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納得いかない岩隈久志の今季2勝目~2014年5月8日○SEA1-0KC

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納得いかない岩隈久志の今季2勝目



岩隈久志、今季2度目の登板。本拠地に青木宣親擁するロイヤルズを迎えて3ゲームシリーズの第1戦である。

マリナーズは岩隈の今季初勝利を起点に5連勝。先のアスレチックス4連戦でも3連勝と勝ち越し、借金完済の只今17勝16敗。レンジャーズを抜いてアリーグ西地区2位に浮上している。対するロイヤルズは16勝17敗の同中地区3位。

岩隈のロイヤルズ戦先発は昨年9/25セーフコフィールドでのナイトゲーム以来(このときは8回4安打9三振1四球無失点)、2度目のことである。

それにしても、納得いかない岩隈久志の今季2勝目となった。

もちろん、クマのピッチングに文句があろうはずがない。その柔よく剛を制すの投球はこの日も快調。怪我明け2登板目であることを全く感じさせないグラウンドボールピッチャーの本領発揮というパフォーマンスだった。

8回表を終えた時点で球数は94。散発4安打、7奪三振、四死球0、無失点という素晴らしい内容で、2011年4/26皇子山で西武・涌井秀章と投げ合い、147球で達成して以来、約3年半月ぶりの完封勝利が視野に入った状況だった。もちろん、メジャーで達成させれば初の快挙となる。

1-0のスコア。援護点は3回裏に4番・ハートがセンターへ弾き返した先制打の1点のみという薄氷リードの点差も、9回表のマウンドに岩隈が登るであろうことを私の中で大いに予想させた。

しかし・・・

9回表、マクレンドン監督がマウンドに送り出したのはフェルナンド・ロドニーだった。

納得いかないのは指揮官のこの采配である。

なぜ髭もじゃドミニカンでクマではなかったのか・・・

恐らく怪我明けで3Aでの実戦を入れても3登板目ということも考慮しての93球御役御免になったのだろう。シーズンは長い。ここで無理をさせて岩隈の復帰ロードマップにヒビでも入ったら元も子もないという考えなのだろう。このことは理解できる。しかし、指揮官は前回登板後「次の登板で100球投げることに何の問題も見当たらない」と発言していたのだ。

あの時点で93球。残り7球で100球だ。クマなら十分にその可能性を秘めていた。

岩隈は過去2年1イニング7球でゼロに締める投球を数多くやってきた。実際、先日私は数えたことがあったのだが、あまりにも多すぎなので、岩隈にとって1イニング7球無失点投球は、あまり意味を持たない普通のことだろうと判断し、その記録を消してしまった。今となっては心残りである。(ここまでの最高は昨年8/5ブルージェイズ戦の3回5球)

9回のマウンドに上げるところまでは続投させて欲しかった。岩隈ファンとしては大変残念な采配になった。

野球帽を斜め被りにするのがトレードマークのロドニーは、レイズから移ってきた(今季開幕前時点で)メジャー通算172セーブのドミニカン。今季は早くも9セーブを挙げているマリナーズの新守護神だった。

もちろん、通常の場面ならロドニー選択に異論はない。しかし、薄氷の1点差、打順は9番から上位に返っていくロイヤルズの攻撃、岩隈メジャー初の快記録目前であること、ここまで岩隈の催眠術で良く眠らせていたロイヤルズの打者がパッと目を覚ましてしまうのではないか?という危惧感などが相まって、モヤモヤさせられる9回表となった。

案の定、モヤモヤがヒヤヒヤに変わるまで、さして時間はかからなかった。

ロドニーの制球が定まらないのだ。先頭打者にストレートの四球を与えてしまう。次打者・青木がバントで送って1死2塁後、2番・ホズマーにも3-1から歩かせてしまい、1死2,1塁。ここで監督がマウンドに歩み寄って喝を入れたのが効いたのか、3番、4番を凡退させて3アウト。

岩隈の快記録はならなかったものの、岩隈の快投でマリナーズは今季初の1-0勝利。岩隈は今回も降板後に手に汗握りながら2勝目の白星を手中にしている。

両軍のスタメン

ロイヤルズ=1番・青木(右)、2番・ホズマー(一)、3番・バトラー(指)、4番・ペレス(捕)、5番・ゴードン(左)、6番・バレンシア(指)、7番・ケーン(中)、8番・ムスタカス(三)、9番・エスコバー(遊)、先発・(右投)

マリナーズ=1番・ソーンダース(中)、2番・ロメロ(遊)、3番・カノ(二)、4番・ハート(指)、5番・スモーク(一)、6番・シーガー(三)、7番・ガレスビー(左)、8番・ミラー(遊)、9番・ズニーノ(捕)、先発・岩隈(右投)


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得点圏ピンチは初回の僅か1打席だけ



それにしても、見事だった。今季またこうして岩隈の芸術的な投球を堪能できる。その幸せを十分に噛みしめたひとときになった。

終わってみれば、クマが得点圏に走者を背負ったのは立ち上がりの1回表、この1イニングだけだった。

1番・青木宣親。前日3安打を放ってシアトルに乗り込んできた日本製の安打製造機。岩隈との通算対戦成績は16打数8安打1本塁打の.500を記録していた。しかし、メジャーでは4打数ノーヒット。昨年8/10の一戦で岩隈は青木を二ゴ、投ゴ、二ゴ、空三振と圧倒。メジャーで5度目の対決が初回先頭打者打席だった。結果は岩隈に軍配。3-1とボール先行したものの、第5球のアウトコース速球を打たせて左飛。

1死後、2番・ホズマーに初球打ち右前安打を浴びた。昨年の対戦でも3打数1安打と岩隈からヒットを打ち、今季も好調の2番打者に出塁されたクマは、3番・バトラーをフルカウント勝負の末、ドン詰まりの投ゴ。この間、スタートを切っていたホズマーに二進され2死2塁、これがこの試合唯一のピンチになった。

スコアリングポジションで4番・ペレズ。昨年得点圏打率.377を誇ったロイヤルズの主軸は今季は一転.161に低迷。ここでも岩隈は遊ゴを打たせて、危機を脱出している。

2回表は5番・ゴードンからの攻撃。昨年の対戦時スプリッターに当てられ右前安打を許した打者だったが、ここはリベンジ。1-1からそのスプリッターを連投。2度続けて空振りを奪う三振に取ると、後続をゴロ凡退させている。特に7番・ケインには低めを意識させた中での一転、高め速球勝負。昨年良く見られた効果的な高低を使った投球術で、慌ててバットを出しにいったケインをボテボテの一ゴに。岩隈のベースカバーも軽やかで素晴らしかった。

3回表は下位打線との勝負。先頭の8番・ムスタカスには昨年秋二塁打を打たれていた。しかし、ここはボール先行2-0からファウルでカウントを稼ぐと、2-2からイージーな二ゴ。続くエスコバーは只今4試合連続安打中。アウトコースを狙った投球が真中に入っていく失投をバット一閃。インパクトの瞬間、覚悟を決めた私だったが、岩隈の球威が勝っていたのだろう、詰まり気味の左飛でアウトに取る。青木とのこの日2度目の邂逅もゴロを打たせてカノがしっかり処理。3回までスコアボードにゼロを並べた岩隈だった。

すると、その直後の3回裏、味方が先制点をプレゼント。女房役ズニーノが先頭打者としてチャンスメイクのツーベースを打ち返していくと、バントで送って三進。その後、4番・ハートが甘いチェンジアップを中前に弾き返し、これが先制打にしてマリナーズ唯一の得点になる。(SEA1-0KC)



先制直後の4回表、先頭打者出塁をゲッツーで切り抜ける



1点を貰った直後の4回表、ゼロに抑えなければならない重要所で正面場が訪れている。

先頭は2番・ホズマー。第1打席に岩隈からヒットを打っていた相手に外角低めに投げ切った球をピッチャー返しされ、バウンドが岩隈、2塁ベース上を越えて中前へ。初めて先頭打者の出塁を許す無死1塁を迎えていた。

ロイヤルズ反撃のチャンスと言えるこの無死1塁、しかし、ホズマーのゴロヒットは催眠術師・岩隈のショータイムが佳境へと向かう合図だったのかもしれない。そう、ゴロヒットだったのだ。ここまで相手打者が打った10本の打球、そのうち実に8本がゴロだった。岩隈の徹底したグラウンドボールピッチャーぶりが発揮されていたのである。

後続は3番・バトラー。インコースのシンカーで三塁線切れるゴロファウルを打たせ2-2と追い込むことに成功した後、低めに誘ったバッテリー思惑どおりの配球だった。結果は上々のサード正面ゴロ。打球は5-4-3と転送され、一気に2死走者なし。続く4番も二ゴに屠って、僅か47球。

省エネでゴロを打たせイニングを消化していく理想の投球となっていた。

この後も8回までスコアボードにゼロを入れていく。5回、8回は三者凡退投球。6回、7回は2死からシングルヒットを許したが、大事なし。7回は2死1塁から2塁を狙った相手走者の盗塁企図を女房役ズニーノの強肩ストライク送球で見事3アウトにする。ズニーノの攻守に渡る活躍が光るゲームでもあった。

5回以降になると、ロイヤルズ打線は完全に催眠術にヤラれていた。

5番・ゴードンあアウトコース低めに遠く逃げていく誘い球を強引に追いかけるようにして空振り三振。6番・バレンシアには低めに変化球を集めた後、一転、真っすぐ勝負。約146キロの4シームはいつも以上に速く感じたのだろう。振り遅れの三振でベンチに帰っていく6番打者が狐につままれたような佇まいで、思わずマウンド上のクマを振り返るシーンが印象に残った。他にも完全なボール球に手を出す打者が目立った。

そんなこんなで8回を終えて無失点。1イニング15球が目安とされている球数で、1イニング15球に達することは1度もない、そんな素晴らしい投球だった。

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ロイヤルズ戦16イニング連続無失点



8回、打者26人、93球(1回当たり11.63)、被安打4(全て単打)、被本塁打0、奪三振7、与四死球0、無失点。

初球27球・・・4Seam7、Sinker8、Slider10、Curveball2
2ストライク以降20球・・・4Seam4、Sinker2、Slider6、Splitter8

岩隈のコメント「(今季初の)ホームでの試合だったのでしっかり投げようと思っていました。序盤、丁寧に投げてリズムが良くなりました」

ゴロ率78.9%。岩隈久志が岩隈久志たる所以のピッチングをした。

岩隈はロイヤルズ相手にまだ1点も点を許していない。昨年9/25の1回からロイヤルズ戦で16イニング連続無失点となっている。さらに報道によると、アリーグ中地区球団相手に48イニング2/3連続無失点としているという(驚)

2-0、2-1といったボール先行する場面が序盤かなり見受けられたが、球そのものは調子良く走っていたように感じる。4シームの平均球速、初登板のアストロズ戦では140.9キロだったのが、本戦では143.0キロ。ヒットを許さず、ゴロを含めた凡打を多く量産することに成功した。中4日でこれほど調子を上げることができるのか?というほどの球威があったように感じる。

立ち上がりから序盤3回までは4シーム、シンカーの速球主体(全体の65.7%)。4回以降は変化球の割合(全体の56.9%)が増えていく配球変化になっていた。

持ち味の低め低めの投球は変わらず。特に右打者が白眉。右打者に投じた変化球33球のうち、75.8%に当たる実に25球が低めゾーンに集まっていた。だからこそ、高めが生きてくる。

右打者にスライダーを空振らせて追い込むケース頻発



この日、伝家の宝刀スプリッターも素晴らしかったが、特に驚かされたのはスライダーだった。右打者に特に効果を発揮していた。何球か抜けてしまうケースも見受けられたものの、外角低めに嫌らしく決まるスライダーが絶品。それも追い込む前で主にアウトコースで使用されるスライダーが素晴らしく、15球のうち6球で空振りを奪っていた(0-1からの使用頻度が多かった)。これで打者を2ストライクに追い込むケースが目立っていた。

不思議なことに一転、2ストライク以降の6球は空振り僅かに1個に止まっている。これは岩隈がスライダーをいつも以上に際どい所に投げようとしてボールになってしまったということもあったのだろう。とにかくこの日、追い込む前に、打者の気配やカウント状況などを考慮して、相手の打ち気を上手く逆手に取って上手いことスライダーを利用していたのでは?と見る。

いやはや、本当に素晴らしかった。もし完投・完封勝利ということになっていれば、本エントリーのタイトルは「岩隈久志、メジャー3年目の最高傑作」になるはずだった。

岩隈が昨年のロイヤルズ戦でも9回のマウンドに上がることはなかった。そして今回も同様、惜しくも8回でお役目を終えたけれども、最高傑作と呼んで遜色ない93球だった。【終】


■配球図
20140509DATA03.jpg


■5/8ロイヤルズ戦、岩隈久志93球の詳細
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