各種データやスタッツで診る楽天の新外国人ジョニー・ゴームズ Jonny Gomesの現在地
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自分で言うのもナンですが、入魂の内容です。コボスタで6回裏にタコ焼き買ったという気分で是非読んで見て下さい。各々1選手分のみサンプル公開中。試読頂けます。
◎藤田一也、阿部俊人、長谷部康平、釜田佳直、西宮悠介、牧田明久、下妻貴寛、ルシアノ・フェルナンド、加藤正志
◎中川大志、嶋基宏、武藤好貴、森雄大、今江敏晃、相沢晋、宮川将、大塚尚仁、岩崎達郎、小関翔太
◎青山浩二、キャム・ミコライオ、内田靖人、松井稼頭央、入野貴大、茂木栄五郎、ジェイク・ブリガム、銀次、枡田慎太郎、相原和友
楽天、ジョニー・ゴームズと契約合意
ジョニー・ゴームズが楽天にやってくる。
この報道には心底驚いた。
というのは、楽天の総年俸は現時点で約23億円。ここに今江金銭補償を足すと、24億6000万になる。この額は昨年の総年俸(約24億5000万円)に相当し、シーズン中の緊急補強はあっても、開幕前の補強はこれ以上難しいのでは?と見ていたからだ。お恥ずかしいことに、私の見立ては完全に検討違いだったようだ。
報道によると、ゴームズは約2万ドル(約2億3000万円)+出来高の1年契約というので、今季の総年俸は25億3000万、今江補償分を含めると26億9000万になる。ユーキリス獲得で29億円まで達した2014年までは行かずも、楽天にしてはかなりのペイロールになってくる。
所属したチームの多くがプレーオフ進出、ワールドシリーズを制覇することから「優勝請負人」とも、16歳の時は同乗者が死去する自動車事故に遭い、22歳のときは原因不明の心臓発作に見舞われたことから「死の淵から2度生還した男」とも呼ばれるジョニー・ゴームズ。
理想を言えば初V時のマギー(WAR5.1)やAJ(WAR3.7)のような傑出した活躍を期待したいところだが、最低限求められるのは、2014年のAJ(WAR2.3)、昨年のペーニャ(WAR2.8)の穴を埋める働きである。
今年11月で36歳を迎えるゴームズの現在地はどこにあるのだろう?
以下でこのことを確認してみたい。
(下記に続く)
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■Jonny Gomes ジョニー・ゴームズ MLB 年度別 打撃成績 その1

■Jonny Gomes ジョニー・ゴームズ MLB 年度別 打撃成績 その2

■年度別 Plate Discipline
※fangraphsのPITCHf/x Plate Disciplineより

昨年はブリガムと同じ釜の飯を食い、8/28ヤンキース戦では投手として登板も
メジャー13年間の通算スラッシュラインは.242/.333/.436、OPS.769を記録している。
昨年はアトランタブレーブスで開幕を迎え、8月31日にその後ワールドシリーズチャンピオンに輝いたカンザスシティロイヤルズへ移籍した。ブレーブスでは8月9日マーリンズ戦で三ゴを打ったが、その時の敵軍三塁手がマギーで、4-15の大敗を喫した8月28日ヤンキース戦(田中が先発して10勝目を挙げたゲーム)では9回1イニング、投手として登板。20球を投げて被安打3、被本塁打1、奪三振1、2失点という成績だった。また、翌々30日のヤンキース戦には同じく今季から楽天でプレーするジェイク・ブリガムと共に出場している。
守備位置は外野もしくはDHになりそうだ。外野は右翼もできるが、恐らく左翼起用だろう。だとすればウィーラーとかち合わせになる可能性が多く、ウィーラー(や枡田ら)の尻を叩く上でもゴームズの獲得は効果あるのでは?と思っている。
2011年以降、打撃スタイルが変化。待球姿勢へ
注目したいのは出塁率と打率の差異、IsoDだ。
.091を記録した通算の数字も見事ながら、三十路に突入した頃から2011年の.116を皮切りに、.115、.097、.093、.100と驚異の1割超えを見せるシーズンが目立つ。このため、打席に占める四球率も2011年以降10%超えを記録しており、数多くの四球で1塁に歩くことができるタイプと言えそうだ。
選球眼を見る最有力な指標、ボールゾーンスイング率。この数値も2011年から急激に改善に向かっている。昨年はMLB平均値が30.4%の中、ゴームスのそれは遂に20.4%まで到達した。
2011年を機に変化したと言えば、ストライクゾーンスイング率も挙げられる。それまでは63.6%以上を記録していた数値が、2011年以降は55.9%以下、昨年は50.9%だった。ストライクゾーンの枠内に投じられた投球の2球に1球を見送っている計算になるのだ。
初球スイング率がMLB平均28.6%の中、ゴームズは僅かに19.1%だったこと等と合わせると、齢と経験を重ねて30歳以降に到達した近年のゴームズは、円熟味のある待球姿勢のアプローチで、MLBで戦ってきたことがよく理解できるスタッツと言えそうだ。
AJと枡田と足して2で割ったような感じ?!
一方、三振は例年多い。打撃スタイルが変化した2011年以降でも、打席に占める三振の割合、三振率は28.2%を締め、約3打席に1打席は三振に倒れるほどの高頻度になっている。これは、徹底した待球姿勢によるため追い込まれるケースが多いこと、自身の中で確固としたストライクゾーンを持っているため、あるいは配球などを読んで捨てているコースもあるためなのか、見逃し三振が多いことが挙げられる。
実際、昨年喫した81個の三振で、見逃し三振は全体の33.3%に当たる27個と大変多く占めていた。その27個中5個は1度もバットを振らずに3球三振に倒れた見三振だった。
楽天ではAJのように足繁く1塁にお散歩する姿と、(三振66個中30個の見三振を記録した2014年の)枡田慎太郎のように見逃し三振でベンチに帰ってくる姿、両方を見せるかもしれない。もしそうなっても、我々ファンは、高い出塁率を創出する"副作用"として容認して観戦する必要はありそうだ。
ウィークポイントを埋める「左投手キラーのフライボールヒッター」
ゴームズに期待したい所は、左投手に強いフライボールヒッターという点だ。
ここは非常に大事なところで、昨年楽天打撃陣のゴロ率48.2%はリーグ5位と多く、同左投手打率は.229と散々だったからだ。
《参照》敵軍サウスポーを打ち崩せず... ガタ減りした楽天打者の左投手打率(2015/10/20)
ゴームスのゴロ率は昨年38.1%と前年比12.1%増になってしまったのが気になる所ではあるものの、MLB通算は30.2%。打球の約半分がフライ、約2割でライナーを打ってきた打者で、またBABIPも例年波が少なく安定しているため、バットに球が当たりインプレーになった場合は期待ができる右打者と言えそうだ。
また、その左投手通算打率は、右投手.221を上回る.273。同OPSも右の.712を超過する.855という素晴らしい数字を残しており、ゴームズ獲得は楽天の「打」のウィークポイントを埋めるポテンシャルを秘めているのだ。
下記に左右投手別の成績を掲げたので、ご参照頂きたい。
■vs左投手 年度別 打撃成績

■2015年 vs左投手 球種別 打撃成績

左投手の速球に強く、チェンジアップに弱い
昨年もジャイアンツのマディソン・ガムバーナーから2本のヒットを放つなどサウスポーに強いゴームズだが、加齢による衰えなのか、数年前の29歳~32歳の頃に見せてきた強烈な打棒は、今は影を潜めつつある。
昨年の左投手打率.227は2005年以降ワースト2位。ただ、これは徹底した待球姿勢で臨んだため、三振が増えてしまったことによる"副作用"だ。(その一方で四球も大幅に増やしている)。失投を打ち抜いた時の長打力は健在で、左腕相手に5本の一発を放ったこと、前述した四球増等もあり、OPSは前年を上回る.783を記録している。
球種別ではサウスポーの速球に強くOPS/打率は.802/.260)、スライダーやカッターなど曲がる球には率こそ低いものの一発攻勢でOPSは.954を記録。
一方、弱点はスプリッターやチェンジアップなど落ちる球やカーブになる。特に左投手が投げてくるチェンジアップ(右打者視点ではアウトコースに逃げながら落ちる軌道を描く)にはカラッキシで、スイングしにいった21球中17球が実に空振りを喫していた。
次に右投手対戦時のデータを確認しよう。
■vs右投手 年度別 打撃成績
※MLB Gamedayから採取

■2015年 vs右投手 球種別 打撃成績
※MLB Gamedayから採取

右投手が投げる綺麗な真っすぐに強く
ツーシームなど動く速球やスライダーに弱い
MLBで左キラーとして活躍してきたゴームズだが、右投手は苦手としており、MLB13年間で同OPSが8割以上を記録したのは2005年、2009年の2シーズンのみに止まった。(ちなみに左投手では7シーズンあった)
昨年は.203/.261/.297、OPS.558だった。打撃スタイルを変えた2011年を頂点に、右投手IsoD、同ISOが年々下落傾向にあり、近年は左投手対戦時に数多くの四球を選ぶ一方、右投手対戦時には数多くの三振を喫してしまう、左右で明暗分かれる結果に拍車がかかっている。
球種別では、特にこれといった鉄板の得意球がない。
左投手時には強さを見せていた速球もOPS/打率は.631/.232。
ただ、これ、もっと細かく、4シーム(いわゆる後者と比べて動かない速球)と動く速球(2シームやシンカー)で見ると
4シーム .819/.304
2シーム、シンカー .247/.087
となっており、右投手が動かしてくる速球(恐らく右打者のインコースに食い込んだり、膝元や低めに沈んだりする速球だろう)に苦戦しているものの、NPBでは多くなるだろう右投手の綺麗な真っすぐには強さを発揮している。
苦手な球種は、右投手が投げる曲がる球で、中でも右投手のスライダーには昨年完全にお手上げ状態だった。バットをスイングしにいった34球中、実に70.6%に当たる24球でバットが空を切る形になった。
最後に配球の話をしよう。
■2013-2015年 vs右投手 打球マップ
※fangraphsより
右投手対戦時のゴロ打球は三塁線~三遊間が圧倒的に多くなっており、一塁線のゴロはこの3年間1本も記録されていない。このような極端な傾向がNPBでも継続されてしまうと、サードは三塁線を締め、ショートはサード寄りの三遊間を守り、セカンドは2塁ベース近くに陣取るゴームズシフトを敷かれるリスクが生じる。

配球の差異にアジャストできるか?!
NPBにやって来る外個人打者が乗り越えなければならない大きな壁の1つに、NPBならではの配球がある。2013年当時、AJとマギーはお互いの家を行き来しながら、初めて見るNPBの対戦投手の持ち球や配球について熱く議論を交わすなど、熱心な研究、事前準備の成果も、両人の好活躍を支えていたのは有名な話だ。
一方、それにアジャストできず苦しんだのが、昨年のサンチェスとウィーラーと言えそうだ。
下記に主な外国人打者の球種割合(=相手投手が投げ込んできた球種割合)を棒グラフにして表してみた。
これを見ても分かるように、NPBでは50%以上が変化球になる。一方、昨年のゴームズは変化球が40.7%だった。MLBと比べて変化球が10%増になるイメージで、MLBよりも落ちる球、カーブの割合も増え、緩急で揺さぶりをくらうことが予想される。

■初球の球種割合

「幸運の置物」としての期待も
上表にまとめてみたが、初球の入り方も、NPBとMLBでは大きく異なる。
MLBではゴームスが得意とする速球で入ってくることが多いのに対して、NPBでは外国人打者に初球速球で入るケースは50%にも満たない。時にはウイニングショットの落ちる球で入ってくることさえ、MLB以上に多くのシーンで見かける。
このような配球の差異に対応できるか?が、ゴームズが2014年AJ、昨年ペーニャの穴埋め以上の活躍ができるか?のカギになりそうだ。
最悪、全く活躍できずとも、楽天が3年ぶりにAクラス入りがなれば、「幸運の置物」として使命を全うしたという評価をしても良いかもしれない。【終】
◎◎◎関連記事◎◎◎
・個性派揃いの楽天新外国人。体重より心配、アマダーの打撃は通用するか(ベースボールチャンネル)
・楽天の2016新外国人補強第3弾はジェーク・ブリガム投手。ケイシー・マギーを凡退させた長身右腕の実力いかに?!
・楽天、2013年韓国最多奪三振のドミニカ右腕ラダメス・リズと契約間近。課題は制球面も、剛速球はダルビッシュ級?!

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1月2月大好評のshibakawa責任編集「--東北は日の出を待っている-- 犬鷲選手名鑑2016」、noteでも展開中!!
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楽天、ジョニー・ゴームズと契約合意
ジョニー・ゴームズが楽天にやってくる。
この報道には心底驚いた。
というのは、楽天の総年俸は現時点で約23億円。ここに今江金銭補償を足すと、24億6000万になる。この額は昨年の総年俸(約24億5000万円)に相当し、シーズン中の緊急補強はあっても、開幕前の補強はこれ以上難しいのでは?と見ていたからだ。お恥ずかしいことに、私の見立ては完全に検討違いだったようだ。
報道によると、ゴームズは約2万ドル(約2億3000万円)+出来高の1年契約というので、今季の総年俸は25億3000万、今江補償分を含めると26億9000万になる。ユーキリス獲得で29億円まで達した2014年までは行かずも、楽天にしてはかなりのペイロールになってくる。
所属したチームの多くがプレーオフ進出、ワールドシリーズを制覇することから「優勝請負人」とも、16歳の時は同乗者が死去する自動車事故に遭い、22歳のときは原因不明の心臓発作に見舞われたことから「死の淵から2度生還した男」とも呼ばれるジョニー・ゴームズ。
理想を言えば初V時のマギー(WAR5.1)やAJ(WAR3.7)のような傑出した活躍を期待したいところだが、最低限求められるのは、2014年のAJ(WAR2.3)、昨年のペーニャ(WAR2.8)の穴を埋める働きである。
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昨年はブリガムと同じ釜の飯を食い、8/28ヤンキース戦では投手として登板も
メジャー13年間の通算スラッシュラインは.242/.333/.436、OPS.769を記録している。
昨年はアトランタブレーブスで開幕を迎え、8月31日にその後ワールドシリーズチャンピオンに輝いたカンザスシティロイヤルズへ移籍した。ブレーブスでは8月9日マーリンズ戦で三ゴを打ったが、その時の敵軍三塁手がマギーで、4-15の大敗を喫した8月28日ヤンキース戦(田中が先発して10勝目を挙げたゲーム)では9回1イニング、投手として登板。20球を投げて被安打3、被本塁打1、奪三振1、2失点という成績だった。また、翌々30日のヤンキース戦には同じく今季から楽天でプレーするジェイク・ブリガムと共に出場している。
守備位置は外野もしくはDHになりそうだ。外野は右翼もできるが、恐らく左翼起用だろう。だとすればウィーラーとかち合わせになる可能性が多く、ウィーラー(や枡田ら)の尻を叩く上でもゴームズの獲得は効果あるのでは?と思っている。
2011年以降、打撃スタイルが変化。待球姿勢へ
注目したいのは出塁率と打率の差異、IsoDだ。
.091を記録した通算の数字も見事ながら、三十路に突入した頃から2011年の.116を皮切りに、.115、.097、.093、.100と驚異の1割超えを見せるシーズンが目立つ。このため、打席に占める四球率も2011年以降10%超えを記録しており、数多くの四球で1塁に歩くことができるタイプと言えそうだ。
選球眼を見る最有力な指標、ボールゾーンスイング率。この数値も2011年から急激に改善に向かっている。昨年はMLB平均値が30.4%の中、ゴームスのそれは遂に20.4%まで到達した。
2011年を機に変化したと言えば、ストライクゾーンスイング率も挙げられる。それまでは63.6%以上を記録していた数値が、2011年以降は55.9%以下、昨年は50.9%だった。ストライクゾーンの枠内に投じられた投球の2球に1球を見送っている計算になるのだ。
初球スイング率がMLB平均28.6%の中、ゴームズは僅かに19.1%だったこと等と合わせると、齢と経験を重ねて30歳以降に到達した近年のゴームズは、円熟味のある待球姿勢のアプローチで、MLBで戦ってきたことがよく理解できるスタッツと言えそうだ。
AJと枡田と足して2で割ったような感じ?!
一方、三振は例年多い。打撃スタイルが変化した2011年以降でも、打席に占める三振の割合、三振率は28.2%を締め、約3打席に1打席は三振に倒れるほどの高頻度になっている。これは、徹底した待球姿勢によるため追い込まれるケースが多いこと、自身の中で確固としたストライクゾーンを持っているため、あるいは配球などを読んで捨てているコースもあるためなのか、見逃し三振が多いことが挙げられる。
実際、昨年喫した81個の三振で、見逃し三振は全体の33.3%に当たる27個と大変多く占めていた。その27個中5個は1度もバットを振らずに3球三振に倒れた見三振だった。
楽天ではAJのように足繁く1塁にお散歩する姿と、(三振66個中30個の見三振を記録した2014年の)枡田慎太郎のように見逃し三振でベンチに帰ってくる姿、両方を見せるかもしれない。もしそうなっても、我々ファンは、高い出塁率を創出する"副作用"として容認して観戦する必要はありそうだ。
ウィークポイントを埋める「左投手キラーのフライボールヒッター」
ゴームズに期待したい所は、左投手に強いフライボールヒッターという点だ。
ここは非常に大事なところで、昨年楽天打撃陣のゴロ率48.2%はリーグ5位と多く、同左投手打率は.229と散々だったからだ。
《参照》敵軍サウスポーを打ち崩せず... ガタ減りした楽天打者の左投手打率(2015/10/20)
ゴームスのゴロ率は昨年38.1%と前年比12.1%増になってしまったのが気になる所ではあるものの、MLB通算は30.2%。打球の約半分がフライ、約2割でライナーを打ってきた打者で、またBABIPも例年波が少なく安定しているため、バットに球が当たりインプレーになった場合は期待ができる右打者と言えそうだ。
また、その左投手通算打率は、右投手.221を上回る.273。同OPSも右の.712を超過する.855という素晴らしい数字を残しており、ゴームズ獲得は楽天の「打」のウィークポイントを埋めるポテンシャルを秘めているのだ。
下記に左右投手別の成績を掲げたので、ご参照頂きたい。
■vs左投手 年度別 打撃成績

■2015年 vs左投手 球種別 打撃成績

左投手の速球に強く、チェンジアップに弱い
昨年もジャイアンツのマディソン・ガムバーナーから2本のヒットを放つなどサウスポーに強いゴームズだが、加齢による衰えなのか、数年前の29歳~32歳の頃に見せてきた強烈な打棒は、今は影を潜めつつある。
昨年の左投手打率.227は2005年以降ワースト2位。ただ、これは徹底した待球姿勢で臨んだため、三振が増えてしまったことによる"副作用"だ。(その一方で四球も大幅に増やしている)。失投を打ち抜いた時の長打力は健在で、左腕相手に5本の一発を放ったこと、前述した四球増等もあり、OPSは前年を上回る.783を記録している。
球種別ではサウスポーの速球に強くOPS/打率は.802/.260)、スライダーやカッターなど曲がる球には率こそ低いものの一発攻勢でOPSは.954を記録。
一方、弱点はスプリッターやチェンジアップなど落ちる球やカーブになる。特に左投手が投げてくるチェンジアップ(右打者視点ではアウトコースに逃げながら落ちる軌道を描く)にはカラッキシで、スイングしにいった21球中17球が実に空振りを喫していた。
次に右投手対戦時のデータを確認しよう。
■vs右投手 年度別 打撃成績
※MLB Gamedayから採取

■2015年 vs右投手 球種別 打撃成績
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右投手が投げる綺麗な真っすぐに強く
ツーシームなど動く速球やスライダーに弱い
MLBで左キラーとして活躍してきたゴームズだが、右投手は苦手としており、MLB13年間で同OPSが8割以上を記録したのは2005年、2009年の2シーズンのみに止まった。(ちなみに左投手では7シーズンあった)
昨年は.203/.261/.297、OPS.558だった。打撃スタイルを変えた2011年を頂点に、右投手IsoD、同ISOが年々下落傾向にあり、近年は左投手対戦時に数多くの四球を選ぶ一方、右投手対戦時には数多くの三振を喫してしまう、左右で明暗分かれる結果に拍車がかかっている。
球種別では、特にこれといった鉄板の得意球がない。
左投手時には強さを見せていた速球もOPS/打率は.631/.232。
ただ、これ、もっと細かく、4シーム(いわゆる後者と比べて動かない速球)と動く速球(2シームやシンカー)で見ると
4シーム .819/.304
2シーム、シンカー .247/.087
となっており、右投手が動かしてくる速球(恐らく右打者のインコースに食い込んだり、膝元や低めに沈んだりする速球だろう)に苦戦しているものの、NPBでは多くなるだろう右投手の綺麗な真っすぐには強さを発揮している。
苦手な球種は、右投手が投げる曲がる球で、中でも右投手のスライダーには昨年完全にお手上げ状態だった。バットをスイングしにいった34球中、実に70.6%に当たる24球でバットが空を切る形になった。
最後に配球の話をしよう。
■2013-2015年 vs右投手 打球マップ
※fangraphsより
右投手対戦時のゴロ打球は三塁線~三遊間が圧倒的に多くなっており、一塁線のゴロはこの3年間1本も記録されていない。このような極端な傾向がNPBでも継続されてしまうと、サードは三塁線を締め、ショートはサード寄りの三遊間を守り、セカンドは2塁ベース近くに陣取るゴームズシフトを敷かれるリスクが生じる。

配球の差異にアジャストできるか?!
NPBにやって来る外個人打者が乗り越えなければならない大きな壁の1つに、NPBならではの配球がある。2013年当時、AJとマギーはお互いの家を行き来しながら、初めて見るNPBの対戦投手の持ち球や配球について熱く議論を交わすなど、熱心な研究、事前準備の成果も、両人の好活躍を支えていたのは有名な話だ。
一方、それにアジャストできず苦しんだのが、昨年のサンチェスとウィーラーと言えそうだ。
下記に主な外国人打者の球種割合(=相手投手が投げ込んできた球種割合)を棒グラフにして表してみた。
これを見ても分かるように、NPBでは50%以上が変化球になる。一方、昨年のゴームズは変化球が40.7%だった。MLBと比べて変化球が10%増になるイメージで、MLBよりも落ちる球、カーブの割合も増え、緩急で揺さぶりをくらうことが予想される。

■初球の球種割合

「幸運の置物」としての期待も
上表にまとめてみたが、初球の入り方も、NPBとMLBでは大きく異なる。
MLBではゴームスが得意とする速球で入ってくることが多いのに対して、NPBでは外国人打者に初球速球で入るケースは50%にも満たない。時にはウイニングショットの落ちる球で入ってくることさえ、MLB以上に多くのシーンで見かける。
このような配球の差異に対応できるか?が、ゴームズが2014年AJ、昨年ペーニャの穴埋め以上の活躍ができるか?のカギになりそうだ。
最悪、全く活躍できずとも、楽天が3年ぶりにAクラス入りがなれば、「幸運の置物」として使命を全うしたという評価をしても良いかもしれない。【終】
◎◎◎関連記事◎◎◎
・個性派揃いの楽天新外国人。体重より心配、アマダーの打撃は通用するか(ベースボールチャンネル)
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