則本昂大が打者と繰り広げた駆け引きを、右打者対戦成績で垣間見る~球種成績、ゾーン被打率ほか
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2年目で早くも奪三振王のタイトルを手中にし、1989年の斎藤雅樹以来となるシーズン7完封を達成した9/19日本ハム戦では、星野監督から初めて「エースのピッチング」と評された則本昂大。
初の投球回200イニングを超え、2年連続の二桁超えの14勝(10敗)、防御率3.02(規定投球回リーグ4位)、FIP2.63(同3位)。交流戦明けの夏場に苦しんだとはいえ、今年の成績は、見事。多くのファンが、岩隈、田中に続く3代目エースと認めるシーズンになったかと思う。
一見、順風満帆に来ているようにみえる成績だが、その中にも、打者との駆け引きがあったことを伺わせるのが、今回紹介するvs右打者投手成績である。(ちなみにvs左打者対戦成績は昨日、このエントリーの1つ前で紹介しているので、そちらもあわせてどうぞ)
■則本昂大 年度別 vs右打者 投手成績

左打者との対戦では被OPS.572から644へ、被打率.206から.245へ悪化を見せた則本だが、右打者との対戦では被OPS.677から.646への改善に成功している。
その差は.031の改善になったが、成功要因はフォアボールの少なさにある。打席に占める四球の比率は7.2%から3.2%へ削減。もし昨年と同じ7.2%の四球率だった場合、計算上では被OPSは昨年と全く同じ.677になっており、ひとえにムダな四球を減らしたことが、右打者対戦成績改善の源泉になったと言えそうだ。
ちなみに、被IsoP、被長打率は昨年とほぼ同値だった。(被IsoP.118→.115、被長打率.364→.365)
もう1つ大きいのは、当ブログで何度も繰り返し指摘しているように、フォークの本格導入である。
昨年は右打者に僅か0.6%しか投げなかったフォークを今年は13.5%まで増やし、右打者から奪った109個の三振のうち、実に40個をフォークで獲得。このことで、右打者の三振率は19.9%から24.9%に上昇している。バットに球を当てさせずアウトを稼ぐことができることは打たせて取る以上に理想の方法論とも言えるので、三振率が高まった点は良い知らせである。(丁寧に書くと、打たせて取る投球術を否定している訳ではないですよ)
右打者対戦成績の2年分を、球種別に細かく出してみたのが、下記2つの表になる。ぜひ、じっくり見比べて貰いたい。
■則本昂大 2013年 vs右打者 球種別 投手成績

■則本昂大 2014年 vs右打者 球種別 投手成績

トータルでは成績の改善に成功した右打者対戦成績だが、球種別に細かくみると、則本が右打者に最も多く投げるストレート、2番目に多くを放るスライダーの成績は、なんと!1年目の昨年から悪化していた。書き出してみると、こうなる。
ストレート・・・《被OPS》.802→.852、《被打率》.292→.313
スライダー・・・《被OPS》.501→.619、《被打率》.176→.266
もし今年、昨年と同じストレートとスライダー主体でフォークを投げなかったとしたら、右打者対戦成績は被OPS.757、被打率.294になっていたかもしれないハイリスクがそこにあったと言えそうだ。(←今年の成績全体からフォークを削除した場合の数字)
前半戦や、ほとんど対戦のない交流戦の中継、ベンチリポートで届けられる対戦相手のコーチの則本評は、ストレートとスライダーの投手だ、というものだった。何度か耳にしたことがあるので覚えている。確かに昨年の則本はストレート51.2%、スライダー30.8%の球種割合で、この2つの合計だけで82.0%にも及んだ。仰るとおり、1年目の則本はストレートとスライダーの投手だった。
2年目になり、ストレートを打ち返され長打になるケースが増え、1割台だったスライダーの被打率は2割6分台まで悪化をみせた。このことは、則本のピッチングが1年目より劣化したというよりも、対戦相手の則本対策が則本の投球を上まわった結果だと私は見ている。
評価には絶対評価と相対評価がある。絶対評価で診た場合、則本は明らかに進化している。しかし、野球は相手がいて初めて成立するものなので、相対評価になってくる。絶対評価で成績が改善されても、相対評価で結果が出なければ、評価されないのがプロ野球である。
それはさておき、ストレートとスライダーに的を絞って対策を敷いてくることは則本も分かっていただろうから、左打者のときにも書いたように、新球種フォークを本格配備したということなのだろう。
成績が悪化したストレートとスライダーを、打者がまだ対応できない新球種フォークに置き換えた。
右打者との対戦打席、1年目はその90.7%がストレートとスライダーで打席結果が出ていたが、2年目の今年は76.9%まで減少。その代わり、フォークが18.8%を占めることで、フォークの傑出した成績が、全体の成績を大きく下支えしていたことが、良く分かる。
MLBとは違い、NPBは全12球団。リーグには他5球団しかなく、同じ相手と何度も繰り返し対戦して雌雄を決するのがNPBの特徴である。
当然、やられた相手は今度はやり返すとばかりに相手の弱点を突き、対策を講じてくる。こっちだって、さらに貪欲にと練習や研究を重ねる。どちらがどちらを上まわり優位に立つのか?まるで狐と狸の化かし合いのような繰り返しなのだ。
ストレートとスライダーの成績悪化は打者側の対策の戦果と言えるし、フォークを配備して全体の成績で改善に成功できた点は則本の勝利なのだ。調べていて、見えざるところでの打者との駆け引きが浮き彫りになったようで、大変興味深い結果だった。
下記にゾーン被打率の推移と、ストレート、スライダー、フォークのゾーン空振り率を掲載して終わりにする。
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■則本昂大 2013年 vs右打者 ゾーン被打率

■則本昂大 2014年 vs右打者 ゾーン被打率

↑↑↑各ゾーンの上から、被打率、打数、安打、本塁打、三振の順である。
打者有利・則本不利=暖色、打者不利・則本有利=寒色の網掛けにしている。
↓↓↓↓各ゾーンの上から、空振り率(空振り数÷球数)、球数、スイング数、空振り数の順になる。
網掛けは上と同じ、ゾーン被打率を示している。
■則本昂大 2014年 vs右打者 ストレート ゾーン空振り率

■則本昂大 2014年 vs右打者 スライダー ゾーン空振り率

■則本昂大 2014年 vs右打者 フォーク ゾーン空振り率

◎◎◎関連記事◎◎◎
・楽天・則本昂大がプロ2年目で200個越えドクターK、最多奪三振のタイトルを取ることができた3つの理由
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・楽天の則本昂大。左打者対戦成績をゾーン被打率、空振り率で確認する
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2年目で早くも奪三振王のタイトルを手中にし、1989年の斎藤雅樹以来となるシーズン7完封を達成した9/19日本ハム戦では、星野監督から初めて「エースのピッチング」と評された則本昂大。
初の投球回200イニングを超え、2年連続の二桁超えの14勝(10敗)、防御率3.02(規定投球回リーグ4位)、FIP2.63(同3位)。交流戦明けの夏場に苦しんだとはいえ、今年の成績は、見事。多くのファンが、岩隈、田中に続く3代目エースと認めるシーズンになったかと思う。
一見、順風満帆に来ているようにみえる成績だが、その中にも、打者との駆け引きがあったことを伺わせるのが、今回紹介するvs右打者投手成績である。(ちなみにvs左打者対戦成績は昨日、このエントリーの1つ前で紹介しているので、そちらもあわせてどうぞ)
■則本昂大 年度別 vs右打者 投手成績

左打者との対戦では被OPS.572から644へ、被打率.206から.245へ悪化を見せた則本だが、右打者との対戦では被OPS.677から.646への改善に成功している。
その差は.031の改善になったが、成功要因はフォアボールの少なさにある。打席に占める四球の比率は7.2%から3.2%へ削減。もし昨年と同じ7.2%の四球率だった場合、計算上では被OPSは昨年と全く同じ.677になっており、ひとえにムダな四球を減らしたことが、右打者対戦成績改善の源泉になったと言えそうだ。
ちなみに、被IsoP、被長打率は昨年とほぼ同値だった。(被IsoP.118→.115、被長打率.364→.365)
もう1つ大きいのは、当ブログで何度も繰り返し指摘しているように、フォークの本格導入である。
昨年は右打者に僅か0.6%しか投げなかったフォークを今年は13.5%まで増やし、右打者から奪った109個の三振のうち、実に40個をフォークで獲得。このことで、右打者の三振率は19.9%から24.9%に上昇している。バットに球を当てさせずアウトを稼ぐことができることは打たせて取る以上に理想の方法論とも言えるので、三振率が高まった点は良い知らせである。(丁寧に書くと、打たせて取る投球術を否定している訳ではないですよ)
右打者対戦成績の2年分を、球種別に細かく出してみたのが、下記2つの表になる。ぜひ、じっくり見比べて貰いたい。
■則本昂大 2013年 vs右打者 球種別 投手成績

■則本昂大 2014年 vs右打者 球種別 投手成績

実は悪化していた右打者ストレート、スライダー成績
トータルでは成績の改善に成功した右打者対戦成績だが、球種別に細かくみると、則本が右打者に最も多く投げるストレート、2番目に多くを放るスライダーの成績は、なんと!1年目の昨年から悪化していた。書き出してみると、こうなる。
ストレート・・・《被OPS》.802→.852、《被打率》.292→.313
スライダー・・・《被OPS》.501→.619、《被打率》.176→.266
もし今年、昨年と同じストレートとスライダー主体でフォークを投げなかったとしたら、右打者対戦成績は被OPS.757、被打率.294になっていたかもしれないハイリスクがそこにあったと言えそうだ。(←今年の成績全体からフォークを削除した場合の数字)
前半戦や、ほとんど対戦のない交流戦の中継、ベンチリポートで届けられる対戦相手のコーチの則本評は、ストレートとスライダーの投手だ、というものだった。何度か耳にしたことがあるので覚えている。確かに昨年の則本はストレート51.2%、スライダー30.8%の球種割合で、この2つの合計だけで82.0%にも及んだ。仰るとおり、1年目の則本はストレートとスライダーの投手だった。
2年目になり、ストレートを打ち返され長打になるケースが増え、1割台だったスライダーの被打率は2割6分台まで悪化をみせた。このことは、則本のピッチングが1年目より劣化したというよりも、対戦相手の則本対策が則本の投球を上まわった結果だと私は見ている。
評価には絶対評価と相対評価がある。絶対評価で診た場合、則本は明らかに進化している。しかし、野球は相手がいて初めて成立するものなので、相対評価になってくる。絶対評価で成績が改善されても、相対評価で結果が出なければ、評価されないのがプロ野球である。
それはさておき、ストレートとスライダーに的を絞って対策を敷いてくることは則本も分かっていただろうから、左打者のときにも書いたように、新球種フォークを本格配備したということなのだろう。
成績が悪化したストレートとスライダーを、打者がまだ対応できない新球種フォークに置き換えた。
右打者との対戦打席、1年目はその90.7%がストレートとスライダーで打席結果が出ていたが、2年目の今年は76.9%まで減少。その代わり、フォークが18.8%を占めることで、フォークの傑出した成績が、全体の成績を大きく下支えしていたことが、良く分かる。
MLBとは違い、NPBは全12球団。リーグには他5球団しかなく、同じ相手と何度も繰り返し対戦して雌雄を決するのがNPBの特徴である。
当然、やられた相手は今度はやり返すとばかりに相手の弱点を突き、対策を講じてくる。こっちだって、さらに貪欲にと練習や研究を重ねる。どちらがどちらを上まわり優位に立つのか?まるで狐と狸の化かし合いのような繰り返しなのだ。
ストレートとスライダーの成績悪化は打者側の対策の戦果と言えるし、フォークを配備して全体の成績で改善に成功できた点は則本の勝利なのだ。調べていて、見えざるところでの打者との駆け引きが浮き彫りになったようで、大変興味深い結果だった。
下記にゾーン被打率の推移と、ストレート、スライダー、フォークのゾーン空振り率を掲載して終わりにする。
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■則本昂大 2013年 vs右打者 ゾーン被打率

■則本昂大 2014年 vs右打者 ゾーン被打率

↑↑↑各ゾーンの上から、被打率、打数、安打、本塁打、三振の順である。
打者有利・則本不利=暖色、打者不利・則本有利=寒色の網掛けにしている。
↓↓↓↓各ゾーンの上から、空振り率(空振り数÷球数)、球数、スイング数、空振り数の順になる。
網掛けは上と同じ、ゾーン被打率を示している。
■則本昂大 2014年 vs右打者 ストレート ゾーン空振り率

■則本昂大 2014年 vs右打者 スライダー ゾーン空振り率

■則本昂大 2014年 vs右打者 フォーク ゾーン空振り率

◎◎◎関連記事◎◎◎
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