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ランニングホームランをくらった岩隈。ありえない味方の緩慢守備に泣く──2012年6月20日ARI戦〔記録で診る岩隈メジャー挑戦録〕

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あれは・・・ないだろう・・・

憤懣やるかたないとは、このことである。誰もがそう思うのではないか。

右中間深くを襲った飛球に対しての中堅手ソーンダースの緩慢守備のことだ。フライボールは背走で追いかけていくソーンダースを越えて左中間フェンスに直撃。ウォーニングゾーンの中まで追いかけすぎたソーンダースを嘲笑うかのように、跳ね返った打球がその足元を鋭く抜けていく。白球がソーンダースが元いた場所、中堅方向にテンテンと転がる。

この間、1塁走者は悠々本塁生還。打者走者のライアン・ロバーツも三塁を蹴って本塁突入を狙う。外野からの中継を挟んだ返球で本塁クロスプレーになるも、気魄のヘッドスライディングでセーフ。なんと!2打点のランニングホームランとなってしまった。


消えていたソーンダース

全くいただけない守備だった。あれがグティエレスならフェンス際で好捕していたかもしれない。あれが昨年まで在籍していた楽天の中堅手・聖澤なら、クッションボールを無難に処理していたはずだ。グティエレスのスーパーキャッチはつい妄想が入ってしまったが、それでも無難に処理し、ニ塁打止まりにしていたのではないか。

しかも、中堅方向へ転がっていった白球を、その後、追いかけて処理し、内野のカットマンに鋭く返球してみせたのは、なんと右翼のイチローだった。いったいソーンダースはどこへいった?!

敵地チェイスフィールドは左中間、右中間に本来あるはずの膨らみがなく直線的な形状になっている。普段対戦がない相手の本拠地球場で守り慣れていない、そういう事情はあったかもしれない。だが、2死1塁だったのだ。あとアウト1個で攻守交代という状況だったのだ。ここは無理をせずにウォーニングゾーンの手前でクッションボールを待ち構えて処理し、ニ塁打止まり、2死3,2塁止まりにすべきだった。確かに難しいクッションボールだったかもしれないが、ウォーニングゾーンの手前で余裕を持った位置取りをしていたら、少なくともランニングホームランという悪夢はなかったはずだ。

岩隈が味方守備の拙守に足をひっぱられたのは、私が確認する限りでは今季2度目である。1度目は5/30TEX戦の9回無死2,1塁で三遊間をゴロで左前へ抜けていったヒットを左翼手のマイク・カープが後逸、これをみて三塁で止まりかけていたニ塁走者が一気に本塁生還したあのシーンだ。しかしアウト・塁状況が、岩隈自らが許してしまった無死2,1塁だった。あの場面、マイク・カープが無難に処理していても、無死満塁とピンチは変わらずで、恐らくその後、かなり高い確率で失点は覚悟しなければならない場面だった。そのため、この試合のソーンダースの拙守が事実上の今季初といえる。


ダイヤモンドバックスとのインターリーグ3連戦を戦うマリナーズ。その最終戦が6/20(日本時間6/21午前中)に行われた。

打ちあいの大味な試合になった。放ったヒットは両軍合計30本。飛び出した一発はマリナーズが2本、敵軍が6本。そのうち5本を先発バルガスが被弾し、1本が件のロバーツが岩隈から記録したランニングホームランとなった。


■岩隈久志 登板日別 投手成績
20120621DATA4.jpg


岩隈は6点ビハインドの6回2死1塁の状況で、三番手としてマウンドに上がった。連投は2度目である。

その最初の打者が7番ロバーツだった。初球ストライクをとって0-1からの2球目だった。ストライクゾーンの真中近辺にシュート回転して外から入っていった約141キロの4シームだった。そこをフルスイングされてしまった、というわけだ。確かに岩隈の球も甘かった。

イニングまたぎで7回も続投となった。先頭打者パーラに内角球をひっぱられ右前に安打を許すものの、後続は討ち取った。1死1塁で2番・ヒルに粘られるものの、最後は名遊撃手ライアンが手ぐすねひいて待ち構えていたショート併殺網にかけて、この回を終わらせた。

試合は8回にマリナーズが4点を返すものの及ばず。スコアSEA10-14ARIで負けている。


■岩隈久志 球種別 投球詳細
20120621DATA2.jpg


1回1/3イニング、打者5人に18球を投げ、被安打2、被本塁打1、失点1、自責点1の内容。数字だけをみれば、2試合連続で被本塁打による失点・自責点がつくかたちとなったが、もしソーンダースが無難な守備をみせていたら、失点することなく6回を切り抜けていたかもしれず、そういう意味では、次の回をしっかりゼロに抑えているだけに、本当に釈然としないマウンドとなった。

この3連戦でマリナーズは30失点した。岩隈は合計2イニング投げ、被安打7、4失点したが、ケリーも2回、被安打4、2失点、ルートキーも1回1/3、被安打3、3失点した。先発陣は言わずもがなの大炎上。これがもし相手打線のバットが湿っていて、他の投手がことごとく好投を演じた中で岩隈の2回4失点だとすると、非常に目立ってしまい、本当にクマったことになってしまうのだが、みんなが打たれている中での2回4失点である。赤信号みんなで渡れば怖くないの格言?どおり、ひときわ目立つという結果ではない状況になったのが、岩隈にとって不幸中の幸いだったかもしれない。(もちろん、そういう状況下でピシャリと抑えればなお良かったのだけれども)


右打者から初の併殺打

収穫は併殺打だ。7回1死1塁で右打者のヒルをショート併殺ゴロに討ちとった。(映像は件のランニングホームランしか確認していないので、なんとも言えないところがあるが)このショートゴロが強い当たりで三遊間、あるいはニ遊間を抜けようかというヒット性のものだったら話は違ってくるが、イージーなゴロだった場合、このショート併殺ゴロは収穫だ。(追記:映像確認。ヒット性ではなく平凡なゴロでした)

というのも、岩隈はこの併殺ゴロを入れて今季5個の併殺打を獲得していきているが、ここまで4個はいずれも左打者から獲得したもので、今回初めて右打者から併殺打を取ることができたからだ。右も左も関係なくゴロを打たせたいときに打たせる、それが岩隈が理想としているピッチングなだけに、その意味で、右打者を併殺網にかけることができたのは、次につながっていくのでは?と考えている。


立ち上がりが悪い岩隈

さて、イニング途中でマウンドに上がって拙守に足をひっぱられて失点・自責点がついてしまった岩隈だが、あの球は甘かった。ランニングホームランとはいかなくても、立ち上がりに浴びた長打は必至だった。

下記にイニング別の投手成績を出してみた。これをみると一目瞭然。マウンドに上がった最初のイニングでの成績がきわめて悪いのだ。1イニング目の被打率は.360、被出塁率は.418、被OPSは1.038。これは・・・アウト!である。


■岩隈久志 イニング別 投手成績
20120621DATA5.jpg


立ち上がりが悪いのは先発投手の場合でもいただけないところだが、救援投手としては非常に致命的である。というのも、後続の投手にマウンドを譲る可能性もあるため、次のイニングは無いかもしれないからだ。長いイニングを打者と駆け引きしながら抑えていく先発とは違って、打者1人1人を全力で抑えていかなければならない救援投手にとって、特に今後も任されるであろう(かな?)重要所での登板では、最初からしっかり抑えていくことが非常に重要だ。

1イニング目の結果が悪いのは6/19ARI戦で2/3イニングで5安打を浴びたからでは?と考える方がいるかもしれない。確かにその影響が大きいのだが、6/19の記録を除外して計算しなおしても1イニング目の被打率は.302、3割を超える数字となっている。シーズン被打率が.270なだけに、1イニング目の被打率がかんばしくないことがお判りいただけるかと思う。

調整方法でコツを掴んだとか、前向きな発言をしている最近の岩隈だが、とはいっても、救援投手としてのプロ人生はまだ13試合26回2/3イニングの経験しかないのだ。プロ12年のうち11年は先発だった。

陸上に例えれば、長らくマラソンの名選手として活躍してきたランナーがいきなり短距離走に転向するようなものなのだ。長い距離を走る筋肉は短い距離を走るのに向いていないという。

技術的にも身体的にも精神的にも、もっともっと吸収すべき点、改善していく点は沢山あるだろうし、まだまだこれからという部分も多いだろうと思っている。実際のところは、当初よりも幾分改善されたものの、マウンドに上がった段階ではまだまだ肩が思うように出来あがっていないのかもしれない。1イニング目が悪い。これは本人も感じ取っているはずで、今後、どのように修正していくか?見守っていきたい。


■岩隈久志 配球図



■岩隈久志 6/20ARI戦 18球の詳細
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