった。
昨年に引き続き、良い数字を残しているのが、中田賢一、増田達至、高橋朋己と言えそうだ。
増田は44.2回を投げた昨年に許した企図数は2と少なかったが、74回の今年も僅かに3に止めた。高橋朋も62.2回を投げた昨年の企図は3のところ、61.2回の今年は僅かに1。その1度も盗塁刺に追い込んだので、今シーズンは盗塁を許さなかったことになる。
リードした場面や接戦など試合の終盤で起用されることの多い増田や高橋朋の場合、相手走者もリスクを背負ってまで盗塁を仕掛けてくることは少なくなる。ましてや、1塁走者と対面したサウスポーの高橋朋のケースでは、走者もスタートを切りづらくなる。
ソフトバンク中田賢一の真骨頂
しかし、ソフトバンクの中田賢一は違う。
24試合中23試合が先発起用されたローテーション投手である。序盤・中盤なら相手も隙あらばと次塁を盗塁で狙ってくることも多い。その中、155.1回を投げながら、許した企図は7という少なさだった。企図/9では0.41の優れた値を示し、そのうち6度を盗塁刺に追い込んだ。阻止率では85.7%というとんでもない高さをマークしたのだった。さらには走者1塁時の被打率も.240と、走者のケアに神経を取られるあまり打者への勝負がおろそかになったという"あるある"もなく、今季パリーグの中で最もハイレベルな次元で、1塁走者と打者を抑え込んだ投手と言えそうだ。
中田が先発登板した9/12楽天戦、同姓である実況の中田浩光アナの口からは、楽天の永池内野守備走塁コーチが中田のクイックが速く、盗塁で崩すのが難しいとボヤいていたという取材秘話が紹介されていた。
ちなみに、中田の昨年を確認してみると、145回を投げて企図10、企図/9は0.62、阻止率60.0%、走者1塁時の被打率.196の数字になっており、少なくとも2年連続で1塁走者と打者を抑えこんでいる凄さが浮かび上がってくる。
■今シーズン、中田賢一を相手に盗塁を仕掛けた走者の成績

足に覚えある俊足走者でも、中田から盗塁を決めるのは難しい
上記に今シーズン、中田から走った走者を表にまとめてみた。
俊足走者の顔ぶれがズラリと並ぶ。その中で唯一許したのは8/19オリックス戦2回1死1塁でのヘルマン二盗のみ。
このときも鶴岡の送球が高めに大きく逸れたことによるもので、もし安定した送球なら完全にアウトのタイミングだった。ちなみに、手元のストップウォッチでクイックを5度計測してみた。その平均クイックタイムは1.05だったことを付記しておきたい。
さて、今度は表46人を、企図/9が1.30以上の条件設定で絞り込んでみたい。下記結果になった。

今季、走者にカモにされた投手6人
この6投手は逆に、今季、走者に良く走られてしまった投手になる。
6人中、3人がソフトバンク勢が占める。予想はついていたが、バンデンハークの26企図19盗塁、阻止率26.9%の走られっぷりには改めて驚かされる。攝津の35企図はパリーグ最多。昨年も32企図23盗塁と最多の企図を許し、数多くの盗塁を決められており、リーグの中でも1、2を争う走りやすい投手だ。
ホークス投手陣は例年、走者にフリーパスのように走りまくられるシーズンが多い。今季許した企図173はリーグ最多。最小のオリックスの111と比べると実に62の差異がある。ちなみに、昨年も160企図を許してリーグ最多だった。走られても打者を打ち取りさえすればよい。ホームを踏ませなければよいという思想がチームの中に流れている気がする。(それを可能にしているのが、球威ある投球なのだろう)
米国球界からNPB挑戦1年目となったロッテのイデウンも、隙あらばすかさず狙ってくるNPBの走者のレベルの高さに苦労したフシがうかがえる。高速クイックに定評のある西武・牧田も企図は多めなのは意外だった。いくらクイックに長けていても、アンダースローという独特フォームに球速が遅いとあれば、相手走者は仕掛けてみたくなる心理に駆られるのかもしれない。
走者に最も走られなかった投手=中田賢一
走者に最も走られた投手=攝津正
ソフトバンク中田が走者と打者を高いレベルで封じ込めたのに対し、逆に走者と打者、両方にヤラれっぱなしだったのは誰か?とみると、やっぱり、同じホークスの攝津正になりそうだ。
企図/9は2.35の高さ。20.0%しかない阻止率。走者1塁時の被打率は4割超え。ここに四死球が含まれて被出塁率ということになると5割近くに達してしまうのでは?と思う。往時の力はもはやない33歳の攝津が今後サバイバルしていくには、こういった走者ケア技術も磨いていく必要があるのでは?と思う。
それにしても、走者を釘づけにした投手、走者にカモにされた投手が同一チームから出るとは、少々意外な結果になった。【終】
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・【記録】走者に走られ易い楽天投手、走られにくい犬鷲投手~2015年楽天イーグルス投手別の盗塁成績より
・【記録】2014年パリーグ盗塁記録(4)投手別の許盗塁数。盗塁を許さない投手、走られ放題の投手は?!
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