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【書評】 大坪正則 著『パ・リーグがプロ野球を変える 6球団に学ぶ経営戦略』(朝日新書)

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■大坪正則 著『パ・リーグがプロ野球を変える 6球団に学ぶ経営戦略』
(朝日新書 777円 2011年3/11発売)


「これからは、パ・リーグです」

皆さん御存じのように、球界再編劇の真っ只中、新庄剛志が断言した名言だ。あれから早くも7年が経とうとする現在、その予言どおり、プロ野球ではパリーグの魅力は年々増加の一途をたどっている。そしてそれは、昨今の開幕問題に象徴されるように、今や球界の力学をも徐々にではあるが変えようとしている(ように見える)。

このことは、ここ数年熱パの混戦模様に舌鼓を打つ僕のようなファンでなくても、多くのセリーグファンも認めるところに違いない。(蛇足を付け足すと、プロ野球に関心のないウチの母親がロッテの今江を知っていることだけでも、ほんと驚きである)

ところで、2004年以降の僅か7年間で、なぜプロ野球はパリーグの時代に突入したのか?

この問いにしっかり答えることができるプロ野球ファンは、実は意外と少ない。贔屓球団の経営努力や球団経営の課題点をそれなりに知っていたとしても、その情報は案外虫食い状態だったりする。プロ野球にあまりなじみのない第三者に説明するとき、自分では判っているつもりでいても、上手く言葉が出てこなかったりする。

例えば、良く言われるのは、パリーグ各球団は地域密着に成功しつつあるから、という主張だ。しかし、なぜ地域密着でなければならないのか?これを理論的に説明することができるファンは10人のうち何人いることだろう? 

このような問いに平易に答えてくれる良書が、このたび出版された。

著者はスポーツ経営学の専門家、大坪正則氏だ。氏は米国駐在歴も長く、長年NBA(全米プロ・バスケットボール協会)のプロジェクトマネジャーの職にあった方で、東京ヤクルトスワローズの経営コンサルタント歴も持つ。現在は帝京大学経済学部の教授として鞭を執る、その畑の第一人者なのだ。

240ページを下記の5つの章立てで構成。メインとなるのは、2004年球界再編以降今日までパリーグ全体、各球団が取り組んできた経営改革の話だ。ここに焦点を置きつつ、過去を捉え、未来にむけて幾つかの提言を行っている。頭の中を整理したい方には打ってつけの、そんな内容だ。

第1章:ストライキ前のパ・リーグ──低迷の時代
第2章:改革が進むパ・リーグ──黒字化の道筋が見えた
第3章:プロリーグ経営の共通認識──球団収入を伸ばすために
第4章:プロ野球経営の常識──次の第1歩はここから始まる
第5章:パ・リーグの将来戦略──6球団で取り組むべき「挑戦」


もう少し、幾つかにわたって細かく本書の内容を説明していきたい。

2004年の再編前夜、パリーグはどこも赤字経営を強いられてきた。球団経営=赤字が約半世紀以上にわたり常態化していた。セも一部球団を除き同様だったが、セと違いテレビ放映権料が見込めないパは6球団全て多額の赤字を抱えていた。さらに、この体質を容認させてきたのは、良く言われることだが、プロ野球チームは親会社の広告塔という位置づけだったからだ。親会社の業績に一役買ってくれれば借金を垂れ流すのもまあ仕方ない。そんな認識があった。それを法律の面で裏付けていたのが、1954年の国税庁通達「職業野球団に対して支出した広告宣伝費等の取扱について」になる。球団の赤字を親会社が広告宣伝費で穴埋めすることを良しとしたお墨付きであり、これがあるから球団経営に乗り出したと言ってのける幹部もいたと本書にはある。

パリーグ球団の純利益 (本書31頁より)


しかし、激動の2004年を経て、球団経営の意識は変わった。

2003年の数字は赤字補填される前か後なのかは判らない。2009年は補填後の純利益である。しかし、2004年を機に従来型の赤字放漫経営は許されなくなった。本書の言葉を借りれば「2009年度の決算も親会社からの補填を“当然”と捉えていないことは確かである」のだ。

でも、何故そのように認識が変化したのだろう?

もちろん長く低迷する日本経済が大きな背景にあることは当然。本書ではさらに突っ込んで、その意識の変化を2000年3月期から企業に導入された連結会計制度にある、と指摘する。それまでは親は親、子は子でそれぞれ決算を行っていたものを、親子ひっくるめたグループ全体で決算報告を行うことになった。フタをして隠していた臭いものの実態が白日の下に晒されることとなり、プロ野球チームを抱える親会社の多くも球団経営のありかたを見直せざるを得なくなった、と説く。氏がヤクルトから声をかけられたのも、ちょうどこのタイミングだったと述懐している。

(日本ハムは札幌移転を契機に広告宣伝費の額を予算化、このことによって、親会社からの過度な赤字補填を抑制することに成功している)

ピンチはチャンスに変えることができたのはパリーグだった。でも、何故セではなくパだったか?

これに大きな役割を果たしたのが幾つかある。そのうちの1つが、パリーグ社長会が立ちあげた権利会社、パシフィックリーグマーケティング(Pacific League Marketing=PLM)だった。設立の背景には、IT企業の参入により、ネット動画配信という新収入が誕生した。その旨みを巨人戦放映権料のように一部の球団に握られてしまうことをパリーグ全体が良しとしなかった点である。

この設立背景には、パリーグが6球団全て赤字という共通の境遇下に置かれていた点が大きい。さらに、2004年に日本ハムが本拠地を札幌に移転したため、地域市場の中でお互い競合・対立することがなくなった点も大きい。そして、幾つかの球団は親会社の広告塔の意味あいを失っているため、なるべく早くに黒字化しなければならない、そういう運命の下に立っていたのも大きい、と説く。

(本書では第5章で球界改革の一歩となるPLMのさらなる役割(具体的に言えば、MLB等のアメリカプロリーグのコミッショナー事務局の役割を担うべきだと主張)についても言及している)

球団の収入と支出の主要項目 (本書136頁より)


さらに、強力な希望の星が現れる。楽天の初年度黒字経営である。

楽天が真っ先に行ったのは、既存の球団がいびつな関係にさせたままでいた球団と球場の関係を改めたことだった。県立宮城球場の改修費を球団側が負担する見返りとして宮城県から球場内の営業権の譲渡を受けることに成功、これにより球場内の飲食販売・グッズ販売・広告看板収入等が球団側に入る。その道筋をつけた。

(よく知られていることだが、横浜は(株)横浜スタジアムに年間8億円の球場使用料を払い、球場内営業権を握られたままでいる。このいびつな関係が横浜の球団経営を悪くさせている、と指摘されている。一方、タイガースが黒字経営だった理由の1つに、甲子園球場の球場使用料が発生していない点も今まで挙げられてきた(現在、改修したのでどうなっているか?は判らない))

本書はこの「球団と球場の経営の一体化」実現のが楽天の初年度黒字の最大要因だったとし、それは球団経営史において、ボストンの茶会やバスティーユの監獄襲撃と同じ効果だったと高く評価している。(そして「球団と球場の経営の一体化」実現のために欠かせないのが地域市場の掘り起こし、地域密着なのである)

以降、パリーグ各球団では「球団と球場の経営の一体化」を合言葉にし、球団経営改革に取り組んできた。

日本ハムは本拠地を東京ドームから札幌ドームに移すことで球場使用料の削減に成功、千葉ロッテは2006年に球界初の指定管理者に選ばれ、オリックスは2005年に会社更生法を申請していた大阪ドームを格安で買収することに成功する。ソフトバンクもダイエー買収時に当時福岡ドームを所有していたコロニーキャピタルから球場内の営業権を150億円で購入。

このようにパリーグの各球団は黒字経営の第一歩となる「球団と球場の経営の一体化」をそれぞれ推し進めていくことに成功した(下記表参照)。

球場営業権の変化 (本書135頁より)


本書は240頁のうちじつに96頁の紙幅を、球団別の経営努力について割いている。時系列を追うかたちで記されており、それぞれ改善点と課題点を併記している点も読みどころの1つだ。

例えば、日本ハムはストライキ中に行われた2004年9/18の札幌駅でのサイン会がその後の大きな転換点とし、GM制度やメンタルトレーニング、選手評価のベースボール・オペレーション・システム等の導入について触れている。ソフトバンクの項目では、スポーツ経営に明るくないと思われる孫オーナーが球団経営の全責任を“世界の王”に権限移譲したことが大きかったと述べている。

(例えば、オリックスが外国人選手やFA補強に頼るチーム体質になってしまったのは何故か?とか西武の本拠地大宮への移転はあるのか?バレンタイン騒動の功罪等かねてから抱えていた読者の疑問にも解決の一助を与える記述がある)

さらに、第4章「プロ野球経営の常識──次の第1歩はここから始まる」では、米国のプロスポーツ事情にも相当詳しく豊富な経験を持つ経営の第一人者の立場から、

・戦力均衡か自由競争か?
・1リーグ制か、2リーグ制か?
・クライマックスシリーズは必要か?
・選手年俸は高いか?
・完全ウェーバー制のドラフトを採用すべきか?
・ポスティング制度は必要か?
・球団は上々すべきか?
・新参加球団から預かる保証金は必要か?
・他球団の株式所有は厳格に規制すべきか?


について、きわめて論理的に丁寧に解説している。僕らファンだとここにそれぞれの感情論が入り混じって収拾がつかなくなることが多々あるが、本書の冷静な語り口は読み手に感情論を排したほどよい論理的な思考を促してくれる。

2004年~2010年のパリーグを中心に俯瞰し、過去を捉え、未来を見据える点では最適な新書だと思う。

気になった方は是非書店の店頭で本書をめくって中身をチェックしてみて下さい。

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