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「これが野球」。マリナーズ岩隈、R.A.ディッキーと投げ合い7回2失点も、打線の援護に恵まれず今季5敗目──2013年8月5日 ●SEA1-3TOR

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両軍のスターティングラインアップ

ブルージェイズ=1番・レイエス(遊)、2番・デービス(左)、3番・バティスタ(右)、4番・エンカーナシオン(指)、5番・リンド(一)、6番・ラスマス(中)、7番・イズトゥリス(二)、8番・ロウリー(三)、9番・トーリー(捕)、先発・R.A.ディッキー(右投)

マリナーズ=1番・ミラー(遊)、2番・シーガー(三)、3番・モラレス(指)、4番・モース(右)、5番・イバニエス(左)、6番・ソーンダース(中)、7番・スモーク(一)、8番・アクリー(二)、9番・キンテーロ(捕)、先発・岩隈(右投)


レーニア山の風景が美しい

シアトルでのホームゲーム、MLB.TVは地元テレビ局ROOTS SPORTS製作の映像が使われている。中継がスタートするとき、セーフコフィールド周辺の街の風景、そこから見える遠景を映し出すのだが、くっきりそびえ立つ「山」の存在が気になっていた。独立峰のようにみえ、まるで富士山のような美しい佇まいなのだ。夏なのに山頂は雪景色に覆われている。気になっていたので今日調べてみたところ、レーニア山というらしい。標高は富士山より高い4,392m。wikipediaによれば『この地に移民した日系人たちは、富士山のように高く長く裾野を引く姿がシアトルの沖合いからでも見えることから、「タコマ富士」と呼んでいた』。なるほど。

6回まで0-0。R.A.ディッキーとの投手戦

さて、のっけから話が逸れた。いつか行って見たいシアトルだが、マリナーズはビジター日程が終わり今日から地元でブルージェイズ3連戦。その初戦のマウンドに岩隈が登板した。

(実は私の家族は米国在住でシアトルやニューヨークなど方々に野球観戦に行っている。この前は岩隈の写真を送ってきて、こちら側としてはほぞをかむような思いなのだった)

対する相手先発はR.A.ディッキーという点も、見どころとなった。ナックルボーラーの投球はなかなか拝めるものではないから、そういう意味でも美味しい試合になった。

ディッキーとの投げ合いは2度目になる。前回は5/4敵地戦。岩隈は7回5安打1失点で3勝目。ディッキーは6回6安打7失点。立ち上がりソーンダースが初回先頭打者本塁打をかっ飛ばすと、4回にはアクリーが満塁ホームラン。途中から戦意喪失したトロント打線を岩隈がしっかり抑えて勝利するという内容だった。素晴らしい試合にはなったものの、相手が昨年のサイヤング賞投手という点を考えれば、一方的な試合になったため、物足りなさも感じたのだ。

2度目のマッチアップとなった今回は、両先発投手に相応しい投手戦となった。6回まで両軍のスコアボードにはゼロが並ぶ。岩隈が相手打線に許した得点圏打席は僅かに1。マリナーズはディッキー相手に得点圏打席に6人のバッターを送り込むものの、上手くタイミングをはずされてしまい、ホームが遠い。決着は7回以降。バタバタバタッとしたかたちでスコアボードが動いて、1-3でブルージェイズが初戦をモノにしている。

1回表、岩隈はいきなり1番・レイエスに安打出塁を許した。本来ならアウトコースを狙っていた速球がインコース低めに入った所を、待ってましたとばかりに弾き返されてしまう。1,2塁間を痛烈に抜けた打球は右前へ達し、無死1塁。しかし、ここでクマが早くも手元のカード「併殺打」を切っていく。2番打者にアウトコース低めの球をややバットの先でゴロを打たせて、4-6-3のゲッツーに。岩隈が獲得した今季15本目の併殺打になった。

2回表、4番・エンカーナシオンから。通算対戦成績8打数3安打1満塁弾。1年過ぎてもあの悪夢はいまだに強烈で、私の中ではアスレチックスのセスペデス同様、要警戒打者の1人になっている。しかし、この初打席ではボール先行になりながらも、上手く打ち損じを誘発させることに成功した。

低めを徹底して攻めながら3-1から一転、高めへ投じた約145キロ速球が実に効果的。低めに目付していたであろうエンカーナシオンは、バッテリー思惑どおりに球の下っ面を叩き、ファーストファウルゾーンへのポップフライを打ちあげる。続く5番打者をレフトフライに討ち取ると、6番打者もインコースを攻めて詰まらせたレフトへの飛球に。フライアウト3つで三者凡退に退けた。

僅か6球での三者凡退劇

3回表、記録が生まれた。7、8、9の下位打線を僅か5球で三者凡退に片づけたのだ。早めのカウントで打たせてゴロ2個と外野後方飛球1個。実はこの5球三者凡退劇は、6/28カブス戦の6回で見せた6球での三者凡退を塗り替え、岩隈がメジャーで記録した最少球数による三者凡退劇となっている。

4回は2死まで上々。そこから難儀した。先頭打者が放ったバックネット方向のフライファウルを女房役キンテーロがカメラマン席ぎりぎりで好捕すると、続く打者には外角低めのスライダーで誘いをかけて、空振り三振。悠々と2死まで漕ぎつけたクマだったが、ここから慎重になった。迎える打者は3番、4番、両人合わせて54本の一発を放っている中軸に対し、一発を警戒したのだろう。3番バティスタを3-1から歩かせると、4番エンカーナシオンにもフルカウントからフォアボール。ボール先行3-0から3-2まで立て直したものの、敵もさる者、ラストは低めへの投球を看破されるかたちになった。

2死から今季初の連続四球で相手に与えてしまった得点圏だ。実に不気味な予感がよぎった。しかし、バッターボックスの5番打者を僅か2球で追い込むことに成功すると、ラストは低めスプリッターで料理、アクリーが手ぐすねひいて待ちかまえるセカンド正面ゴロに討ち取っている。

この場面、2球目で2ストライクを取ることができたのが分岐点だったような気がする。

2球目の前、サインがなかなか決まらない。バッターボックスのリンドも打席をはずして自分の間合いに持ちこもうとするなど、18.44mで心理戦が繰り広げられていた。キンテーロが何かを察知する。マウンドへ行って岩隈を励ます。再び仕切り直しで岩隈が投じたのは、女房役が構えるミットそのままに投げ込まれたインコースいっぱいの約146キロ速球。リンドがバットを振りにいくも、詰まったフライファウルになる。計算どおりの展開だった。続く3球目、しっかりインコースを攻め、ラストは対角線で料理、外角低め寄りのスプリッターでゴロを打たせた。バッテリー思惑どおりの青写真をしっかり描き切ることができたのだった。

5回表、2死から8番打者に外いっぱいに投げ切った球を右打ちされたものの、後続をゴロに取り、大事なし。

6回表、実はこのイニングがカギになるのでは?と感じていた。というのも、トロント打線が1番から始まるこの試合3度目のイニングだったからだ。しかし、ここも三者凡退。低めの投球を捉えられ、ライナーアウトが2本あった点は少々懸念されたものの、3人で片づけた。

いまだ両軍点が入らずで迎えた7回表は踏ん張り所となった。先頭は4番エンカーナシオン。ボール先行2-0からファウルで粘られた末、フルカウントから1塁に歩かせてしまう。続く5番打者には進塁打を打たれ1死2塁、6番ラスマスに弾き返された1塁線への当たりにヒヤッとさせられたものの、ファーストのスモークがバックハンドで好処理し、ベースカバーの岩隈に球が渡り1塁アウトに。この間、二走は三進。初めて3塁を踏ませた場面にはなったが、後続をひっかけさせてセカンドへのイージーバウンドゴロに討ち取った。

7回以降、試合が動く

7回裏、ようやく味方打線がクマの好投に報いて1点を先制する。この回の先頭スモークが右翼席へ先制ソロショット。しかし終わってみれば、この回1点止まりだったのが、後々響いてしまったか。

スモークの一振りで1点を奪った後もマリナーズは1死3,1塁のチャンスを迎えていた。

1死後、女房役キンテーロが右前へ弾き返した安打。右前で弾んだ打球が2バウンドしたところを、相手右翼手バティスタが素手で取りにいき、取りきれずに後逸。キンテーロは悠々2塁へ。その後ワイルドピッチで三進し、さらに四球で3,1塁と、相手から貰った絶好のチャンスが到来していた。しかし、いつもは「打」で頼りになるシーガーが打ち損じ、手痛い4-6-3のゲッツーゴロ。チャンスをフイにしてしまう。

1点を先制してもらった直後の8回表、絶対に先頭打者は抑えなければならない場面である。しかし、8番ロウリーに三塁打を打たれてしまう。

センター右を超えていく当たりはワンバウンドでフェンスに到達。マリナーズ守備陣のクッション処理、中継もスムーズとはいかず、悠々三塁を陥落させられてしまった。この後1死は取ったものの、1番レイエスにアウトコース高めに入った所を中前へ同点となるタイムリーを打ち返され、試合は振り出しに。ここで岩隈は降板。出てきたメディーナがその後満塁のピンチを背負い込み、2点適時打をくらったため、岩隈の失点・自責点は2になり、一転、敗戦投手になってしまっている。

この場面、先頭打者に打たれた結果球は失投ではなかった。ストライクゾーンに甘く入った打って下さいと言わんばかりの球ではなかった。それどころか見逃せばボールというアウトコース低めをクサく突いたスライダーだったのだ。手を出してくれば儲けものという見せ球だったのだろう。しかし、これを上手いこと逆方向に運ばれてしまった。これはもう打ったロウリーをただひたすら褒めなければならないのかもしれない。

ただ1点、指摘するなら──終わった後だからこそ後出しジャンケンのように言えることなのだけれども──この日のロウリーは9回の右中間二塁打含めて全4打席、センターから逆方向への当たりを放っていた。岩隈との3打席に渡る対戦はいずれもアウトコース中心の配球だった。2打席目に外いっぱいの球を右前へしっかり弾き返されたように、3打席目の初球アウトコースの球を強振してきたように、外角に目付をしていたのかもしれない。見せ球のシンカーをインコースへ投げ込んでおけば、また違った結末が待っていたかもしれない。

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■試合別投手成績
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5敗目もQS率は66.7%へ

打線の援護に恵まれず、これで5敗目。しかし7回2失点ということでクオリティスタートはマーク。QS率は65.2%から66.7%へと上昇している。

7/20アストロズ戦の5回から始まった連続イニング無自責点も20.1イニングで終止符を打つこととなった。本拠地セーフコ成績は5勝2敗、防御率2.48としている。

■球種別 投球詳細


7回1/3、打者28人、102球(1回当たり13.91、1人当たり3.64)、被安打4、被本塁打0、奪三振2、与四球3、失点2、自責点2。

《初球28球》
右打者12球=4Seam5、Sinker3、Slider3、Curveball1
左打者16球=4Seam5、Sinker5、Splitter1、Curveball5

《2ストライク以降24球》
右打者16球=4Seam7、Slider5、Splitter4
左打者8球=4Seam3、Sinker1、Splitter1、Curveball3

岩隈のコメント「これも野球だと感じる。しっかり投げられた。うまくボール球を見せながら試合をつくることができた。自分の投球を継続できている。ある程度、自信を持ってできている」

被本塁打防止のため、ボールを見せ、シンカー、カーブの割合を増やして対応

実は7回終了時に球数は93球を数えていた。もし8回続投なら100球を超えてくることは確実で、その意味でも8回アタマから交代なのかな?と思われた。しかし、続投。1点差を守り抜くのに信頼に足る投手が岩隈以外にはいないという判断だったのかもしれない。

先頭打者に三塁打を浴びたものの、9番打者をひっかけセカンドゴロに討ち取り1死3塁、ここでトンプソン監督代行がマウンドへ。報道によると、続投の可否を訊かれた岩隈は続投を即答したという。同点打を浴びたのはその直後のことだっただけに「これも野球だと感じる」というコメントになったという。

岩隈がどのような表情を見せてこのコメントを記者陣に残したかは分からない。しかし、字面だけで判断するなら、個人的な受け取り方ではそこに悲壮感はなく、これも野球と逆に野球を楽しんでいるような感じすら受ける。

コメントを見て、もう1つ気になる個所があった。「うまくボール球を見せながら」のくだりだ。前半戦7割越えのストライク率を連発していた岩隈だったが、後半戦は50%台後半から60%台で推移している。少しストライクの割合が減ったのは、本人弾のとおり、被本塁打対策として故意に球を散らしているからなのだろう。

ゴロ率は47.8%と5割を切ったものの、ゴロアウトは獲得アウト22個中のちょうど半分11個を記録。外野ウォーニングゾーン内へ飛ばされた当たりは1本もなく、外野後方がロウリーの3回右直と8回右中三の2本。0-0が続く中、先に失点をすることが許されない展開でしっかり被本塁打を防ぐ投球ができた点は、評価できると思う。8回は先頭打者がロウリーだった巡り合わせの悪さが・・・と言えそうだ。

前回5/4対戦時と比べると、この日はカーブを多投していたことが確認できる。108球投げた前回は4.9%だったその割合が、今回は11.8%へ上昇。速球も前回は4シームでグイグイ攻めたところを(前回57.4%、今回39.2%)、今回はシンカーの割合を多くして対応した(前回4.6%、今回21.6%)。こういった球種割合の変化に、球威で抑え込むのではなく、バットの芯をはずしたり、緩急でタイミングを狂わせたりと、相手打者に対して嫌らしい投球をしようという意図をみることができそうだ。

特にカーブは2ストライク以降の勝負球としての使用も目立った。今年上梓された新著では追い込んでからのカーブはナシと捕手陣とコミュニケーションを取ったというくだりが出てくる。しかし、今日は12球投げたカーブのうち3球が2ストライク以降だった。そして、4回レイエス捕邪飛、5回ラスマス空三振、8回トーリー二ゴと3つのアウトの獲得に成功している。今シーズンここまで、岩隈はカーブを110球投げているが、2ストライク以降に使用したのは僅か16球。そのうち2ストライク以降にカーブを3球以上用いた試合は4/7ホワイトソックス戦、7/14エンゼルス戦に次ぐ3試合目となった。しかし、これほど上々の戦果を挙げることができたのは、今日が初めてだ。

そのカーブだが、左打者に多くを投じていた。下記に今季ここまでとこの試合での左打者球種割合を円グラブにしてみた。一目瞭然だと思う。

やはり、ここまでの戦果を残すことができたのは、低め低めにカーブが決まったそのコントロールが素晴らしかったからなのだろう。

ともあれ、まさにこれが野球という試合にはなったものの、ホームランを浴びることなく好投してQSを1つ積み重ねることができた点は、喜ばしい。前回は前々回登板時から感じていたという首の張りに悩まされたが、今日はそのようなこともなかったようだ。

次戦登板も本拠地。相手は初顔合わせのブルワーズ戦だ。青木との対戦が楽しみである。

2005年以前の対戦結果は調べることができていないものの、2006年以降だと、8打数6安打1本塁打の対戦結果が残っている。2009年と2010年にいずれも4打数3安打を打たれており、NPBではどうやら青木に軍配が上がっていたようだ。はたしてMLBでの初対決では、どちらに軍配が上がるのだろうか?

■配球図
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■試合前時点での2013年vs左打者球種割合


■本試合でのvs左打者球種割合
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■8/5ブルージェイズ戦の球詳細
コースNo.は下記図のとおり。球速はマイル表示

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