〔試合評〕4回6失点、光が見えない岩隈久志。その53球全詳細 ──2012年3月26日(月)シアトルマリナーズvs巨人
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MLBの今季開幕を日本で戦うシアトルマリナーズは、本日、東京ドームで読売ジャイアンツとの親善試合をおこなった。
先発は昨年まで楽天の岩隈久志。今季からマリナーズの背番号18番を身にまとい、新たな挑戦に挑むクマのピッチングを、日本テレビ系列の地上波で中継観戦した。
その前に、岩隈のオープン戦での登板成績を簡潔に振り返ってみよう。
■シアトルマリナーズ・岩隈久志2011年オープン戦投手成績

◎◎◎参考URL:「野球の記録で話したい」さんより◎◎◎
http://baseballstats2011.jp/archives/3793911.html
http://baseballstats2011.jp/archives/4033850.html
http://baseballstats2011.jp/archives/4322748.html
http://baseballstats2011.jp/archives/4563184.html
マリナーズの先発ローテーション投手を目指して、3/5サンディエゴパドレス戦を皮切りに4試合で登板。合計12イニングを投げ8失点。防御率3.75、1イニング当たり許した走者数を表すWHIPは1.75と、いずれもクマらしくない内容になってしまった。浴びたホームランこそ1本だが、許した二塁打の数が5本と多いのも、らしくないところである。
各種報道をみるに、身上といえる正確無比なコントロールがばらつき、NPBでウイニングショットになっていたフォークの精度も精彩を欠く内容のようで、少し心配だ。
チームを預かるウェッジ監督は、昨年の右肩痛やMLBならではの調整の難しさを挙げ、先日遂に、岩隈を当面は中継ぎ起用する方針転換に踏み切ったのは、皆さんも御存じのとおりである。
さて、本題に入って、巨人打線相手に投げたこの日のピッチングを振り返ってみよう。
下記に対戦打者別のカウント推移、ファウル有無、空振り有無、球速、コース、球種を記した表を作成してみた。
テレビの画面と手元のノートをせわしなく視線を往復させてメモをとったものから作成したため、球速は見間違いがあるかもしれない。球種やコースも咄嗟の判断のため、間違っているかもしれないが、あくまで目安ということで、あらかじめ御了承頂きたい。
■岩隈久志 投球詳細
球種・・・St:ストレート、Sl:スライダー、Sh:シュート、Fo:フォーク、Cur:カーブ


希望の二文字がみえてこない・・・
4回、打者21人に53球を投げて、被安打10、被二塁打1、被本塁打1、与四死球0、奪三振1、6失点、6自責点。
毎回走者の出塁を許しての毎回失点。一言で言ってしまえば、光は見えない、そんなピッチングになってしまった。
1回裏は1番・坂本を追い込んでからアウトローの変化球で空振り三振に切ってとるも、2番・ボウカーに早々にキツイ洗礼弾を浴びてしまった(SEA1-1G)。0-1からの2球目だった。内角を狙った138キロ直球がシュート回転してストライクゾーンど真中に入る失投となる。ボウカーの芯を食った当たりはライナーとなって右翼スタンドに吸い込まれていく。続く3番・長野はライトフライに討ち取ったが、この当たりもウォーニングゾーンの手前、ライト後方まで飛ばされてしまった。
2回裏、村田をバットの芯をはすさせた当たり損ねの三遊間サードゴロに切ってとり、6番・小笠原をレフトフライ(もウォーニングゾーン内まで飛ぶ大きな飛球)に討ち取り2アウトまで漕ぎつけるも、ここから連打を浴びてあっさり1点を失った。7番・高橋由に真中に甘く入った初球ストレートを快打される。一二塁間を完璧に破るライト前ゴロヒットで出塁を許すと、続く8番・矢野にはレフト線深くまで打球をライナーで飛ばされ、これがタイムリーツーベースになってしまう。(SEA1-2G)
矢野の適時二塁打で1点を勝ち越されしまったマリナーズだが、3回表の攻撃で1打席目に先制ソロアーチを放った2番・アグリーのバットが再び火を噴き、右翼フェンス直撃となるスリーベースで出塁。1死3塁のチャンスで打席は3番・イチローにまわり、そのセカンドゴロの間にアグリーが帰り、試合は再び振り出しに戻った。(SEA2-2G)
失点を許した直後、味方がすぐさま取りかえし同点とした3回裏。まずは先頭打者をしっかりアウトにして引き締めていきたいところだったが、叶わず。坂本、ボウカーの1、2番コンビに連打を浴びて、長野の送りバントを挟んで1死3,2塁のピンチを迎えてしまい、バッターボックスは4番・阿部を迎える。
阿部に対しての攻めは理想的だった。1、2球とあのキレのあるフォークが戻ってきて空振りを誘い、追い込むことに成功する。最後はインハイの厳しいストレートを詰まらせて打ち上げさせ、ショートフライに討ち取った。
いよいよクマの本領発揮か?と思いなおしたのもほんの一瞬だった。5番・村田に逆球となってストライクゾーンに甘く入ったストレートをセンター前へ抜けるピッチャー返しを浴び、これが2点タイムリーになる。(SEA2-4G)
4回裏にも4本のヒットを集められ、坂本に2点適時打を浴び、さらに2点を失い、4イニング投げて被安打10、6失点でマウンドを降りた。
被安打の本数が増えていくたびに、マウンドに立っているのは本当にあの岩隈久志投手なのだろうか?という思いを強くした。メジャーのオープン戦でかんばしくない内容が続いていたから、かなり心配していた。しかし、勝手知ったる日本のマウンドである。昨年故障明けの後半戦、本調子と言えない状況の中で、緩急を駆使した投球術とそのネームバリューで試合を作ってみせたあのようなかたちで、巨人打線を抑えてくれるのでは?と淡い期待をしていたのだが・・・
この日、ぼくの調べだと、53球のうちストレートは24球を投げた。平均球速は139.7キロだった。まだまだ本来の球速ではない。球威も感じることができず、制球もストライクゾーン内でことごとく甘かった。そのため、被安打の半数以上がストレートで、それもライナーで打たれている。ということはだ、まるで打撃練習のように巨人打線に気持ち良くバットを振らせてしまった、ということになるのだ。
フォークやスライダーなど変化球も、高く、甘かった。クマのフォークはストライクゾーンからスッとボールゾーンに落ちていく落差の大きいウイニングショットである。この変化量が大事な所で甘くなった。3回2点タイムリーを浴びた村田のセンター前ヒットは、明らかにボールを指に挟んでいた。そのフォークが落ち切らずにストライクゾーンの中で変化したところを打たれてしまったのだ。
解説・桑田真澄氏は、捕手にも問題があると指摘する。例えば前述の村田、追い込んでからフォークを打たれた場面だ。日本の捕手ならしっかりボールゾーンにミットを構えてくるという。しかし、向こうの捕手はストライクゾーン内で構える傾向があるのだと指摘していた。結果、ミットのとおりに投げようとすると、甘く入ってしまうことにつながるという趣旨である。
確かにそれも大いにあるだろう。また、この日マスクをかぶったモンテロは今季ヤンキーズから移籍したばかりの経験に乏しい若手捕手だ。守備に不安を抱え、昨年はヤンキーズで主にDH起用されていた22歳のキャッチャーである。そういう事情も、4回6失点のピッチングに悪影響を与えたかもしれない。
しかし、やっぱり、クマの状態が悪いと判断するのが、どうやら真相に最も近いのでは?と思う。
いろいろあるチェックポイントの中で、1、2箇所が具合が悪い、というわけではない。
全てのチェックポイントで不具合が生じている、というイメージになってくる。
このままの状態でシーズンに入り中継ぎで出ていったとしても、残念ながら早晩ボロが出てしまうのでは?と不安になってくる。ウェッジ監督の判断も、短いイニングならごまかすことができるのでは?という消去法から出た決断だったと思う。
今季、クマの黒のグローブには「希望」の二文字が縫い付けられている。
その刺繍は金糸で黒皮の上で燦然と輝いている。
しかし、残念ながら、久しぶりに見たクマのピッチングからは、「希望」が感じられなかった。
自ら望んで海を渡り、開けた新挑戦の扉のはずだ。
なんとかして立ち直ってほしい!
再びあの周囲を惚れ惚れとさせる芸術的なピッチングを魅せてほしい!
そう強く強く願わずにはいられない!
【終】
◎◎◎関連記事◎◎◎
・〔記録〕マリナーズ入りの楽天・岩隈久志、MLBでの活躍に不安を残す「あるデータ」とは?(2012.1.6)
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MLBの今季開幕を日本で戦うシアトルマリナーズは、本日、東京ドームで読売ジャイアンツとの親善試合をおこなった。
先発は昨年まで楽天の岩隈久志。今季からマリナーズの背番号18番を身にまとい、新たな挑戦に挑むクマのピッチングを、日本テレビ系列の地上波で中継観戦した。
その前に、岩隈のオープン戦での登板成績を簡潔に振り返ってみよう。
■シアトルマリナーズ・岩隈久志2011年オープン戦投手成績

◎◎◎参考URL:「野球の記録で話したい」さんより◎◎◎
http://baseballstats2011.jp/archives/3793911.html
http://baseballstats2011.jp/archives/4033850.html
http://baseballstats2011.jp/archives/4322748.html
http://baseballstats2011.jp/archives/4563184.html
マリナーズの先発ローテーション投手を目指して、3/5サンディエゴパドレス戦を皮切りに4試合で登板。合計12イニングを投げ8失点。防御率3.75、1イニング当たり許した走者数を表すWHIPは1.75と、いずれもクマらしくない内容になってしまった。浴びたホームランこそ1本だが、許した二塁打の数が5本と多いのも、らしくないところである。
各種報道をみるに、身上といえる正確無比なコントロールがばらつき、NPBでウイニングショットになっていたフォークの精度も精彩を欠く内容のようで、少し心配だ。
チームを預かるウェッジ監督は、昨年の右肩痛やMLBならではの調整の難しさを挙げ、先日遂に、岩隈を当面は中継ぎ起用する方針転換に踏み切ったのは、皆さんも御存じのとおりである。
さて、本題に入って、巨人打線相手に投げたこの日のピッチングを振り返ってみよう。
下記に対戦打者別のカウント推移、ファウル有無、空振り有無、球速、コース、球種を記した表を作成してみた。
テレビの画面と手元のノートをせわしなく視線を往復させてメモをとったものから作成したため、球速は見間違いがあるかもしれない。球種やコースも咄嗟の判断のため、間違っているかもしれないが、あくまで目安ということで、あらかじめ御了承頂きたい。
■岩隈久志 投球詳細
球種・・・St:ストレート、Sl:スライダー、Sh:シュート、Fo:フォーク、Cur:カーブ


希望の二文字がみえてこない・・・
4回、打者21人に53球を投げて、被安打10、被二塁打1、被本塁打1、与四死球0、奪三振1、6失点、6自責点。
毎回走者の出塁を許しての毎回失点。一言で言ってしまえば、光は見えない、そんなピッチングになってしまった。
1回裏は1番・坂本を追い込んでからアウトローの変化球で空振り三振に切ってとるも、2番・ボウカーに早々にキツイ洗礼弾を浴びてしまった(SEA1-1G)。0-1からの2球目だった。内角を狙った138キロ直球がシュート回転してストライクゾーンど真中に入る失投となる。ボウカーの芯を食った当たりはライナーとなって右翼スタンドに吸い込まれていく。続く3番・長野はライトフライに討ち取ったが、この当たりもウォーニングゾーンの手前、ライト後方まで飛ばされてしまった。
2回裏、村田をバットの芯をはすさせた当たり損ねの三遊間サードゴロに切ってとり、6番・小笠原をレフトフライ(もウォーニングゾーン内まで飛ぶ大きな飛球)に討ち取り2アウトまで漕ぎつけるも、ここから連打を浴びてあっさり1点を失った。7番・高橋由に真中に甘く入った初球ストレートを快打される。一二塁間を完璧に破るライト前ゴロヒットで出塁を許すと、続く8番・矢野にはレフト線深くまで打球をライナーで飛ばされ、これがタイムリーツーベースになってしまう。(SEA1-2G)
矢野の適時二塁打で1点を勝ち越されしまったマリナーズだが、3回表の攻撃で1打席目に先制ソロアーチを放った2番・アグリーのバットが再び火を噴き、右翼フェンス直撃となるスリーベースで出塁。1死3塁のチャンスで打席は3番・イチローにまわり、そのセカンドゴロの間にアグリーが帰り、試合は再び振り出しに戻った。(SEA2-2G)
失点を許した直後、味方がすぐさま取りかえし同点とした3回裏。まずは先頭打者をしっかりアウトにして引き締めていきたいところだったが、叶わず。坂本、ボウカーの1、2番コンビに連打を浴びて、長野の送りバントを挟んで1死3,2塁のピンチを迎えてしまい、バッターボックスは4番・阿部を迎える。
阿部に対しての攻めは理想的だった。1、2球とあのキレのあるフォークが戻ってきて空振りを誘い、追い込むことに成功する。最後はインハイの厳しいストレートを詰まらせて打ち上げさせ、ショートフライに討ち取った。
いよいよクマの本領発揮か?と思いなおしたのもほんの一瞬だった。5番・村田に逆球となってストライクゾーンに甘く入ったストレートをセンター前へ抜けるピッチャー返しを浴び、これが2点タイムリーになる。(SEA2-4G)
4回裏にも4本のヒットを集められ、坂本に2点適時打を浴び、さらに2点を失い、4イニング投げて被安打10、6失点でマウンドを降りた。
被安打の本数が増えていくたびに、マウンドに立っているのは本当にあの岩隈久志投手なのだろうか?という思いを強くした。メジャーのオープン戦でかんばしくない内容が続いていたから、かなり心配していた。しかし、勝手知ったる日本のマウンドである。昨年故障明けの後半戦、本調子と言えない状況の中で、緩急を駆使した投球術とそのネームバリューで試合を作ってみせたあのようなかたちで、巨人打線を抑えてくれるのでは?と淡い期待をしていたのだが・・・
この日、ぼくの調べだと、53球のうちストレートは24球を投げた。平均球速は139.7キロだった。まだまだ本来の球速ではない。球威も感じることができず、制球もストライクゾーン内でことごとく甘かった。そのため、被安打の半数以上がストレートで、それもライナーで打たれている。ということはだ、まるで打撃練習のように巨人打線に気持ち良くバットを振らせてしまった、ということになるのだ。
フォークやスライダーなど変化球も、高く、甘かった。クマのフォークはストライクゾーンからスッとボールゾーンに落ちていく落差の大きいウイニングショットである。この変化量が大事な所で甘くなった。3回2点タイムリーを浴びた村田のセンター前ヒットは、明らかにボールを指に挟んでいた。そのフォークが落ち切らずにストライクゾーンの中で変化したところを打たれてしまったのだ。
解説・桑田真澄氏は、捕手にも問題があると指摘する。例えば前述の村田、追い込んでからフォークを打たれた場面だ。日本の捕手ならしっかりボールゾーンにミットを構えてくるという。しかし、向こうの捕手はストライクゾーン内で構える傾向があるのだと指摘していた。結果、ミットのとおりに投げようとすると、甘く入ってしまうことにつながるという趣旨である。
確かにそれも大いにあるだろう。また、この日マスクをかぶったモンテロは今季ヤンキーズから移籍したばかりの経験に乏しい若手捕手だ。守備に不安を抱え、昨年はヤンキーズで主にDH起用されていた22歳のキャッチャーである。そういう事情も、4回6失点のピッチングに悪影響を与えたかもしれない。
しかし、やっぱり、クマの状態が悪いと判断するのが、どうやら真相に最も近いのでは?と思う。
いろいろあるチェックポイントの中で、1、2箇所が具合が悪い、というわけではない。
全てのチェックポイントで不具合が生じている、というイメージになってくる。
このままの状態でシーズンに入り中継ぎで出ていったとしても、残念ながら早晩ボロが出てしまうのでは?と不安になってくる。ウェッジ監督の判断も、短いイニングならごまかすことができるのでは?という消去法から出た決断だったと思う。
今季、クマの黒のグローブには「希望」の二文字が縫い付けられている。
その刺繍は金糸で黒皮の上で燦然と輝いている。
しかし、残念ながら、久しぶりに見たクマのピッチングからは、「希望」が感じられなかった。
自ら望んで海を渡り、開けた新挑戦の扉のはずだ。
なんとかして立ち直ってほしい!
再びあの周囲を惚れ惚れとさせる芸術的なピッチングを魅せてほしい!
そう強く強く願わずにはいられない!
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